コンタックス
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コンタックス (CONTAX)とは、京セラが製造・販売するカメラのうち、高級機種で、光学レンズにカール・ツァイス社製のT*(ティースター)と呼ばれるレンズを採用した商品に付けられるブランド名。英語表記でCONTAX(すべて大文字)となる。
ただし、元来はドイツのツァイス・イコン社製のレンジファインダーカメラのブランド(この場合は頭文字のみ大文字でContaxと表記する)であり、ツァイス・イコン社が1971年にカメラ事業を中止したのち、カール・ツァイス財団が日本のカメラメーカー、ヤシカとブランド等に関するライセンス契約を締結し、以後日本メーカーのブランドとなった。ヤシカは1983年に京セラに吸収合併された。
京セラは2004年、併用していた「京セラ」ブランドのデジタルカメラを事業縮小し「コンタックス」に統一することを発表、2005年にはMF一眼レフカメラ・レンズの生産終了とデジタルカメラ事業からの撤退を相次いで発表した。そして4月11日には同年9月のコンタックス事業終了が発表された。これにより京セラとカール・ツァイスの協業によるコンタックスブランドの30年にわたる歴史の幕が閉じられることとなった。
目次 |
[編集] ツァイス・イコンの製品
[編集] 銀塩カメラ
[編集] レンジファインダー
[編集] その起源
- 1932年から1961年まで製造・販売された、ツァイス・イコン製の旧シリーズ名「コンタックス」(Contax)の由来と歴史である。
- 1932年に、ツァイス・イコン社は、キュッペンベンダー博士を中心にフラッグシップ機として「コンタックス(Contax)」I型を製造販売した。内爪の標準レンズ系用のバヨネットとそれ以外の交換レンズ用の外爪の二重になった、三爪式バヨネット方式のレンズ交換システム、高い測距性能を有する連動距離計を有し、撮影時に回転しない固定シャッタースピードダイヤル、最高速1/1000秒以上の効率の高い縦走り金属鎧戸式ファーカルプレーンシャッター、着脱式裏蓋を有するためにフィルム装填が容易な構造を持つ。ツァイス・イコンは持ちやすい角型の基本型のレンジファインダーカメラを次々と改良し連綿と製造し続け、「コンタックス」は世界の35mmカメラのトップブランドとしてライカに比肩する技術的にも最先端であったシステムを指称するようになった。
- 「コンタックス(Contax)」I型は、1932年に発売され、連動距離計は基線長103mmの高精度のヘリコイドと連動する正確な連動機構を有した。三本爪二重バヨネットのレンズ装着機構を有するもので、初期型以降改良を重ね、1933年夏の4型バージョンから1/2秒からのスローシャッタースピードも追加された。1934年秋の6型バージョンでは、ライカの商標権者であるライツ社の特許権の権利と抵触を避けるため、距離計内側にあったファインダーを基線長を少し短く93mmにした距離計内側に変更し、距離計も可動ミラー式であった連動機構を棒状プリズムとドレーカイル(回転楔形プリズム)式測距方式に変更した。
- その後、1936年「コンタックスII型」を発表、そして世界初の電気露光計を搭載した1935年発表の「コンタフレックス」と、1年遅れで世界第2番目のセレン光電池による電気露光計を搭載した「コンタックスIII型」を発売した。同II型・III型は、ライカの38mmに比して格段に精度の高い基線長93mmのヘリコイドと連動した一眼式連動距離計を採用し、セルフタイマーを装備、シャッター速度もバルブ(B),1/2~1/1250秒まで全域が一つのダイヤルで調整可能となり、速度調節ダイヤルの調整も、シャッターチャージ・巻き上げ以前でも、以降でもいつでも変更可能というライカと比して格段に自由度が増した機構を有した。1950年には、駒数計の設定に手をふれると不安定であった箇所・連動距離計窓が中指によってふさがり易い等の欠点を解消しシンクロ機構を追加、小型化を図りコンパクト化した「コンタックスIIa」、同型の電気露光計付「コンタックスIIIa」型を発売、1961年まで製造・販売された。それと同時に超高級交換レンズ群をラインアップし、ライカと比肩するシステムを構築した。
- この商品名が「コンタックス」(CONTAX)の原点の「コンタックス(Contax)」である。このツァイス・イコンのコンタックスには戦前・戦後を通じて非常に多くの卓越した交換レンズが供給され、「コンタックス」の名声を高めた。戦前はイエナのカール・ツアイス製、戦後は東ドイツツァイス社から供給されたいくつかを除き西ドイツのオーバーコッヘン工場製である。
[編集] 旧シリーズ
[編集] コンタックスI型
1932年発表のツァイス・イコン社製「コンタックス」の第1世代機で、1936年まで製造され1938年まで販売された。
ボディーは当時の新素材であるジルミン系アルミ合金ダイカストを採用し、レンズマウントを取り付けてから基準面に合わせてフィルムレールを研削してディプスを出す最新の工法が採用された。このためゾナー5cmF1.5のような大口径レンズであっても必要十分な精度が保証されていた。レンズマウントは内爪と外爪の二重のバヨネット式を採用した。バヨネットマウントはライカでは1954年になって初めて採用される。
シャッターは縦走り金属製フォーカルプレーンで、シャッター幕上に光線が焦点を結んでも焼けて穴が開く憂いがない。シャッター速度は、当初、Z,1/25~1/1000秒であったが、のちにスローシャッターが装備された。シャッターの走行は上下方向、基部にシャッターダイヤルをもった巻き上げノブはボディー前面にあり、それぞれの軸方向は上下・左右・前後と互いに直角方向にある。露光計との連動を考えていたためこの位置の配置となった。距離計は基線長103mmで、テッサー2.8cmF8を除きすべての交換レンズに連動する。巻き上げの回転はベベルギアを介してフィルムとシャッターの巻上げにそれぞれ伝えられる。
ボディーは革張り黒色塗装。初期タイプはビューファインダーが距離計の内側にあったが、1934年にライツ社の特許との抵触を避けるため距離計の内側に変更、距離計も棒状プリズムとドレーカイル式測距方式に変更、基線長は93mmに短くなった。ただし、この距離計は堅牢性や精度がそれまでのものより格段に向上し、ライカより優れているとされる。短所は巻上げノブがボディ前面にあるため速写性に欠けて回しにくいこと、巻き上げ・巻き戻しがライカと比べ重いことであろう。総生産台数36,700台。
交換レンズにはテッサー5cmF3.5とF2.8、ゾナー5cmF1.5とF2、トリオター8.5cmF4、ゾナー135mmF4が順次発売され、のちにテッサー2.8cmF8、ビオター4cmF2、ゾナー8.5cmF2、テレテッサーK18cmF6.3が追加されている。
コンタックスはその設計コンセプトが「作画意図の高忠実再現」であり、ツァイス・イコン社が持てる技術力を投入して開発した。そのため撮影結果は当時の35mm判カメラの中で最高であったが、非常に高価であった。コンタックスI型は絶えざる技術革新が次々に投入されるために現在わかっているだけでも7種類ほどあるといわれている。製造期間を考えると半年に一度は改良されていたことになり、販売部門から開発部門に苦情が殺到したといわれている。あるカメラ研究家は「開発の子宮から無理に引っぱり出されたような」カメラであると評している。
使用法の注意点:シャッター速度設定時の設定法:チャージ前・若しくはチャージ後に、チャージに使用した時計方向に巻き上げる中軸回転方向とは反対に、外軸の規準位置をB,1/2秒では赤印を9時の位置の規準印と、反時計方向に回転してあわせ、チャージ軸を持ち上げて所望のシャッター速度数字のライン(赤)とあわせる。次位の速度では、反時計方向に外ダイヤルを回転し、5/1,1/10(赤)の速度を同様に選択する。次位の速度では、白印を9時の位置の規準白(ブラス色)印と、反時計方向に外ダイヤルを回転しあわせ、1/25,1/50,1/100(白)の速度を同様に選択する。最高速のグループでは、白印を9時の位置の規準白(ブラス色)印と、反時計方向に外ダイヤルを回転しあわせ、1/100(白),1/200(白),1/500(白),1/1000(白)の速度を同様に選択する。この選択の際に回転方向を過誤・錯誤すると故障するので要注意。
[編集] コンタックスII型
1936年に発売された、コンタックスI型をモデルチェンジした「第2世代」にあたる。
最大の特徴は距離計で、ファインダーと一体になった一眼式距離計ファインダー(ドイツ語でMeβsucher)となり、ヘリコイドの回転と連動して偏角プリズムを摺動させる方式で、精度及び堅牢さ、そして35mm判カメラの命である速写性能は同時代のライカを凌駕していた。基線長は98mmの極めて精度の高いもので、右に回転させると無限遠のストップのクリック位置に停止し固定される。巻き上げノブはI型と異なりオーソドックスなボディー上部右に移され、シャッターボタンがそのノブの中央にあり、設定は上に持ち上げて任意のシャッター速度の位置のクリック位置に落とすとセットされる。B,1/2,1/5,1/10,1/25,1/50,1/125,1/250,1/500,1/1250の速度が目盛られたダイヤルを備え、巻き上げ・シャッターチャージ前後いつでも変更可能。セルフタイマー内蔵。フィルムの装填は、裏蓋が完全に外れることにより、フィルムの装填は同時代のライカよりはるかにやりやすい。シャッターはI型と同様の鎧戸式の金属製縦走りシャッターで、幕の材質は真鍮である。ボディーは当時の先端素材であるジルミン系アルミニウム合金ダイカストで作られ、板金で作られていた当時のライカよりも量産性、精度の点で優れていた。
35mm判レンジファインダーカメラとしてはライカ以上のスペックを備えた高級万能小型カメラであり、また交換レンズ群に当時のライカを凌駕する高性能各種レンズを揃えていた。I型時代のレンズ群はクロームメッキ仕上げにリニューアルされ、一部のレンズは同仕様のまま設計変更も行われている。ベルリンオリンピックに合わせて発売されたゾナー30cmF4とゾナー18cmF2.8は特に有名であり、いずれもオリンピアゾナーと通称された。また、明るく周辺まで画質が優れているビオゴン3.5cmF2.8はカール・ツァイス社らしい高性能レンズである。
スタイリングも、全体が黒革と黒エナメル塗装、金属部品はニッケルメッキであったI型から瀟洒なクロームメッキを多用する洗練されたものとなった。II型にもっとも似ているカメラを探すとすれば、それは1954年に発売されたライカM3である。ライカM3を「20年遅れたコンタックスII型」という評まである。コンタックスII型は第二次大戦までの間に59,500台が生産された。
[編集] コンタックスIII型
コンタックスII型と同時に発売された。
35mm判カメラとしては、1935年発表の「コンタフレックス」の世界最初の電気露光計に続く世界で2番目のセレン光電池による電気露光計を搭載した。それ以外の基本スペックはII型と同様である。
露光計の使用法は、まず、フィルム感度を合わせ、巻き戻しノブの下のダイヤルを露光計の蓋を閉めたままにし、反時計方向に回しきり、目盛が▲に合っているかを確認して、カバーをあけ、巻き戻しノブの基部にあるリングを回して上面のメーターの針を定点に合わせ、その時調節リングが示す絞りとシャッターを読み取ることにより測光する。その他は、II型と同一仕様である。III型の生産台数は38,000台といわれている。
[編集] コンタックスIIa型
1950年発売、1960年まで販売された第3世代の「コンタックス」。
新生ツァイス・イコン社の本拠地、西ドイツのシュトゥットガルトで製造されたもの。基本スペックは、コンタックスII型と同一または類似であるが、フラッシュ・シンクロ機構の組み込みと小型化・簡便化が図られ、ボディーダイカストの素材はきわめて薄く軽く丈夫になるなど格段の改良がなされている。なお旋回プリズム式連動距離計の二重像合致式距離計の基線の長さは93mmから72mmにスペックダウンされ、このため焦点調節時に中指で二重像を塞ぐ事故は解消された。
そのかわりとして戦前のコンタックスでは可能であった18cmなどの望遠レンズとの連動は不可能となったし、シャッターユニットの小型化のためレンズ尾部の大きい旧ビオゴン3.5cmF2.8等のレンズは干渉し装着できなくなった。また、距離計の焦点調節ギアの回転方向が逆になり、右へ回すと無限遠に移動するように変更された(二重像の見かけの移動も逆になった)。
最も進歩したのはシャッター系で、最低速は1/2から1秒になり、Tが追加され、同時にシャッター速度は、厚みの薄いダイヤルを持ち上げてセットする方式に改められた。発売当初は戦前のコンタックスと同じ速度系列ですべて黒文字で記されていたが、1954年から発売された後期型ではシャッター速度が等間隔倍数系列に変更された(後期モデルは、1/50がX接点を示すイエロー、それより高速スピードがレッドに色分けされている)。前期型では発光器との同調のために専用アクセサリーケーブルが必要(型番ストロボ用No.1366、フラッシュバルブ用No.1360)であるが、後期型では一般的なDIN規格となった。シンクロ接点は軍艦部背面にある。
また、ボディ発売と同時に多数の新設計のレンズ群(ビオゴン21mmF4,5、改良されたビオゴン35mmF2.8等)や超高性能レンズもラインアップされ、最高級システムカメラとして完成の域に達した。コンタックスIIa型は戦後のツァイス・イコン社の体力回復期に発売されただけに、戦前の製品と比べてスペック的にはやや後退したものの小型で使用感が良く生産性も高いなどすぐれた「商品」となるよう設計されていた。製造された台数は戦前のコンタックスより遙かに多く、市場戦略は成功したと言える。
[編集] コンタックスIIIa型
1951年発売、1961年まで製造・販売された最後のツァイス・イコンの「コンタックス」である。
コンタックスIIa型に電気露光計を搭載したモデルである。これにも、ブラックダイヤルの前期型とカラーダイヤルの後期型がある。操作法はコンタックスIIIの電気露光計とほぼ同一であるが、露光計制御/巻き戻し部の設計ははるかに洗練され、スタイリングも優れている。
戦後のコンタックスは製品としてはきわめて優れており、多くのユーザーに支持された。しかしこの成功がツァイス・イコン社の35mm判フォーカルプレン式一眼レフの開発を遅らせ、ついには日本製カメラが世界制覇する一因となったとの評価もある。
[編集] 一眼レフ
[編集] コンタックスS
コンタックス初の一眼レフカメラ。レンズマウントにM42マウント採用。ドレスデンの旧東独ツァイス・イコン社にて製造。
[編集] コンタレックス
戦前コンタックスの商品コンセプト「作画意図の高忠実再現」を引き継いだ一眼レフカメラ。
最初に開発された通称I型は、セレン光電池式連動露出計を内蔵した。交換レンズに絞りリングなどがなく絞り値はボディーに表示される。この絞り形式は最終機スーパーエレクトロニック(SE)型まで踏襲された。続いて発売されたスペシャル型は露出計を除き、ファインダーを交換式とした研究用としての用途を想定している。ここまではクロームメッキ部分が多いスタイリングであったが、これ以降のスーパー(S)型、プロフェッショナル(P)型、スーパーエレクトロニック(SE)型はスタイリングが大きく変化し後期タイプと分類できる。
スーパー型はCdS受光素子使用のTTL連動露出計を内蔵したI型の発展改良型である。プロフェッショナル型はスーパー型から露出計を除いた文字通りプロフェッショナル仕様である。スーパーエレクトロニック型はそれまでの機械制御式シャッターを電子制御式とした。AE撮影やモータードライブの使用も可能となるなど、多くのアクセサリーも備えられた。価格も文字通りスーパーで、最終機SEは標準レンズ付のセットでハッセルブラッド標準レンズ付セットに価格に匹敵したという。当然販売台数は伸びず、すべての機種を合わせても5万台程度である。
交換レンズとしてシュナイダーから提供された製品もあったが、ほとんどはカールツァイス社製の優秀な製品である。これらのレンズ群は、製造が中止されて30年以上経った今日でも優秀と評価することができる。コンタレックスはツァイス・イコン社のフラッグシップ的位置づけのカメラであり、非常に高価な価格と一種異様なスタイリング、35ミリ判とは思えない大きさと重さなどから商業的には必ずしも成功しなかったが、当時のカメラ製造技術の頂点を示すサンプルと見ることができる。
[編集] ヤシカ・京セラの製品
[編集] 新生コンタックス
1972年にツァイス・イコン社がカメラ生産を打ち切った後、レンズを供給していたカール・ツァイス社は新しい供給先を探し、1974年、日本のヤシカと提携、電子回路に弱かった欠点を補ってRTSを発売し、コンタックスは復活した。なお提携はカール・ツァイス側からの打診があったとされる。計画当初では眼鏡レンズでの提携先であった旭光学と提携契約成立寸前まで行ったとされている。SMC 15mm f3.5はその際に置き土産的に提供されたDistagon 15mm f3.5から派生したといわれている。(Distagon 15mm f3.5は、ライツの一眼レフ用超広角レンズSuper Elmar 15mm f3.5にも設計が提供されたとされる) PENTAX Kマウントも このときの幻のペンタックス・コンタックスマウントの名残といわれる。
1983年ヤシカは京セラの傘下となり、MF・AF一眼レフカメラやAFレンジファインダーカメラを製造していたが、市場の変化について行けなくなり、2005年京セラはコンタックス事業の終了を発表。再びコンタックスが消滅することとなってしまった。ファンは再度の消滅を残念がるとともに「よくここまで頑張ってくれた」と賞賛している。しかし、前年の2004年コシナとカール・ツァイス社が提携し、レンジファインダーカメラ「ツァイス・イコン」とカール・ツァイスレンズを発売する事が決定した。 また、デジタルカメラではソニーと提携し、カール・ツァイスレンズ装着モデルが発売されているほか、コニカミノルタより引き継いだ αマウント1眼レフ用レンズも発売予定である。
[編集] 銀塩カメラ
[編集] 一眼レフ
[編集] ヤシカ・コンタックスマウントMF
マウントにヤシカ・コンタックスマウントを採用した35mmMF一眼レフ。歴史が長いだけにこのマウントを採用したカメラは多い。「ヤシコン」と略称される。
[編集] RTS
フラグシップ機。新生コンタックス初の一眼レフカメラ。初代RTSは、ボディをヤシカが、レンズをヤシカとカール・ツァイス社が、ボディデザインをポルシェデザインの三社がそれぞれ担当していた。RTSとはReal Time Systemの略である。RTS、RTSII、RTSIIIと進化を遂げた。
RTSは電源スイッチを持たず、シャッターを押せば即座にシャッターが切れる造りで「フェザータッチ」と称され、このシャッターは賛否両論をもたらした。国産ボディとZeissレンズのもたらす表現の世界は高い評価の一方、内部の複雑な電子機構は稼動の不安定要因となり、脆弱との評もあり剃刀のような機体であった。ポルシェデザインの端正なフォルムは当時の国産SLRとは全く異なった趣で、バウハウス以来のドイツ工業デザインの美しさがある。
RTSIIは性能・外観をRTSから引継ぎながら精度・信頼性向上のため、内容としてシャッター素材を布からチタン幕、139同様にクオーツ制御の導入。アイピースシャッターの導入、内部はフレキシブル基盤化といった大幅な刷新が行われている。 過敏とも言えるシャッターについては電源スイッチを新設し、ややマイルド化が図られた。 ファインダーについては歴代トップクラスであり、愛好家は現在も絶えない。 I、II共に横走行式シャッター故にストロボ同調1/60秒に留まる。ワインダーにより高速連写可能な点も同一。また現在補修パーツ払底により稼動機体は減少の一途である。
RTSIIIはさらにワインダーを一体化。秒間5コマ連写のモータードライブ、フィルムを圧板に吸着させるRTVシステム、プレフラッシュTTLスポット測光、コマ間デート表示など各種の最新技術を導入した完全な新設計でRTS/RTSIIと機構やサイズなど大きく異なり、視野率も92%から100%に、最高速シャッター速度も1/2000から1/8000に引き上げられた。 歴代機で最も堅牢な機体となった。
[編集] 139クオーツ
RTSに続き発売された。シャッター速度1/1000秒と上位機種に比べスペックダウンされている。 しかし、この139からシャッター速度、タイマー動作がクオーツ制御化され精度が上がっている。 携行性の良さから未だに人気は高い。 シャッター速度に無理がないのか耐久性は高く未だに修理可能である(2006年8月現在)。
[編集] 137MD/MA
この機種で巻き上げの自動化が行われた。137MDは自動露出専用機として販売されたが、マニュアル操作の声から137MAへ改良された。139同様に携行性は良く同機を好むユーザーは多い。 また137系をベースにAF機が試作されたが、この試作機が世に出ていたら果たしてCONTAXの未来は今と異なっていたのであろうか?
[編集] 159MM
137系で自動巻上げとなったが、小型化するためか再び手動巻上げ化されている。 外観から人気は高い。 この機種のみに採用された電磁シャッターは耐久性に問題があるのか以降の機種は再び電子シャッターとなっている。 手巻きのため、ワインダーが用意されている。角まったデザインは同時代のロボットアニメのメカを彷彿させるのは時代の空気のためか。
[編集] ST
Nikonに例えるなら、RTSIIIをF5、本機をF100に当てはめるとわかりやすい位置づけであろう。当たり前に使えるコンパクトな高級機として、最も完成度が高いマシンだった。外付けの縦位置レリーズ付きバッテリーケースもラインナップされていた。暗いところで液晶部分が点灯するイルミネーション機能を有している。一方で167MTから引き継いだ機構も多くシャッター音は大きめである。
[編集] RX
機能的にはSTにフォーカスエイド機構を加えたもの。AF移行への実験機的性格が強い。このモデルを基本にAXが登場。STと比べシャッター速度が低下(1/6000→1/4000)、登場した時期のためか、信頼性が上がったもののSTほどの好評は得られなかった。その後部品の払底を理由にフォーカスエイド機構を持たないRXIIに移行した。結果としてファインダーが明るくなったが新しい機能や性能向上はなされなかった。 金属ボディを持つ。
[編集] S2・S2b
機械式縦走りシャッターを搭載したマニュアル露出制御専用カメラ。他のコンタックス一眼カメラのレイアウトと異なり、他社の多くのカメラのようにシャッター速度設定ダイアルが右手側に設置されている。チタン外装を採用。 S2はスポット測光、S2bには中央部重点平均測光が採用されている。
機械式で1/4000秒とした弊害か、CONTAXのイメージとは程遠いシャッター(音・ショック)、ワインダーの設定がないなど異色の機種である。
S2は純正改造によりS2b仕様(スポット→中央部重点平均測光)となった物もある。
[編集] 167MT
RTSII製造終了からRTSIII製造開始まで唯一のコンタックスとして存在した。世で初めてAutomatic Bracketing Control(自動多段階露出。通称ABC機構)機能を搭載し、性能は以後のコンタックスの中堅機と比肩できるモデル。シャッター速度調整がスライドスイッチであることや、液晶パネルの配置がAFカメラ的であり試行錯誤の跡も伺える。以降のモデルではシャッター速度操作をダイヤル式に戻したことからスライドスイッチは不評であったようである。 ファインダー視野率は95%。
[編集] Aria
入門機的存在でヤシカ・コンタックス系の最終機種。誰もが使いやすいようにマルチモードAEを採用し、絞り値、シャッタースピードなどの撮影データを記録することが出来るデータバックをオプションで用意していた。167MTの操作レイアウトを改善し多重露出を加えコンタックスMF機としては唯一評価測光を採用している。軽量を重視してメインフレームすら非金属化された。このため扱いやすい反面、重量のかさむレンズを装着すると重心が偏り、本機販売に際して軽量レンズ2本が同時発売された。
[編集] AX
AF一眼レフカメラ。マニュアルフォーカスしかできないCONTAX用レンズでオートフォーカスを実現した。レンズではなくフィルム面を動かしてピントを合わせるという特殊な構造は、カメラの中にカメラがあるといった感のある空前絶後といってよいものである。 二重構造故か駆動は静粛である。メーカーの思惑とは別に、マウントアダプターによりM42マウントレンズでもAF可能となるため一部の評価は高い。
[編集] Nシステム
近年コンタックスが送り出した新しい35mmAF一眼レフシリーズ。口径を広げ、完全電子制御化した新マウントの採用により従来のヤシカ・コンタックスマウントとの互換性は放棄している。645マウントと互換性があり、645用のレンズもアダプター一つでNシステムのカメラに装着して使用することが可能である。また、一部のレンズには超音波モーターが採用されており、静かなAF駆動と常時MFが可能である。 新マウント化の意義は、デジタル時代に向け最高度の光学性能の追求から35mmフルサイズのデジタル素子を採用し、この素子に垂直に入射光を当てるためのものであった(注)。 しかし、そのためレンズは大型化してしまい携行性は大幅に損なわれた。さらに機体の完成度に問題(バッテリーの消耗度、AF性能)により、他社に比べ扱い難い機体となってしまった。 また、他メーカーのような普及型のデジタル機をついにラインナップできず、ズーム主体のレンズラインナップは旧来のユーザーの失望を買い商業的に失敗に終わった。Nマウントの挫折によりCONTAXは再び市場から姿を消した。
- (注):デジタル素子は斜めからの入射に対応した構造ではなく、斜め入射はそのまま画質低下をもたらす。銀塩からのレンズマウントの場合、撮影素子全面に入射光を垂直に当てる事は難しい。銀塩時代では斜めの入射もさしたる問題ではなく、設計時点でデジタル時代程の考慮はそもそも払われていない。従って銀塩からマウントを引き継ぎデジタル化したシステムは、厳密にはこの問題には対応しきっていないのが現状である(普通に撮影する範囲では目に付く弊害ではなく各社半ば無視した感がある)。フォーサーズ・システムも参照。
[編集] N1
フラグシップ機。AF測離点は5点だが、作画を重視してファインダーの対角線上に並んでいる。ダイアル操作中心のアナログ的な操作系をしている。最高速1/8000秒のシャッター。秒間最高約3.5コマの連続撮影が可能。Planar 85/1.4の薄い被写界深度に対応するためかフォーカスABC機構(*注)を搭載。視野率95%。オプションで先頭コマ、およびコマ間に撮影データを記録できるデータバックが用意されていた。キャッチコピーは「撮る情熱は、ついにフォーカスを支配した。」。
(注)自動的にピントを前後させて合焦した位置より前ピン・後ピンの画像も撮影する機構。
[編集] NX
普及機。AF測離点はN1同様5点。最高速1/4000秒のシャッター。秒間最高2.3コマの連続撮影が可能。視野率93%。ストロボ内蔵。オプションでデートバックが用意されていた。キャッチコピーは「作品づくりの楽しさが加速するNX。」。
[編集] コンタックス645
コンタックスが645判カメラ市場に初めて投入した機種。コンタックス645マウントを採用しており、Nシステムとの互換性がある。フォーカルプレーンシャッターを採用しており、シャッタースピードは中判カメラ最高速の1/4000を誇る。レンズには超音波モーターが採用されており(マクロプラナーT*120mmはMF専用レンズ)、静かなAF駆動と常時MFが可能である。また、RTSIIIと同じくRTVシステムを搭載し、巻き紙のない220フィルムでは、フィルムを圧板に密着させ平面性を保つことが可能であった。
[編集] レンジファインダーカメラ
[編集] Gシリーズ
世界で初めてのAFレンジファインダーカメラ。コンタックスGマウントを採用している。ホロゴン、ビオゴン、プラナー、ゾナーといった名高いレンズがGシリーズ用に用意されている。ホロゴンの装着時は自動的に外部測光へ切り替わるようになっている。 Gシリーズの低迷により各レンズの市価は低いが、性能・描写は一眼レフカメラ用レンズを凌駕しており愛好家は多い。
[編集] G1
チタン外装。最高速1/2000秒のシャッター。露出は絞り優先オート、またはマニュアル。「カメラグランプリ'95」受賞。純正改造により21mmレンズへの対応可能とした機体が存在。改造有無はフィルム室のROMシールのカラーで判別可能。
[編集] G2
G1の後継機・上位機。AF精度の向上を図っている。外観はやや大型化し、ボディ前面に往年のContax同様にフォーカシング機構を設置。最高速1/6000秒のシャッター。秒間最高4コマの連続撮影が可能。オプションで先頭コマ、およびコマ間に撮影データを記録できるデータバックが用意されていた。
[編集] コンパクトカメラ
[編集] Tシリーズ
ゾナーT*レンズを搭載した単焦点コンパクト機シリーズ。高級コンパクトカメラという分野を築いた。名称は「小型の」を意味するTinyに由来する。
[編集] T
Tシリーズ初代機。MF式コンパクトレンジファインダー機。フラットなフロントカバーを前に倒すとレンズが出てくるというギミックが特徴。 レンズはゾナーT*38mm F2.8、最短撮影距離は1m。絞り優先AE式電子シャッター。 京セラ、カールツァイス、ポルシェデザインによる共同開発。チタン製ボディが検討されたが、加工技術的に時期尚早として見送られた。 専用ストロボ・T14オートを装着することでストロボ撮影可能。
[編集] T2
Tシリーズ2代目、AF式コンパクトカメラ。高級コンパクトカメラの代表的機種で、90年代には他社の追随を生んだ。素材・デザイン・機能が有機的に統合された工業製品として長期にわたって好評を博し、T3の発売以降も愛用するユーザーは多い。シルバーの他、チタンブラック、60周年記念ゴールドモデルなど、多数のバリエーションが存在する。
ボディーの素材にはチタンを、ファインダーカバーガラスにはサファイアガラスを、フィルム圧板には京セラのセラミックを新たに採用。レリーズボタンはTと同じく人工多結晶サファイア。
レンズは沈胴式で、電源を入れるとチタンのカバーがスライドしてレンズがせり出す。レンズには絞りリング付き。電源ダイヤルはそのままフォーカスダイヤル(AF/MF)として機能、また、露出補正には独立したダイヤルを採用するなど、操作性に優れる。
レンズは38mm/f2.8 Sonnar、最高シャッタースピード1/500。AE絞り優先、及びプログラムモード。
定価120,000円(シルバー)。
[編集] T3
Tシリーズ3代目。CONTAX製コンパクトカメラ最後の機種となった。シリーズの高い描写性能はそのままに、T2よりも小型化が図られている。また、ボディーにプラスティックを採用するなど、低コスト化路線がとられた。(定価98,000円)
T2からレンズを一新し、画角は38mmから35mmに変更、またその描写は鮮やかでコントラストが高いと評される。本体はAFでの使用感を向上させた一方、露出補正やマニュアルフォーカスの操作はボタンの併用となったた分、煩雑となった。最高シャッタースピードは1/1200に向上。
[編集] Tix
シリーズ唯一のAPSカメラ。コンタックスのフィルムカメラでは最小のボディサイズを誇る。最短撮影距離、シャッター機構、大きさ、デザインなどの面でT3の前身となった。
T3・TVSIIIに搭載されたダブルビトウィーンシャッター機構を初めて採用した機種で、レンズシャッター機では異例の最高速1/1000秒を実現している。ゾナーT*28mmF2.8を搭載。35mm版換算で35mmの画角となる。
定価120,000円(税別)
[編集] TVSシリーズ
バリオゾナーT*レンズを搭載したズームコンパクト機シリーズ。
[編集] TVS
[編集] TVSII
[編集] TVSIII
[編集] デジタルカメラ
コンタックスのデジタルカメラとしては、コンパクトカメラと一眼レフカメラが存在する。コンタックス事業とともに、一部海外を除き、デジタルカメラ事業からも2005年を持って撤退する。
[編集] Nデジタル
Nシステムを採用したデジタル一眼レフで、史上初35mmフルサイズのCCDを採用した。そのため、N1、NXと同じ画角で撮影することが可能となっている。しかしながら高価でありながら機能面で他のプロ機よりも見劣りしていたこともあり、それほどの売れ行きを見せなかった。
2005年になってようやく一般のレベルで普通に扱えるフルサイズ機が登場したことから、Nデジタルの登場は早すぎたとも言える。発売時期を遅らせても機体の完成度を上げスタートしていれば現在の惨状にはならなかったとも推察される。
CONTAXの終焉により現在、Zeissレンズは各マウントに供給され高級ラインナップとして広く普及している。国産メーカーでZeissレンズが対応を想定してないマウントはもはやフォーサーズのみで、なんとも皮肉な結果である。(2006フォトキナではシフトレンズという特殊レンズながらEFマウント対応レンズがついに参考出品された)
[編集] Tvsデジタル
T3とほぼ同じサイズ、デザインを実現しながらも3倍ズームレンズを搭載したコンパクト機。
ツァイスレンズならではのシャープかつハイコントラストな描写を記録できる。またデザインがT3と同様であるためカメラの高級感を体感できる「モノ」としても数少ないデジタルカメラでもある。
[編集] SL300R T*
FinecamブランドのSL300Rをベースに、T*レンズ、小型レンズフード、シボ革仕立ての外装を盛り込んだカメラ。単に外装を替えただけでなく、T*レンズを活かすように画像処理エンジンにも改良が加えられている。 SL300R同様、秒間3コマ連写にも対応可能。
[編集] U4R
SL400Rをベースに外装、レンズ、画像処理エンジンを改めたカメラ。
[編集] i4R
香水瓶のような形状、サイズに単焦点レンズを搭載したカメラ。アクセサリーとしても存在感がある。京セラコンタックスとしての最終機種。