ヘテロロボサ
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ヘテロロボサ(Heterolobosea)は無色の原生生物の一群であり、アメーバ、鞭毛虫、シストといった形態の間を変態できる生物が含まれる。ペルコロゾア(Percolozoa)とも。これらは総称的に、シゾピレヌス類、アメーバ鞭毛虫類、バールカンピア類などとも呼ばれている。ここには集合して胞子嚢を作る社会性アメーバのアクラシス類も含まれる。これら全体をヘテロロボサと呼ぶが、この名をアメーバ期を持つ生物群に限定して使うこともある。
ヘテロロボサ類は淡水環境、土壌、糞便中などの細菌捕食性生物として見付かるが、海水産のものも知られている。また人間に対してしばしば致死的な病原性を示すフォーラーネグレリア(Naegleria fowleri)のような寄生性の種もある。ユーグレノゾアと近縁であり、ミトコンドリアのクリステが団扇型をしているという珍しい特徴を共有している。鞭毛虫期において腹側に捕食のための溝が存在することなどからエクスカバータに含まれると考えられる。
アメーバ期はだいたい円柱形で、標準的には長さ20-40 μmくらいである。伝統的には葉状根足虫(典型的なアメーバ類)だと考えられてきたが、他の葉状根足虫との近縁性がない上に、本当の意味での葉状仮足を作ることもない。葉状仮足ではなくて、透明な細胞の前縁部から半球状の隆起が生じてうねることで前進する。鞭毛虫期はやや小さく、捕食のための溝の前部に2または4本の鞭毛がある。
餌が豊富にある時には通常はアメーバ形をとり、鞭毛虫形は高速移動をするためにある。しかしヘテロロボサ類の全ての生物が両方の形になることができるわけではない。Percolomonas、Lyromonas、Psalteriomonasは鞭毛虫としてのみ知られており、一方でVahlkampfia、Pseudovahlkampfiaやアクラシス類は鞭毛虫期を持たない。アクラシス類は不都合な条件下では集合して胞子嚢を形成する。この胞子嚢は外見は細胞性粘菌の胞子嚢に似ているが、アメーバは個々に集合しているだけで、死んで柄になるわけではない。
元々ヘテロロボサはPage and Blanton (1985) [1] によりアメーバの綱として定義されたため、アメーバ期を持つ生物だけが含められていた。Cavalier-Smithはこれを拡張して、奇妙な鞭毛虫Stephanopogonも含めたペルコロゾア門(phylum Percolozoa)を作った [2]。 彼はヘテロロボサを綱として含めたが、他のほとんどの人は鞭毛虫を含めた全体をヘテロロボサとしている。
[編集] 参考文献
- ^ Page, F.C., R.L. Blanton (1985). "The Heterolobosea (Sarcodina: Rhizopoda), a new class uniting the Schizopyrenida and Acrasidae (Acrasida)". Protistologica 21: 121-132.
- ^ Cavalier-Smith, T. (1991). “Cell diversification in heterotrophic flagellates”, D.J. Patterson & J. LarsenThe Biology of Free-living Heterotrophic Flagellates, pp. 113-131, Oxford University Press.