ガンシップ
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ガンシップとは
- 実在のガンシップ
- アメリカ空軍がベトナム戦争中に南ベトナム解放民族戦線への対抗策の一環として、特に夜間における小型目標への攻撃を目的として輸送機の機体を流用して開発した局地制圧用攻撃機。本稿で詳述する。
- 武装ヘリコプターや攻撃ヘリコプターの別称。
- 架空のガンシップ
- ガンシップ (風の谷のナウシカ) - 宮崎駿原作の『風の谷のナウシカ』に登場する小型戦闘機。コルベット、メーヴェも参照。
- 共和国攻撃用ガンシップ - スター・ウォーズシリーズ中のクローン大戦(エピソード2とエピソード3)にてクローン・トルーパーが使用した大気圏内用汎用航空機。
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[編集] 概要
一般的な攻撃機や戦闘爆撃機、COIN機が特定の目標に対して連続攻撃を行う場合は、緩やかに降下しながら前方射撃用の機関砲や胴体/主翼下のハードポイントに搭載したロケット弾や無誘導爆弾、ナパーム弾を前方の目標に発射あるいは投下して、目標上空を通過後に上昇旋回して反復攻撃をかける形になる。しかし、目標の上空を通過してから反転し、再び兵装の射程距離に入るまでの間は攻撃が出来ないので、敵を足止めしきれずに散開させての前進もしくは逃亡を許してしまう可能性が大きい。これに対して、ガンシップは攻撃目標を中心とした低空左旋回を行いながら、胴体内部から左側面に突き出す形で装備したM134 7.62mmミニガンやM61 20mmバルカン砲などの銃火器の連続射撃によって目標を攻撃するため、機銃弾もしくは機関砲弾の豪雨を目標に対して間断なく浴びせ続けることが可能。さらに元の機体が輸送機なので、弾薬も大量に搭載できる。なお左側に火器を装備しているのは、操縦を担当する機長が左に座っているため、左側の方が目標を視認しやすいからである。
対空機関砲や地対空ミサイル対策として、主要部分に装甲を施すと共にチャフ・フレア・ディスペンサーやECM装置などの自己防御装置を装備する。しかし、戦闘機に対しては圧倒的に不利なため、絶対的なまでに確実に制空権を確保しなければ機体の安全が望めない。現在でもガンシップを運用するのはアメリカ空軍のみである。
[編集] 主なガンシップ
[編集] ACH-47A
ボーイングバートルCH-47チヌーク大型輸送ヘリコプターをベースとしたヘリコプターガンシップ。 1965年6月、4機のCH-47が改装されベトナム戦争に実戦投入された。 アメリカ陸軍第1騎兵師団に配備、同師団の隊員に「ガンズ・ア・ゴー・ゴー」という ニックネームで親しまれ、著しい活躍を見せた。 ベトナムでの運用実績は良かったが、以下の理由で追加発注はされなかった。
- AH-1コブラ攻撃ヘリコプターの登場。
- 戦場での輸送ヘリの重要性の高さから、ACH-47Aより標準型CH-47の増産が優先された。
- 武装
- M-5 40mmグレネードランチャー×1
- M-24 20mm機関砲×1
- M-2 12.7mm重機関銃×4
- M-60 7.62mm機関銃×1
- XM-159 ロケット弾ポッド×1
- ACH-47A 1号機(64-13145)
- 1967年5月5日 自機搭載の20㎜機関砲が上を向いたまま射撃、ローターを破壊し墜落。
- ACH-47A 2号機(64-13149)
- ペアを組む機体が失われた為、作戦続行不可能となり武装解除。CH-47搭乗員用訓練機材となる。
- ACH-47A 3号機(64-13151)
- 1966年8月5日 離陸中、他のCH-47と接触事故を起こす。機体大破により破棄。(乗員全員無事)
- ACH-47A 4号機(64-13154)
- 1968年2月22日 作戦行動中、対空火器により被弾、墜落。
[編集] AC-47
ダグラスC-47スカイトレインに武装を施した最初のガンシップ。この機体の運用実績はガンシップ・プロジェクトII(AC-130)やガンシップ・プロジェクトIII(AC-119)に反映された。配備当初は「FC-47」という戦闘機たる「F」ナンバーが付けられていたが、これが人一倍プライドの高い戦闘機パイロットからの大批判が起こり、それ以降「AC-47」に改められた。最も、対地攻撃を主任務とする当機からすればある意味それが適切だったのかも知れない。
米空軍ではAC-119及びAC-130に順次更新され、残存のAC-47は南ベトナム空軍やラオス王国空軍、シアヌーク国王及びロン・ノル時代のカンボジア空軍に供与され、運用された。
- 武装
サイト内外国語リンク
- en:AC-47 Spooky
- da:AC-47
- de:Douglas DC-3#Douglas AC-47 Spooky
- ms:AC-47 Spooky
- no:Douglas AC-47 Dragon Ship
[編集] AC-119
ガンシップ・プロジェクトIIIに基づいて、フェアチャイルドC-119フライング・ボックスカーに武装を施したガンシップ。
米空軍と南ベトナム空軍で運用された。
- 武装
- AC-119Gシャドウ:7.62mmミニガン×4挺を装備
- AC-119Kスティンガー:7.62mmミニガン×4挺と20mmバルカン砲×2門を装備
サイト内外国語リンク(AC-119)
サイト内外国語リンク(C-119)
- cs:C-119 Flying Boxcar
- de:Fairchild C-119
- en:C-119 Flying Boxcar
- it:Fairchild C-119 Flying Boxcar
- no:Fairchild C-119 Flying Boxcar
[編集] AC-130
ガンシップ・プロジェクトIIに基づいてロッキードC-130ハーキュリーズに武装を施したガンシップ。初期型のAC-130AはAC-119同様M134 7.62mmミニガンとM61 20mmバルカン砲を4挺ずつ装備していたが、9K32(SA-7グレイル)やFIM-92スティンガーなどの携帯式地対空ミサイルの発達と普及に伴い、長射程大火力のボフォース40mm機関砲L60や105mm榴弾砲M102が追加され、AC-47やAC-119とは桁違いの重武装と大火力を有するようになり、「空飛ぶトーチカ」、あるいは「空飛ぶ砲兵」とでも言うべき機体となった。なお、40mm機関砲と105mm榴弾砲の同時射撃は禁止されている。
同機は唯一現役のガンシップであり、米特殊作戦空軍のみで運用されている。ベトナム戦争以外でも、グレナダ侵攻やパナマ侵攻、湾岸戦争、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争、ソマリア内戦、コソボ紛争、アフガン戦争、イラク戦争にも投入されている。
- 武装
- AC-130A:7.62mmミニガン×4挺、20mmバルカン砲×4門。
- AC-130E:7.62mmミニガン×4挺、20mmバルカン砲×2門、40mm機関砲×2門。
- AC-130Hスペクター:20mmバルカン砲×2門、40mm機関砲×1門、105mm榴弾砲×1門。
- AC-130Uスプーキー:25mmガトリング砲GAU-12×1門、40mm機関砲×1門、105mm榴弾砲×1門。
現在、米空軍では現存のAC-130Uの近代化改修案として25mmガトリング砲と40mm機関砲を2門のブッシュマスターII30mmチェーンガン(AH-64 アパッチに装備されているM230とほぼ同型)に、105mm榴弾砲を後装式の120mm迫撃砲に 換装するほか、スタンドオフ攻撃能力を与えるためにAGM-114ヘルファイア対戦車ミサイルとハイドラ70ロケット弾の運用能力を付与する計画が存在する。
サイト内外国語リンク
- cs:Lockheed AC-130
- de:Lockheed C-130#AC-130 Gunship
- en:AC-130 gunship
- it:Lockheed AC-130 Spectre
- no:Lockheed AC-130
- pl:Lockheed AC-130
- fi:Lockheed AC-130
[編集] 関連項目
- 代表作となる艦隊シリーズの劇中で重爆撃機ベースのガンシップ(劇中名称は掃射機)がよく登場し対艦、対空攻撃に活躍させている。