カシミール (レッド・ツェッペリン)
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「カシミール」(Kashmir)はイギリスのロック・グループ、レッド・ツェッペリンの楽曲の名。ジョン・ボーナム、ジミー・ペイジおよびロバート・プラントによって作詞作曲され、1975年に発表された。演奏時間は約8分30秒。
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[編集] 来歴
1973年暮れ、メンバーのうちたまたまボーナムとペイジとだけがスタジオに入っていたとき、ペイジはふと、以前から構想していながらうまくつなげられずにいた二つのリフを試みる気になった。エンジニアにこれから起こることを全て録音するように命じ、ボーナムにひたすら単純な8ビートを叩き続けるように要求した上で、ペイジはリフを演奏した。このとき得られた素材をもとに、プラントが歌を付けて曲の骨格が出来上がった。
このころジョン・ポール・ジョーンズは一時的にグループを離れていたが、1974年に入ってセッションに復帰して編曲を行ない、さらにコーダに現れる上昇音階のリフを加えて曲を整えた。最終的なレコーディングはヘッドリィ・グランジで行なわれている。レッド・ツェッペリンのレコーディングとしては異例なことに、外部のミュージシャンを招いて管楽器・弦楽器の演奏を録音した。
[編集] 構成
それほど複雑多岐にわたる素材を用いているわけでもなく、コード進行も基本的には3コード・パターンである。にもかかわらず「カシミール」は極めてプログレッシブで独自性に富んだ曲であるとの印象を与える。以下、構成を図示し、各部について解説する。
パート | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
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素材 | A→B | A→B | B | C | B | D | A→B | A→B | B | D |
基本コード | D | D | D | A | D | G→A | D | D | D | G→A |
パート1、2、7、8はヴォーカル・パート。パート4は中間部。パート6、10は終結部。パート3、5、9はブリッジである。ポピュラー音楽の基本的な構成である「ひら歌→サビ」という形とは著しく異なっており、もしクラシック音楽に類例を求めるなら、複合三部形式に類似する点も見られる。
各部の素材は次の通り。
- Aは主要なリフ。ギターおよび弦楽合奏によって演奏されるリフは3/4拍子・4小節で一回りするが、ドラムスは4/4拍子を刻んでおり、結果として複合リズムとなっている。
- Bは第二のリフ。ギター、弦楽合奏および管楽器によって、シンコペーションを含んだ下降音形が奏でられる。
- Cは第三のリフ。ギター、ベース、ドラムスおよび弦楽合奏が、シンコペーションを含んだ律動的なパターンを演奏する。
- Dは他とは趣を異にする流動的で夢幻的な素材。メロトロンを中心として作られており、特にパート10ではアラビア風の上昇音形による印象的なリフが現れる。
またコード進行を見ると、全体としてはDを基調として属和音(G・A)も用いられているが、主和音のパートが圧倒的に多い。またパート4からパート5、およびパート6からパート7への移行時に属和音から主和音への解決も行なわれているが、各パートの独立性が強いため、聴覚的には和音の解決とは聞き取りがたい。結果として全体的にコードの変化が感じられない、一種のモード奏法に似た和音構成となっている。
以上を要するに、さほど奇抜というわけでもない素材を巧妙に配置することによって、きわめて独特な印象の曲に仕上げたものと言える。なお、この曲でのギターは「DADGAD」チューニングになっており、このチューニングの持つエキゾチックな響きが曲全体に微妙な幻想味を添えている。
[編集] 歌詞
プラントの歌詞としては珍しく一貫した内容を比較的平易に述べている。主題は「見失った故郷を求めての放浪」であり、大部分は砂漠、末尾近くに海のイメージが現れる。プラントがこの歌詞を構想したのはサハラ砂漠をドライブしていたときであり、現実のカシミール地方がイメージの源泉になったわけではない。楽曲の東洋的な雰囲気にあわせて「カシミール」という題名になったものと思われ、歌詞の中にも(おそらくは後付け的に)「Kashmir」という単語が現れる。
[編集] レコード
1975年2月24日、彼らの6枚目のアルバム「フィジカル・グラフィティ」B面3曲目(現在のCDではDisc 1 - track 6)に収録されて発表された。
なおこの曲は実質的にはメンバー全員の共作とするのがふさわしいが、上記の事情からジョーンズを除いた3名の共作とクレジットされた。このことはペイジとジョーンズとの軋轢を物語る例とされている。
[編集] ステージ・パフォーマンス
レコードの発表に先立って1975年1月11日、ロッテルダム公演で初演され、以後レッド・ツェッペリンの全ステージで演奏された。1977年以降はペイジのギター・ソロ・ナンバー「ホワイト・サマー」「ブラック・マウンテン・サイド」に続くメドレーの形で披露された。またレッド・ツェッペリン解散後も、1988年のアトランティック・レコード40周年記念コンサートにおける一時的再結成のステージやペイジ & プラントのステージなどで演奏されている。
[編集] 評価
パンク・ロックの象徴とも言うべきセックス・ピストルズのヴォーカル、ジョン・ライドン(ジョニー・ロットン)は、商業主義にまみれたスーパーバンドを口汚くののしった(後の行動を鑑みれば他人のことはいえない筈であるが)。もちろんレッド・ツェッペリンも「金銭亡者のスーパーバンド」ではある。しかし1980年代以降、ロットンは自らのステージで「カシミール」を歌うようになり、さらにはプラント本人に「『カシミール』のような歌詞はとても書けない」と告白している。この曲の独自性とインパクトとを物語る好個の例と言えよう。また1997年のアメリカ映画「GODZILLA」で用いられたパフ・ダディによる主題曲では、「カシミール」がサンプリングされている。この曲は原曲のリフにラップを乗せただけである。30年前のトラックは現代でも通用したのだ。
プラントは「カシミール」を "The Pride of Led Zeppelin" (レッド・ツェッペリンの誇り)と呼んでいる。派手なギター・ソロやアクロバティックなヴォーカルではなく、アンサンブルの妙によって傑出した独自性を実現したこの曲こそ、レッド・ツェッペリンの最も重要な作品だと評価できる。
レッド・ツェッペリン |
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ジョン・ボーナム - ジョン・ポール・ジョーンズ - ジミー・ペイジ - ロバート・プラント |
オリジナルアルバム: レッド・ツェッペリン I - II - III - (IV) - 聖なる館 - フィジカル・グラフィティ - プレゼンス - 永遠の詩 (狂熱のライヴ) - イン・スルー・ジ・アウト・ドア - 最終楽章 (コーダ) |
その他のアルバム: ボックスセット - ボックスセット2 - リマスターズ - BBCライヴ - 伝説のライヴ |
映像: レッド・ツェッペリン狂熱のライヴ - レッド・ツェッペリン DVD |
楽曲: 「限りなき戦い」-「天国への階段」-「カシミール」 |
関連事項: ピーター・グラント - スワンソング・レコード |
カテゴリ: レッド・ツェッペリン | ポピュラーソング | 1975年の楽曲