トロイア戦争にかかわる伝説
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トロイア戦争にかかわる伝説(トロイアせんそうにかかわるでんせつ)
目次 |
[編集] 登場人物
(アカイア勢)
- 大アイアース
- 小アイアース
- アキレウス
- アガメムノーン
- アンティロコス
- イードメネウス
- オデュッセウス
- カルカース
- シノーン
- ディオメーデス
- テルシテース
- パラメーデス
- パトロクレス(→パトロクロス)
- パトロクロス
- ピロクテーテス
- プロテシラーオス
- ネストール
- メネラーオス
- マカオーン
(アカイア勢:関連人物)
- アイギストス
- アトレウス
- イピゲネイアー
- エーレクトラー
- オレステース
- クリュタイムネストラ(→クリュタイムネストレ)
- クリュタイムネストレ
- タンタロス
- テラモーン
- テーレマコウス
- テューディウス
- テュエステース
- ピュラデース
- ブリュセーイス
- ペロプス
- ポイアース
(アカイア勢:関連する神々)
- テティス
- ポセイダーオン
(トロイア勢)
- アイネイアース
- アステュアナクス
- アレクサンドロス(→パリス)
- アンドロマケー
- エウリュピュロス
- カッサンドラ
- サルペドーン
- スカマンドリオス(→アステュアナクス)
- ドロン
- ヘクトール
- パリス
- ヘレネー
- プリアモス
- ヘレノース
- ポダルケース(→プリアモス)
- ペンテシレイア
- メムノーン
- ラーオコーン
(トロイア勢:関連人物)
- トロース
- イーロス
- アッサラコス
- ガニュメーデス
(アカイア勢:関連する神々)
- アレース
- アポローン
- アルテミス
(その他)
- ヘーラクレース
- クリュセーイス
- クリュセウス
[編集] 前史
[編集] 前史(その他関連)
- テバイ攻めの七将
- エピゴノイ
- アトレウスとテュエステースの争い
[編集] トロイア戦争に至るまでの経過
[編集] トロイア戦争I(イリアス以前)
- アウリスにアカイア勢が集結
- パラメーデス
- タウリスのイピゲネイアー
- テーレポス
- 雲のヘレネー
- ピロクテーテスを置き去りにする。
- プロテシラーオスの死
[編集] トロイア戦争II(イリアス)
- 第一歌 悪疫、アキレウスの怒り。
- 第二歌 夢、アガメムノーン軍の士気を試す、ボイオーティアまたは「軍船の表」。
- 第三歌 休戦の誓い。城壁からの物見。パリスとメネラオスの一騎討ち。
- 第四歌 契約破棄。アガメムノーンの閲兵。
- 第五歌 ディオメーデス奮戦す。
- 第六歌 へクトールとアンドロマケーの語らい。
- 第七歌 ヘクトールとアイアースの一騎討ち。死体収容。
- 第八歌 尻切れ合戦
- 第九歌 使節行。和解の嘆願。
- 第十歌 ドロンの巻
- 第十一歌 アガメムノーン奮戦す。
- 第十二歌 防壁をめぐる戦い。
- 第十三歌 船陣脇の戦い
- 第十四歌 ゼウス騙し
- 第十五歌 船陣からの反撃
- 第十六歌 パトロクロスの巻
- 第十七歌 メネラオス奮戦す
- 第十八歌 武具作りの巻
- 第十九歌 アキレウス、怒りを収める
- 第二十歌 神々の戦い
- 第二十一歌 河畔の戦い
- 第二十二歌 ヘクトールの死
- 第二十三歌 パトロクロスの葬送競技
- 第二十四歌 ヘクトールの遺体引き取り
[編集] トロイア戦争III(イリアス以後)
この「イリアス以後」の章は3世紀頃小アジアのスミュルナで活躍した詩人クィントスによる書物の要約である。クィントスは自分のこの書物に特にタイトルをつけていなかったので、この書物は「タ・メタ・トン・ホメーロン」(ホメロスの続き)とか「ポスト・ホメリカ」(ホメロス以後)と呼ばれていた。主な内容は、ペンテシレイアの物語、メムノーンの物語、アキレウスの死、アイアースの死、エウリュピュロスの参戦、ネオプトレモスの参戦、ピロクテーテスの参戦、パリスの死、木馬の計略、トロイアの陥落である。
タ・メタ・トン・ホメーロンにはイリアス以後トロイアが陥落するまでの代表的な物語をほとんど収めているが、ヘレノースがトロイア陥落の為の予言をした事についてのみは例外的に触れられていない。この為我々はこのヘレノースに関する物語のみは他の書籍を参考した。
(この章の作成には、松田治によるタ・メタ・トン・ホメーロンの日本語訳「トロイア戦記 講談社学術文庫」を参考にした)。
[編集] ペンテシレイアの死
ヘクトール亡き後、アマゾーンの女王ペンテシレイアがトロイアー勢の援軍としてきた。 ペンテシレイアはアレースの娘でヒッポリュテーの姉でもある。 ペンテシレイアはアキレウスの強さを知らなかったため、 トロイアーについたペンテシレイアはトロイアー勢に、 アキレウスを倒してアカイア勢の船団に火をつけることを約束した。 しかしアンドロマケーは夫であるヘクトールを殺された事でアキレウスの強さを 知っていた為、ペンテシレイアの事を思慮の足りない女性であると思うだけであった。
戦場に出たペンテシレイアは、名高いアキレウスやディオメーデスと戦う為、 アカイアの雑兵を幾人も殺しながら戦場を駆け巡った。 ペンテシレイアが奮戦する様子をみたトロイアーの女性達は、 ペンテシレイアに倣って戦いに赴こうと武装した。 しかしテアーノーという思慮深い女性が彼女達を止めた為事無きを得た。
戦場を駆け巡るうちにペンテシレイアはついにアキレウスと大アイアースの二人に出会った。 ペンテシレイアは二人に挑発の言葉を投げかけたものの、 ペンテシレイアの放言にアカイア勢は嘲笑するだけであった。 ペンテシレイアは二人に戦いを挑み、まずアイアースに槍を投げたが、 槍はアイアースの脛当てを貫くにとどまった。 槍が無駄になった事を悔しがるペンテシレイア。アキレウスはペンテシレイアに一騎打ちを挑み、彼女の胸を傷つけた。ペンテシレイアは動揺し、アキレウスに命乞いすることも考えたがアキレウスはその隙を与えず、ペンテシレイアをその乗馬ごとケイローンから譲り受けた槍で貫いた。
ペンテシレイアが死ぬとアキレウスは死者を嬲ろうとまずペンテシレイアの兜を剥いだ。 兜の下から現われたペンテシレイアの顔があまりに美しかった為、アキレウスは ペンテシレイアを殺した事を後悔し、苦悶した。 アキレウスが懊悩する様子を見たテルシテースは、アキレウスを嘲笑した。 これにアキレウスは激怒し、アキレウスはテルシテースを殴り殺した。
テルシテースはアカイア勢に嫌われていた為、アカイア人達はテルシテースの死を むしろ喜んだが、テルシテースと血縁関係にあるディオメーデスのみはアキレウスに対し 立腹した。しかしアカイアの兵士達が彼をなだめた為大事には至らなかった。
アガメムノーンとメネラーオスが高貴なペンテシレイアに称賛の意を覚えたため、 二人はトロイアー人達に彼女の遺体を引き取る事を許可した。 ペンテシレイアの死を知ったトロイアー人達は、彼女の死を嘆き、 彼女の死体に宝石を乗せて遺体を火で燃やした。 そして裕福なラーオメドーンの墓に彼女を共に埋葬した。
[編集] メムノーンの死(小イリアス)
- メムノーンの参戦
ペンテシレイアの死後、メムノーンが自国の兵を連れ、 トロイアー側に加勢しに来た。メムノーンは貴公子ティトノスを父とし、 曙の女神エエオスを母に持つエチオピアの王である。 彼は早朝に戦場へと向かった。
- メムノーン、アンティロコスを仕留める
戦いに赴いたメムノーンは、ネストールの子である槍の名手アンティロコスと戦った。 アンティロコスはまずメムノーンに槍を投げたが、 メムノーンが避けた為槍は彼には当たらず、槍は彼の親友アイトプスを殺した。 親友を殺され激怒したメムノーンはアンティロコスに襲い掛かった。 アンティロコスは大石でメムノーンの頭蓋を殴り反撃したものの、 兜に守られたメムノーンを殺すには至らなかった。 アンティロコスの攻撃に耐えたメムノーンは獰猛な獅子が猪を襲うかのように アンティロコスに襲い掛かり、槍で心臓を貫いてアンティロコスを殺した。
- トラシュメーデース、メムノーンに迫る。
これの様子を見たネストールは悲観にくれ、アンティロコスの弟である トラシュメーデースにメムノーンを殺すべく激を飛ばした。 トラシュメーデースは家来であるペーレウス(アキレウスの父とは別人)を連れ、 共にメムノーンへと向かった。 二人はトロイアーの軍兵を殺し、メムノーンに迫ったが、 メムノーンは自分のほうが二人より遥かに優れている事を確信していたため、 あわてる様子もなくアンティロコスの死体から武具を外していた。 メムノーンとの力の差を思い知り、二人は戦意を喪失した。
- メムノーン、老ネストールを諌める
メムノーンは自分の父ティトノスと同じ年頃である老ネストールに哀れをもよおし、 ネストールを諌め、退却するよう促した。 我が子アンティロコスを殺されたネストールはメムノーンに毒ついたものの、 老いた自分がメムノーンに勝てるはずもない為、 トラシュメーデースおよびペーレウスと共にメムノーンの元を去っていった。
- アキレウスとメムノーンの激突
アンティロコスの武具を奪ったメムノーンはアカイア勢へと迫り、多くの雑兵を殺した。 その間、メムノーンの元から逃げ帰ったネストールはアキレウスに、 メムノーンを倒し、アンティロコスの死体と武具とを奪い返すように頼んだ。 アンティロコスや他のアカイア勢の死に憤激したアキレウスはメムノーンへと迫った。 対峙したアキレウスとメムノーンとはまず激しい舌戦を繰り広げた後、戦い始めた。 二人の戦いは、エリス(不和女神)、血に飢えたケール(死神)、邪悪なオレトロス (同じく死神)を楽しませるのみならず、天上の神々の注目をも集めた。
- メムノーンの死
激突する両雄を見る神々の中でも二人の母、テティスとエエオスの恐れは並大抵の ものではなかった。二神はオリュンポスに上り、大神ゼウスの元に我が子の為命乞いをした。 二柱の神の嘆願に当惑したゼウスは、アキレウスとメムノーンとの二人の運命を天秤にかけた 所、メムノーンの皿が沈んだ。 こうして二人の生死は決定された。アキレウスはメムノーンに黒い剣を突き刺し、 心臓をえぐった。メムノーンが黒い血の海に倒れると、エエオスが雲に隠れて嘆いたため、 天が闇に覆われた。 神々がメムノーンの血を集め、イーデーの山の尾根にパープラゴネイオス川を作った。 この川は毎年メムノーンが死した日が来るたびに血の色に染まり、耐え難い匂いを発する。
[編集] アキレウスの最後
- アキレウスの死
アンティロコスの死に激こうし続けるアキレウスは、 町の近くまでトロイアー兵を殺すべく追いかけ、 大地が至るところ血にそまるほど多くの兵士を殺した。
アキレウスがトロイアー兵を屠り殺す様子に憤りを感じたポイボス・アポローンは、 アキレウスに声をかけ、戦場を離れるようにいった。 しかしアキレウスはこのアポローンの忠告を省みないばかりか、 逆にアポローンに遠くに退くよう言い、なおもトロイアー兵を追廻して殲滅し続けた。
この様子に怒りに駆られた遠矢の神アポローンは、パリス(アレクサンドロス)に力を貸し、 弓でもってアキレウスを射た。矢がアキレウスの踵に当たると、たちまち苦痛が心臓まで 達し、アキレウスはその場に倒れた。 (注:伝によってはアキレウスは不死身であると伝えられているが、この伝では 踵がアキレウスの唯一の弱点である。アキレウスを射たのはアポローン、パリスふた通りの伝承がある)。
アキレウスは激痛を堪え、なおもトロイアー兵を屠り続けた後、ついに死んだ。 死ぬ直前までのアキレウスの戦いぶりがあまりに凄まじかった為、 トロイアー兵は誰一人としてアキレウスの異変に気づかなかったという。
- 遺体の争奪、グラウコスの死
アキレウスが死ぬとアカイア、トロイアー両勢の間で遺体争奪の戦いが起こった。 大アイアースはアキレウスの死体を守るべく槍で敵兵を追い払い死体を守ろうと、 グラウコスの親友エリュマースをはじめ多くの者を殺した。 親友を殺されたグラウコスはアイアースへと踊りかかり、槍でアイアースの 盾を突いたが、幾層もの牛の皮でできた盾を貫くには至らず、 大アイアースの攻撃で討ち死にした。
アイアースはさらにアイネイアースとパリスとを傷つけ、 オデュッセウスの援護のもと、アキレウスの死体を兵船の前の天幕まで連れ帰った。
- 埋葬
アキレウスの死体を前に、アカイアの将達は様々に追悼を述べた。 そして亡骸を大釜に入った湯でテティスがアキレウスに送った真紅の服を遺体に着せた。 トリトーゲネイア・アテーナーはアキレウスに哀れをもよおし、 アキレウスの死体にアンブロシアをかけた。 アンブロシアには死体をいつまでも若く保つ効果があるという。 さらにアテーナーはアキレウスの盾を、パトロクロスの為に嚇怒した文様の 恐ろしげなものに変えた。 遺体があまりに生きているときさながらだったのでアカイアー勢は皆度肝を抜かれたという。 アカイアー勢達は遺体の上に薪を積み上げ、火をつけた。 テティスはアキレウスを火の中から運び去って、「レウケーの島」あるいは「至福者の島」に 置いたと言う。
- 葬送競技
[編集] 大アイアースの死
- アキレウスの武具の分配
アキレウスの葬送競技が一通り終わるとテティスは、生前アキレウスが使っていた武具をアカイア人達の真ん中に置いた。そしてテティスは、アキレウスの遺体の争奪戦で最も活躍した者にこの武具を与えるので、我こそはと思うものは自ら名乗りでるようアカイア人達に言った。
するとアカイア人達の中から大アイアースとオデュッセウスの二人が名乗り出た。そして二人は自分達のいずれが最も活躍したのかの裁定を、イードメネウス、ネストール、アガメムノーンの三人に委ねた。
しかしながら裁定を委ねられた三人は、裁定を行う事を恐れた。なぜなら選ばれなかった一方が彼らに激怒し、為に何らかの破局を迎えるであろう事は容易に想像されたからである。
そこでネストールは自分達で裁定を行う代わりに捕虜のトロイア兵達に いずれが遺体争奪戦の際彼らを苦しめたのかを述べさせる事で、アイアース、 オデュッセウスのどちらが最も活躍したのかを決定する、という裁定方法を提案した。 イードメネウスとアガメムノーンは自分達で裁定を行うのを避ようと これに同意したので、捕虜達に活躍したのがどちらかを決定させる事に 決まった。
評議の為捕虜のトロイア兵達が座の中央につれて来れられ、 自分こそアカイア勢の中で最も強いのだと信じるアイアースとオデュウセウスが 互いに罵り合う中で、裁定が行われた。 アイアースが舌戦でオデュッセウスにかなうはずもなく、オデュッセウスの言う意見に トロイア兵達は賛同し、彼らは全員、異口同音にオデュッセウスこそアキレウスの武具に ふさわしい人物だと述べた。 この勝利にオデュッセウスは一人酔いしれたが、残りのアカイア勢達はうめき声をあげた。 なぜなら負けたアイアースの怒りが恐ろしかったからである。
- アイアースの夜襲
逆上したアイアースは、アカイアの将達を殺すべく、するどい剣を手に持ち、 夜の闇に紛れ彼らの船団へと向かった。 しかしトリトーニス・アテーネーが彼を狂わせた為、アイアースはそばにいた羊達を アカイア勢だと思ってしまった。 狂えるアイアースはただ一人、逃げ惑う羊達を剣で一匹また一匹と斬りつけて殺していった。 ギリシア勢に無常な定めを投げ与えたつもりになって。 アガメムノーンを殺し、メネラオスを殺し、将という将を殺したかのように錯覚した アイアースは、死に絶える羊達の屍を超えて一頭の羊へと向かい、 そしてオデュッセウスだと誤解したその羊を惨殺した。 羊が血溜りの中に倒れると、勝ち誇ったアイアースは 満足げに死体を見て、頬にぞっとする笑いを浮かべて羊の死体に嘲笑の言葉を浴びせた。
- アイアースの自殺
我に返ったアイアースは、目の前一面に羊達の屍骸が転がっているのを見て茫然とした。 神が仕掛けた罠に気づいたアイアースは、体から力という力が抜け落ちてその場に崩れた。 そしてヘクトールとの一騎打ちの後、彼と交換して譲り受けた剣で、自らの首を貫き、 砂埃の中に倒れた。
アカイア人達はアイアースを見つけたが、彼が倒れるまでは恐れをなして誰一人彼の元へと 歩み寄る事はしなかった。 アイアースが倒れると、彼らは死体の周りでうつ伏せになって倒れ付し、 自らの頭にかけられるだけの砂という砂をかけながら号泣した。 中でもアイアースの異母兄弟であるテウクロスと、アイアースの妻であるテクメッサの嘆きは 大きかった。二人は死体にむしゃぶりつき、涙を流しながら悲しみの悲鳴をあげるのだった。
オデュッセウスやアガメムノーンを始めとしたアカイアの将達は、アイアースに対する 処遇を後悔し、彼らは死体を埋葬した。 しかしアガメムノーンはアイアースの死体を焼く事だけは許さなかった。 この為イーリオンで死んだ者達の中で彼だけが棺に収められる事になった。 アイアースの死体はロイティオンに埋葬された。
[編集] エウリュピュロスの参戦
ヘーラクレースの孫にあたるエウリュピュロスがトロイア側に加勢 する為現われた。
- マカオーンの死
参戦したエウリュピュロスは、アカイアの雑兵を次々と殺し、そしてニーレウスと、アスクレビオスの子マカオーンを殺した。二人の死に気づいたテウクロスがアカイア勢に激を飛ばすと、殺された二人の死体を巡って両軍の間に戦いが起こった。マカオーンの弟ポダレイリオス達の活躍により二人の死体を回収する事に成功した。
[編集] ヘレノスを捕らえ、イーリオン陥落の条件を聞き出す。
カルカースは、イーリオンを陥落させる為の条件をヘレノスが知っている事を予言した。 この頃プリアモスの子である予言者ヘレノスは、10年にわたる戦争に倦んだ為 山中に隠れ、戦争を避けようとしていた。 しかしカルカースの助けを借りたオデュッセウスがいち早くこれを察知し、 ヘレノスを捕らえてイーリオンを陥落させる方法を詰問した。 するとヘレノスは、イーリオンを陥落させる為に必要な三つの条件を言った。 その三つとは、ヘーラクレースの弓を手に入れる事、アキレウスの子ネオプトレモスが 参戦する事、イーリオンからパラディオンを奪還する事であった。 (注:アポロドーロスのビブリオテーケーでは、 ヘーラクレースの弓を手に入れるという条件の代わりに ペロプスの骨をギリシアから持ってくる事を挙げている)。
ネオプトレモスの参戦理由についてクィントスは普通知られている伝説とは異なるものを紹介している。普通に知られている伝説は、ヘレノースの予言によりトロイアを陥落させるためにネオプトレモスの参戦が必須であった為、ネオプトレモスが参戦する。しかしクィントスはこの説を採っていない。クィントスのタ・メタ・トン・ホメーロンでは、ネオプトレモスを参戦させるよう提案したのはカルカースである。タ・メタ・トン・ホメーロンでカルカースはネオプトレモスを参戦させる理由として、「彼は我々全員に大いなる光をもたらすはずだ」と述べている。しかしネオプトレモスの参戦がトロイアを陥落させるために必須である、とまではいっていない。
ピロクテーテスの参戦は、クィントスにとってもトロイアを陥落の為の条件の一つである。「悲痛な戦闘に熟達したピロクテーテスがギリシャの軍団に参戦する前に、イーリオンの都が倒されるのは、運命の望むところではなかった」(松田治訳)事をカルカースが鳥の飛び方を見て知り、内臓占いで確認する。
[編集] ネオプトレモスの参戦
[編集] ピロクテーテスの参戦
トロイアーへと向かう途中、彼らはレームノスへと立ち寄り、 ピロクテーテスからヘーラクレースの弓を得ようとした。 ピロクテーテスにはアカイア人達にレームノスに置き去りにされて以来、 ヘーラクレースの弓で捕らえた鳥獣を食べて生きながらえていた。 置き去りにされた恨みがあるピロクテーテスがアカイア人達に快く ヘーラクレースの弓を渡すとは思えなかったため、 オデュッセウスは策を弄して弓を奪おうと考えた。 オデュッセウスは彼らの中で唯一ピロクテーテスと面識のない ネオプトレモスをピロクテーテスの元へと派遣し、 隙を見て弓を奪おうと企んだ。 しかしネオプトレモスはオデュッセウスと共に弓を奪おうと奸計を弄しているうちに、 自らの企みを恥じた為、弓を奪おうとするオデュッセウスにむしろ抵抗をした。 しかし、突如現われたヘーラクレースの霊魂がピロクテーテスにトロイアー戦争への 参戦を命じたため、ピロクテーテスはヘーラクレースの弓を持ってトロイアーへと向かった。
[編集] パラディオン奪還
トロイアーに到着した後オデュッセウスはパラディオンを奪還する為、 ディオメーデスと共に闇に乗じてイーリオンへと潜入した。 オデュッセウスは、ディオメーデスの肩車で、予め見つけておいた低みから城壁を越えて イーリオンへと侵入した。 オデュッセウスは乞食に姿をやつして、予め内通していたヘレネーに会い、 ヘレネーの導きでパラディオンのあるアテーナー女神の神殿を目指した。 プリアモスは偽のパラディオンを幾つも作り、 パラディオンを奪われるのを阻止しようとしていたが、 オデュッセウスはヘレネーから真のパラディオンがどれであるかを知り、 パラディオンを持ち帰った。 (注:別伝では、後に小アイアースがアテーナー女神の神殿でカッサンドラを犯した時 パラディオンが未だ神殿にあった事になっている)。
[編集] パリスの死
[編集] 木馬の計略
[編集] イリオンの陥落
[編集] オデュッセイアー
- 第一歌 神々の会議。女神アテネ、テーレマコウスを激励する
- 第二歌 イタケー人の集会、テーレマコウスの旅立ち
- 第三歌 ピュロスにて
- 第四歌 ラケダイモンにて
- 第五歌 カリュプソーの洞窟。オデュッセウスの筏作り
- 第六歌 オデュッセウス、パイエケース人の国に着く
- 第七歌 オデュッセウス、アルキノオスに対面す
- 第八歌 オデュッセウスとパイエケース人との交歓
- 第九歌 アルキノオス邸でオデュッセウスの語る漂流談
- 第十歌 風神アイオロス、ライストリュゴネス族及びキルケの物語
- 第十一歌 冥府行
- 第十二歌 セイレーンの誘惑。スキュレーとカリュブディス、陽の神の牛
- 第十三歌 オデュッセウス、パイエケース人の国を発ち、イタケに帰還
- 第十四歌 オデュッセウス、豚飼いのエウマイオスに会う
- 第十五歌 テーレマコウス、エウマイオスを訪ねる
- 第十六歌 テーレマコス、乞食(オデュッセウス)の正体を知る
- 第十七歌 テーレマコウスの帰館
- 第十八歌 オデュッセウス、イロスと格闘す
- 第十九歌 オデュッセウスとペーネロペイアーの出会い、足洗いの場
- 第二十歌 求婚者誅殺前夜のこと
- 第二十一歌 弓の引き競べ
- 第二十二歌 求婚者誅殺
- 第二十三歌 ペーネロペイアー、乞食(オデュッセウス)の正体を知る
- 第二十四歌 再び冥府の物語。和解
[編集] その他ノストイ(帰国物語)等
- 小アイアースの死
- アガメムノーンの死
- エーレクトラー
- オレステースとピュラデース
- 慈みの女神たち
- アンドロマケー
- テレゴニアー
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