ネットワークインフラただ乗り論争
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ネットワークインフラただ乗り論争はSkype、GyaO、Googleビデオなどブロードバンドインターネット接続環境に適応したサービスを提供する業者に対して、そのインフラを提供している電気通信事業者が批判したことに対して起きた論争である。
目次 |
[編集] 概要
アメリカでは2005年ぐらいから言われ始めていたが、日本では2006年の初めにNTTコミュニケーションズの和才博美社長がGyaOを痛烈に批判、次いでNTTの和田紀夫社長がSkypeを批判したことにより、この論争に火がついた。
総務省のIP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する懇談会にてネットワークの中立性、料金体系、競争ルールの面からインフラただ乗り論についても討論されている。
[編集] 電気通信事業者の主張
- 自社のインフラを使って商売をするなら、そのサービス事業者はそれ相応のコストを支払うべきである。
- 通信業界では低価格競争が進んでおり、ユーザーにコストの負担をお願いできる状況ではない。
[編集] コンテンツ事業者の主張
- かかるコストは受益者負担が原則である。
- 通信インフラを高速道路に例えるなら、一定以上のスピードが出る車に対してメーカーに利用料を求めるようなもので受け入れがたい。
- 高速通信インフラ上で高速通信を利用するサービスを制限するなら、何をするための高速通信インフラなのか?
- FTTHを含むブロードバンドの普及を後押ししたのは我々やユーザーの提供するサービス・コンテンツであり、コンテンツただ乗りをしているのはむしろ通信事業者ではないのか。
[編集] 総務省の対応
総務省は2005年10月にIP化への動きが本格化していると想定される2010年代初頭を念頭に置いて、それに対応した競争ルールの在り方について基本的な考え方を整理するとともに、接続・料金政策に係る検討の方向性を明確化することを目的として”IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する懇談会”を開催、翌2006年9月までに10回の会合を開き、9月15日に最終報告書を提出した。
その報告書の中でこの問題について”リッチコンテンツの配信に係る追加的料金徴収の妥当性”(p.77)という項目で触れられている。抜粋すると
- リッチコンテンツの配信等を行うのは、コンテンツプロバイダ等に限定されない。ブロードバンド基盤の整備に伴い、動画を含む多様なリッチコンテンツを一般の利用者も容易にネット上に提供することが可能となってきている。この場合、コンテンツプロバイタ等の事業者のみに追加的な料金を課すことは妥当とはいえない。何故なら、当該追加料金の徴収はリッチコンテンツの配信に係る通信網増強のための費用として徴収するというのが議論の出発点であり、この点において一般利用者を事業者と区別する合理的な根拠は見出し難いからである。
とあり、コンテンツ事業者寄りの報告となっている。
一方で日本経済新聞などが”総務省が「インターネットただ乗り問題」などにメスを入れるべく、調査研究会を立ち上げる方針を明らかにした”と報じたことから、総務省内も一枚岩でないことがうかがえる。
[編集] 補足
- NTTコミュニケーションズはGyaOを批判したが、NTT東日本とNTT西日本はGyaO光 with フレッツでGyaOとは協力の関係にある。
- 今までユーザー対ユーザーだったものがユーザー対業者になり、通信業者の批難の矛先が明確化しただけのインターネット崩壊論と言えなくも無い。
- NTTグループによって批判されているサービス、プログラムの中で、Skypeについては通信帯域にかける負荷が比較的小さく高速通信ができる環境も必ずしも必要とはしていない。また、利用者数を勘案してなお、通信事業者に与える負荷は微々たるものである。にも関わらず、NTTグループが批判の矛先を向けているのは、帯域を使用してサービスを行っているということよりむしろ、このプログラムが同グループのNTTコミュニケーションズが収益源としている長距離通話事業をおびやかしていることが主因であり、「インフラただ乗り論争」において同列に語られてはいるが他のサービスへの批判とは批判の目的がやや異なっている。