ナポリタン
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ナポリタン(Neapolitan)は日本で作られるトマトケチャップ味のスパゲッティ料理。英語でナポリ風の意味。
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[編集] 概要
スパゲティ麺にトマトケチャップをからめ炒めて作る。代表的な具材はタマネギ、ピーマン、ウインナーソーセージもしくはベーコン。タバスコと粉チーズが共に給仕される事が多く、好みによってこれをかける食べ方が定着している。
関西地方ではナポリタンをイタリアンと呼ぶこともあるが、具材を若干変えナポリタンとイタリアンの両方をメニューに載せている店もあり、何がナポリタンかの定義はレストランによりまちまちである。名古屋にはイタリアンスパゲティと呼ばれる派生料理がある。
イタリアにはナポリタン(イタリア語ではアッラ・ナポリターナとなる)と呼ばれるパスタは存在しない。トマトケチャップはアメリカの調味料でイタリアでは一般には料理で使用されない。またアメリカでもトマトケチャップを加熱調理する味付けはまれである。アメリカにはナポリタンの名が付いたソースがある(Neapolitan sauce)。これはトマト、玉ねぎ、にんにく、香辛料、パルメザンチーズなどから作られたソースで主にパスタに使用される。
- なお、イタリア料理でスパゲッティ・ナポリタンに比較的近い味のものに、スパゲッティ・アッラ・アマトリチャーナ(Spaghetti alla amatriciana)がある。パンチェッタ、タマネギのトマトソースにペコリーノ・ロマーノを好みでいれる、ラツィオ州(ナポリのあるカンパニア州ではなくローマ近郊)の料理となる。
- アメリカで一般的に食べ物でナポリタンというとアイスクリームの一種を指す(Neapolitan ice cream)。
[編集] 歴史
戦後、横浜山下町にあるホテルニューグランドの総料理長であった入江茂忠が最初にナポリタンを考え出した人物として記録が残っている[1]。同ホテルは戦後まもなく連合国軍総司令部に接収され、マッカーサーが滞在していた部屋が現在でも残っている。そのような背景から進駐軍の好みに合わせて、当時はまだ日本では一般的でなかったスパゲティとケチャップを使った料理が考え出された。進駐軍で食べていたスパゲティにトマトケチャップを和えた軍用食からヒントを得て、ケチャップだけでなくトマトピューレ、調味料や具材を加え本格的な料理に仕上げた「スパゲッティナポリタン」としてホテルのメニューに載せた。当時のレシピを見ると、この「スパゲッティナポリタン」はその後大衆化したナポリタンとは違い前述のナポリ風ソースに近い料理であったようだ。まだ当時の大衆には手に入り難かったトマトピューレはケチャップで代用され、まだ高価であった肉の代わりに余り肉を寄せ集め、皮を赤く着色したウインナーソーセージを入れ、ナポリタンは日本中の喫茶店や大衆食堂のメニューとして定着していった。
昭和期にはパスタの乾麺をアルデンテに茹でるという概念も一般的でなく、あらかじめ茹置きした麺をフライパンで味付けながら炒め直しする。調理感覚としてはソース焼きそばや焼うどんに近しい。ケチャップでの味付けが非常に簡便であることから、学校給食や家庭、喫茶店、軽食堂で供されることが多かった。
バブル景気の頃のイタリア料理ブームが起こる前、日本におけるスパゲティ料理と言えばミートソースとナポリタンが双璧をなしていた。お子様ランチや洋食の付け合わせにもケチャップ味のスパゲティは定番である。今でも根強い人気はあるが、様々な本格的パスタが食べられるようになった今日ではレストランでナポリタンを見かける機会は減ってきている。このため、ある種の郷愁と共に語られることも多い。
また、スパゲティをコッペパンなどのパンに挟んだ「スパゲティサンド」があるが、このベースとなるスパゲティはナポリタンであることが多い。
[編集] 関連文献
- 上野玲『ナポリタン! I'm crazy in Naporitan spaghetti!』扶桑社 2004年11月 ISBN 4594048323、文庫 小学館 ISBN 4094187022
[編集] 参考資料
[編集] 外部リンク
- クックパッドのレシピ集:ナポリタン