フェライト磁石
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フェライト磁石は、強い磁性を持つ窯業製品であり、酸化物磁石の一種。酸化鉄を主原料にしてバリウムや、ストロンチウム、などを微量加えて焼き固めて作る化合物。焼き固めた後に1μmほどの粒子に粉砕したものを成型し焼結する。最後に電磁石によって着磁し、フェライト磁石が出来上がる。酸化鉄を主原料としているため安価であり、様々な用途に用いられている。
高い透磁率を持ち、セラミックスの磁石として知られる。残留磁束密度(Br)は0.4~0.45テスラ、保磁力(Hcj)は300~400kA/m(3700~5000エルステッド)。
柔軟性のあるゴム磁石はフェライト磁石の素材であるフェライトパウダーをゴムに混ぜて固めたものであり、ゴムが主成分なので容易に切断することが可能なのが特徴。コピー機(レーザープリンタ)にはゴム磁石でできたロールが使われている。また、電気抵抗が極めて高いことから、コイルや変圧器、電磁石などの電子部品にも用いられる。他にもフェライトを粉末にして帯にしたテープに吸着させ、磁気テープとして記憶媒体に使用される。スピーカーに使用される磁石は大部分がフェライト磁石である。
1930年代に日本の東京工業大学の加藤与五郎と武井武によってフェライトが発明されたことがきっかけで誕生し、1950年代にオランダのフィリップス社によって工業化された。
一時期フェライト磁石の磁気特性はピークに達したように思われていたが、1990年後半La-CoSr系M型フェライトの出現により、開発熱が再燃している。近年ではその磁気特性がBr=0.45~0.47テスラ、Hcj=300~450kA/mまで向上してきている。