インテリジェンス・コミュニティー
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インテリジェンス・コミュニティー(Intelligence Community)とは各国の政府が設置している情報機関によって組織されている機関。情報コミュニティーとも呼ばれる。特に米国やイギリスのものが有名である。日本にも一応、存在はしている。
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[編集] 概要
各国の政府は様々な情報機関を設置している場合が多い。特にアメリカは、CIA(中央情報局)、NSA(国家安全保障局)、DIA(国防情報局)、NRO(国家偵察局)、FBI(連邦捜査局)など多数の情報機関が存在している。このように多数の情報機関が存在する場合、各機関ごとに提供される情報に違いなどが発生する。例えば、CIAは「国内でテロが起きる可能性がある」という情報を、NSAやDIA、FBIは「国内でテロが起きる可能性は少ない」という情報をそれぞれ大統領や国家安全保障会議へ報告した場合、この情報を元に政策や戦略の作成を行う大統領や国家安全保障会議が混乱しかねない。そこで各情報機関の活動を調整し、情報の一元化をする目的でインテリジェンス・コミュニティーを設置している。
[編集] 日本のインテリジェンス・コミュニティー
日本のインテリジェンス・コミュニティーは内閣情報会議とその下に設置されている合同情報会議を頂点とする議合制の体制である。内閣情報会議は年2回、合同情報会議は隔週で開催される。内閣情報会議は国内外の内閣の重要政策に関する情報を総合的に把握するため、また、合同情報会議は内閣情報調査室や外務省、防衛省、警察庁、公安調査庁など情報活動に関わる機関の調整などを行う。
[編集] メンバー
※内閣情報会議又は合同情報会議の正規メンバーだけを記載。これ以外にも海上保安庁や経済産業省などが情報活動を行っている。
[編集] 現状
各情報機関が内閣情報会議や合同情報会議に重要な情報を提出することは少なく、直接、内閣官房長官や首相補佐官に伝えられることが多い。そのため、実際に機能しているとはいえない。
[編集] アメリカのインテリジェンス・コミュニティー
アメリカのインテリジェンス・コミュニティーは国家情報長官を頂点とする中央集権型の体制であり、1981年に大統領令によって設置された。6省15機関に跨り、常時10万人規模の人員を有する。
[編集] メンバー
- 中央情報局 (CIA)
- 国防総省
- 司法省
- 連邦捜査局 (FBI)
- 国家安全保障部
- 連邦捜査局 (FBI)
- 国土安全保障省 (DHS)
- 沿岸警備隊情報部 (CGI)
- 情報分析・インフラ保護部
- エネルギー省
- 不拡散・国家安全保障部
- 国務省
- 情報調査局 (INR)
- 財務省
- 情報支援局
※国家安全保障法に定義されている情報機関を記載。
以前はCIA長官が中央情報長官を兼ね、インテリジェンス・コミュニティーの統括も行っていた。しかし、中央情報長官はCIAの長官でもあるため、自分の統括する組織であるCIAの指揮に集中してしまったり、情報活動の8割以上を行っている国防総省との対立が原因でインテリジェンス・コミュニティーの指揮や調整の役割を果たしていなかった。また、同時多発テロを防げなかった一因に情報機関の連携不足が指摘されている。そのためアメリカ政府は情報機関の改革を行い、国家情報長官を設置した。国家情報長官は連邦政府の15の情報機関の人事や予算を統括する権限を持ち、インテリジェンス・コミュニティーの指揮、管理に専念する。また、アメリカ大統領の情報顧問として各種情報の報告や国家安全保障会議に対し助言などを行う。しかし、国家情報長官の各情報機関への指揮権は不明である。また、国防総省が戦略支援局という国防長官直属の機関を極秘に設置したことが判明した。アメリカの情報機関は縄張り意識が強く、国家情報長官がどれだけ組織をまとめていけるかが課題である。
[編集] イギリスのインテリジェンス・コミュニティー
イギリスのインテリジェンス・コミュニティーは内閣に直属する統合情報委員会を頂点とした議合制の体制である。
[編集] メンバー
- 統合情報委員会 (JIC)
- 外務省
- イギリス情報局機密情報部 (SIS,MI6)
- 内務省
- イギリス情報局保安部 (SS,MI5)
- 国防省
- 国防情報参謀部
- 政府通信本部 (GCHQ)
- 国家犯罪捜査局 (NCIS)