プロコンスル
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プロコンスル(Proconsul)は、古代ローマにおける官職の一種である。前執政官、属州総督、執政官代行官、などとも訳される。同じ属州総督を担う官職にはプロプラエトル(前法務官)がある。
[編集] 古代ローマにおけるプロコンスル
共和政ローマにおいて、プロコンスルは官職の一種であり、コンスル(執政官)を務めた後の者が、その後1年ないし2,3年のうちにプロコンスルとしてローマの属州の総督となった。プロコンスルが統治する属州はいくつか決まっており、各年の執政官の任期を終えた2名は、元老院の任命する属州に派遣された。どの属州に派遣されるかは、無作為に選ばれる場合もあれば、プロコンスルの職務に預かる者同志で協議する場合もあった。 なお、プラエトル(法務官)も任期後は同様にプロプラエトル(前法務官)として属州総督となった。
ローマ帝国の時代になると、ローマ皇帝はプロコンスルとして大きな権限を持った。皇帝は特例的にかつ永続的にいわゆる皇帝属州と呼ばれる属州全てについてプロコンスル権限を持つことが、元老院の承認を得て合法的に認められていた。皇帝属州には一般的に一つか複数のローマ軍団が駐留しており、ローマ皇帝は自らの属州を統治するために、ローマ軍団長や総督を任命して派遣した。なお、ローマ皇帝はプロコンスルの権限の他、軍事的な支配権(インペリウム)・護民官・元老院の議長など様々な権限を併せ持った。
執政官を務めた者は法律上は依然として共和政の長官とはいえ現実の政治力を失ったが、それでも、プロコンスルとして元老院属州と呼ばれる属州の一つの総督になることができた。5世紀初頭の帝国の訴訟に関する文献 ”en:notitia dignitatum” にも、3人のプロコンスルについて記録があり、教区の司教(Vicars)よりも権限があるように記載されている。なお、プロプラエトルについては、記載が全くなくなっている。ディオクレティアヌス帝がテトラルキア(四分統治)を始めると、教区の司教は4つの統治区のプレフェクトゥス・プラエトリオ(「親衛隊長官」の意味−但しディオクレティアヌスの改革により大幅の権力が削除され、帝政ローマ初期とはほとんど別の職種となっている)の監督下に入った。
プロコンスルが総督となった属州を挙げる:
- アカエア:現在のギリシア、ペロポネソス半島区域。
- アフリカ:現在のアルジェリアおよびチュニジア北部(カルタゴ)。
- アシア:現在の小アジア、アナトリア半島。
- クレタ・キュレナイカ:クレタ島およびリビア北部
- ガリア・ナルボネンシス:現在の南フランスのラングドック、プロヴァンス区域。
- ヒスパニア・ビエティカ:現在のスペイン、アンダルシア州地方。
- マケドニア:北部ギリシア。マケドニア、テッサリア近郊。
- ポントゥスとビティニア:小アジアの黒海南岸区域
- シチリア:現在のシチリア島