ゾンビ (映画)
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ゾンビ(Zombie Dawn of the Dead)とは、ホラー映画の巨匠ジョージ・A・ロメロが監督としてメガホンを取った作品である。彼のファンたちは、この作品をして「ゾンビ映画の最高作」と評する。1978年公開。日本での公開は1979年3月。
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[編集] あらすじ
全米各地で、突如として死者たちが蘇り人々を襲い始めた。人々はゾンビを銃殺し増殖をとめようとするが、抵抗むなしく治安はしだいに悪化し、ゾンビは勢力を増していった。SWATのロジャーとピーターは、フィラデルフィアの住民が死体の引渡しを拒否するアパートで、死者が復活し生者を食らう様を見てしまう。二人はテレビ局に勤める友人のスティーブン、その恋人のフランと共にヘリで脱出を図る。上空のヘリの中から、彼らが見下ろした光景は、死者が街を埋め尽くす地獄絵図であった。
彼らは絶望しながらも食料と武器調達のため、大型ショッピングセンターに着陸する。ショッピングセンターには、生きていたころの習慣で集まったゾンビがさまよっていたが、彼らは最上階のフロアの一部を占拠。トラックで出入り口を塞いで安全の確保に成功するが、その為にロジャーが犠牲となってしまう。悪夢のような現実から解き放たれ、ありあまる食料、衣料品や銃器を手に入れた彼らは平穏な日々を過ごしていた。
だが、それも長くは続かなかった。ある夜、武装した略奪者と化した暴走族がショッピングセンターを襲撃し、彼らと共に大量のゾンビたちがショッピングセンターに雪崩れ込んで来た。フランを最上階に残し、ピーターとスティーブンは応戦するが……。
[編集] キャスト
- スティーブン - デビッド・エンゲ
- ピーター - ケン・フォリー
- ロジャー - スコット・H・ライニガー
- フラン - ゲイラン・ロス
- フォスター - デビッド・クロフォード
- バーマン - デビッド・アーリー
- 科学者 - リチャード・フランス
- テレビのコメンテーター - ハワード・K・スミス
- テレビのディレクター:ジョージ・A・ロメロ
- テレビ局の女性スタッフ:クリス・ロメロ(監督夫人)
- 暴走族のメンバー:トム・サヴィーニ(特殊メイク担当)
- トラックにひかれるゾンビ:トム・サヴィーニ(特殊メイク担当)
[編集] よもやま話
- ジョージ・A・ロメロのLiving Dead三部作の第2作目とされている。1作目は『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(Night of the Living Dead)』、3作目は『死霊のえじき(Day of the Dead)』。なお、1作目の制作当初の題は「night of the anubis」である。
- 日本ヘラルド映画が日本で劇場公開したバージョンでは、本編では明確に説明されなかった死者たちの復活する理由を補完するために、オープニングに「ある惑星の爆発で、死体を蘇らせる光線が発せられ、それが地球で眠る死者に影響を与えたため蘇った」という説明のテロップを付加している。このとき同時に付加された、惑星が爆発するシーンの映像は、映画『メテオ』からの流用だとする説がある。
- S・スパロウによるノベライゼーション『死者たちの夜明け』には、主人公たちが拳銃自殺したショッピングセンターの経営者を発見したり、クライマックスに登場する暴走族たちの個人名が書かれていたり、本編では描かれていないシーンがいくつか描かれている。
- 本作の熱狂的ファンの一人にクエンティン・タランティーノがいる。無名時代、履歴書に「暴走族の一員役で出演」との嘘の経歴を書いていたほど。また、「フロム・ダスク・ティル・ドーン」の製作総指揮を務める際、トム・サヴィーニに暴走族風の男「セックス・マシーン」役で出演を要請している。
- 2004年、同タイトルにてザック・スナイダー監督によりリメイクされる。邦題は「ドーン・オブ・ザ・デッド」。
- ピッツバーグ郊外のショッピングモールで撮影された。
- トレーラー調達の場面で、ロジャーがゾンビをはね飛ばすのだが、スロー再生するとトランポリンが映ってしまっている。はね飛ばされるゾンビは、後半に暴走族のメンバーとして登場するトム・サヴィーニが演じている。
[編集] バージョン違い
この映画には今の所非公式1種を含め4種の大きなバージョン違いがある。 それぞれのバージョンを日本では 「米国劇場公開版」 「ダリオ・アルジェント監修版」 「ディレクターズ・カット完全版」 「ファイナル・カット版(非公式)」と呼んでいる。
公式の3種は、ビデオ・DVDの発売により日本でも容易に視聴可能である。しかし、「ダリオ・アルジェント監修版」「ディレクターズ・カット完全版」のDVDは現在絶版であり、インターネットオークションなどで価格が高騰しているため、再販が期待されている。
- 「米国劇場公開版」は世界で最もポピュラーなバージョンである。本編127分。
- ロメロ独特の暗い味付けが特徴であり、やや面長。日本では下記の「ダリオ・アルジェント監修版」を基にしたバージョンが劇場公開されたが、ビデオ発売されたものはこちらの「米国劇場公開版」であり、日本のファンは驚きと戸惑いを持って迎えた。
- 「ダリオ・アルジェント監修版」は日本で最も知られるバージョンである。本編115分。
- ゴブリンの重厚なロックが存分にかけられており、アクション映画のような編集が特徴。最高のバージョンと言うファンも多い。日本での劇場公開版は、このバージョンから残酷シーンをカット(静止画処理)し、オープニングに惑星爆発のシーンとそれによるゾンビ登場の説明を加えた、105分の短縮版である。また、それからさらに残酷シーンやヘリの移動シーン等をカットして約90分に短縮した東京12チャンネル放映バージョンが2種類存在している(下記参照)。
- 「ディレクターズ・カット完全版」はロメロがカンヌ国際映画祭出品の為に作ったバージョンである。本編139分。
- 一般的に用いられるディレクターズ・カットの定義とは若干異なる制作経緯(米国劇場公開版より前に作られている)の為”Cannes Version”や”Rough Cut Version”と呼ばれる事もある。撮影終了から映画祭開催迄の期間が短かった為に粗編集しか出来ず、ロメロ監督は後のインタビューで「不満足な出来だ」と公言している。ショッピング・センター内の生活描写や警察署のシーンが長くなっており、又他のシーンでも秒単位の変更が行われている。
- 「ファイナル・カット版(非公式)」は熱狂的ファンが勝手にシーンを継いで作ったバージョンである。本編156分。
- ディレクターズ・カット版とアルジェント版双方にしかないシーンを足して、音楽はゴブリンのものに統一。国内で視聴する事は非常に困難だが(ドイツでDVDが市販されていた)、見事に映画のムードを保っている。暗い雰囲気に突然ロックがかかる不思議な味が特徴。なお、このバージョンには惑星爆発のシーンは収録されていない。
[編集] テレビ放送バージョン
本作は東京12チャンネルの木曜洋画劇場で2回放映され、それぞれが微妙に異なる内容となっている。なお、以下の呼称は暫定的なものであり、一般的な名称は特に無い。
- 深沢哲也版(サスペリア版)
- 1980年10月16日に放映された初放映バージョン。解説は映画評論家・深沢哲也氏。タイトルは「衝撃SFサスペンス ゾンビ 地球SOS 死者が甦った日」と銘打たれている。日本劇場公開版から残酷シーンのほとんど、主人公達を乗せたヘリがフィラデルフィアを飛び立ってからショッピングセンターにたどり着くまでの経過などをカットして、約90分に収めている。特徴的なのは音楽で、多くを同じゴブリンが担当した映画『サスペリア』の音楽に差し替えている。また、ラスト、ヘリコプターの燃料の残量を聞くピーターの台詞が「赤ん坊を育てる場所を見つけなきゃな」と変えられ、ハッピーエンド色が強くなっている。
- 河野基比古版
- 木曜洋画劇場の解説者が映画評論家・河野基比古氏に交代してから放映されたバージョン。分数や編集はほぼ同じ。音楽はオリジナルに即して戻され(一部ロメロ版の音楽が使用されている)、ラストのピーターの台詞もオリジナルに即した内容のものとなっている。なお、内容を分かりやすくするために日本語吹き替え独自の台詞に変更されており、冒頭のテレビ局で博士が自説を開陳するシーンでは「惑星イオスが爆発したためにゾンビが復活した」などと、オリジナルの設定がさらに強化されている。(惑星爆発の映像素材は「メテオ」からの流用)
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