アリクイ目
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アリクイ目(異節目) Xenarthra |
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オオアリクイ Myrmecophaga tridactyla |
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分類 | ||||||||||
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科 | ||||||||||
アリクイ目は脊椎動物亜門 哺乳綱の1目。異節目ともいい、かつては貧歯目と呼ばれていた。現生では、アリクイ類、アルマジロ類と、2つのナマケモノ類のグループがこれに属する。
[編集] 分布
アリクイ目(異節目)の動物は、いずれも中南米に分布している。オーストラリアと同じく長らく孤立した島大陸であった南米(新熱帯区)では、独特の動物群が発展した。その代表的なものがアリクイ目である。ココノオビアルマジロは、すでにリオ・グランデ川を越えてアメリカ合衆国まで進出しており、現在も分布域を北方に広げつつあると見られる。
[編集] 形態・生態の特徴
アリクイ目には、アリクイ科、ミユビナマケモノ科、フタユビナマケモノ科、アルマジロ科の4科が属している。「貧歯類」というかつての別名のとおり、いずれも歯が退化して、まったく消失しているか、あってもエナメル質を欠いている。このうち、アリクイ科の動物には歯がなく、粘り気のある唾液でアリやシロアリを舌にくっつけて食べている。ミユビナマケモノ科、フタユビナマケモノ科、アルマジロ科の動物には、単純な歯がある。また、アルマジロ科の動物の体は、鱗甲板という、皮膚が角質化したよろいでおおわれているが、体を完全な球形にすることができるのは、そのうちの2種のみである。
哺乳類の頚椎は通常7個(ジュゴン目は6個)であるが、アリクイ目では6、9、10個などさまざまである。また、脊椎骨のうちの腰椎に、他の哺乳類には見られない付随的な関節が見られる。すなわち、腰椎の関節突起が二重になり、座骨が脊椎と癒合している。この関節によって、アリクイ目の動物は、腰の付近の背骨が、非常に頑丈になっている。異節目 (Xenarthra) の名は、このことに由来する。
[編集] 変遷
かつてこのグループが「貧歯目 Order Edentata 」と呼ばれていたころ、アリクイ類やアルマジロ類と同じくシロアリやアリを主食とし、歯の退化したグループであるセンザンコウ類やツチブタ類も、このグループに含められていた。だが後に、その形態や生態の類似は収斂進化によるもので、特に系統的に近縁なわけではないことがわかったため、それぞれ貧歯目から独立して、1目をなすことになった。
さらに、同様に歯の形の特徴からこのグループに含められていた化石群のパラエノドン亜目 Paraenodonta も、その後、むしろセンザンコウ目(有鱗目)の祖型に近いグループと考えられるようになり、センザンコウ目に移された。このときに、パラエノドン類以外の貧歯目のグループの名前だった「異節亜目 Xenarthra 」が格上げされて、このグループの新たな目名とされた。現在のアリクイ目が異節目 Xenarthra と呼ばれるのはこのためである。
最近の遺伝子研究による新しい系統モデルでは、現生のすべての有胎盤類(真獣下綱)が4つの大グループ(クレード)にまとめられているが、4つのうちの1つは、異節類(アリクイ目)単体のグループである。つまりアリクイ目は、現生有胎盤類の中に近縁なグループが1つもない、極めて独特なグループということになる。
このグループは、哺乳類の歴史上非常に早い時期に、島大陸となった南米大陸とともに、他の有胎盤類から分離された。従来最も原始的な有胎盤類とされてきたモグラ目(食虫目)より、さらに起源の古い古哺乳類の生き残りとも考えられている。