トーラス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
数学、とくに幾何学において、トーラス(torus、複数形:tori)とは、種数(genus) が 1 の閉曲面のこと。輪環(面)、円環(面)などともいう。
- 円環という言葉はアニュラス(annulus、環帯)という別の図形に用いることもあり注意が必要である。
目次 |
[編集] 概要
トーラスとはドーナツのような形状をした図形のことである。トーラスの囲む中身が詰まったものを意味するときには、特にソリッド・トーラス、輪環体などのようにいう。
トーラスは、柔らかな素材でできた円柱の両側の底面を合わせ、貼り付けることで得られる。このとき、単純にドーナツ型に貼り付けなくても良い。たとえば、三葉結び目などの結び目の線を一様に太らせてやれば、それらは全てトーラスになる。
また、xy-平面上に両軸と平行な辺を持つ四辺形が与えられたとき、上下・左右の辺を軸に関して対称な位置にあるものを同一視することでもトーラスが得られる。家庭用ゲーム・ドラゴンクエストなどの、世界地図で北極にあたる辺のすぐ上に南極にあたる辺があるような世界は、球ではなくトーラスであるというのは時折話のネタにされることがある。また、同じように対称点を同一視するのであれば、最初に与えられる四辺形がゆがんでいても構わない。とくに、二重周期を持つ楕円関数は、二つの基本周期が描く平行四辺形から構成されるトーラスの上で、自然に定義される関数であると解釈される。
トーラスにハンドル体を加えてできる図形を、二つ穴トーラスと呼ぶことがある。さらにいくつもハンドル体を加えてできる図形も同様に呼ぶことがある。
[編集] トーラスの体積・表面積
トーラスは円x2 + (y − b)2 = a2をx軸の周りを回転することによって得られる。そのときの体積をV、表面積をSとすると。
- V = 2π2a2b
- S = 4π2ab
と表すことができる。
[編集] 性質
- トーラスの基本群は <x, y | xyx-1y-1> である。
[編集] n次元トーラス
円周あるいは単純閉曲線 S1 を 1 次元トーラスという。冒頭で述べた意味でのトーラスは S1 × S1 とあらわすことが出来る。一般に、n 次元トーラスあるいは簡単に n-トーラス Tn とは S1 の n 個の直積
のことである。この語法に従えば、冒頭で述べた意味でのトーラスは 2-トーラスということになる。
代数学においては、絶対値が 1 に等しい複素数が複素数平面上で描く軌跡はしばしば S1 = T1 とみなされる。また、T1 は線分 [0, 1] の両端を同一視したもの、あるいは同じことだが実数体 R を有理整数環 Z で割った剰余環 R / Z とも同一視される。このとき、1-トーラス T1 は積に関してコンパクトな位相群となる。
これをさらに一般化して、位相体のコンパクトな乗法群の直積に同型となるコンパクト群をトーラスと呼ぶことがある。たとえば、位相体上の n 次一般線型群 GLn に属する対角行列全体の作る群は n 次元トーラス(分裂トーラス)である。
フーリエ級数とは、コンパクト群としての 1-トーラス T1 上で定義される、ハール測度に関して自乗可積分な関数の、T1 の指標(1 次元表現)による展開であると解釈することができる。
[編集] 関連項目
- 調和解析
- フーリエ解析
- 表現論
[編集] 外部リンク
カテゴリ: 数学関連のスタブ項目 | 閉曲面 | 数学に関する記事