ボレイ級原子力潜水艦
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Project955 Borey | |
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経歴 | |
形式 | 原子力弾道ミサイル潜水艦 |
計画番号 | Project955 |
ロシア名 | Borey |
NATO名 | Borey |
米国名 | Borey |
諸元 | |
全長 | 170m (558ft) |
全幅 | 21m |
全高 | ? |
吃水 | 9.4m |
推進機関 | OK-650B加圧水型原子炉(PWR)200MW×2基 蒸気タービン×1基 ディーゼル発電機×2基(3,400hp(2.5MW)) モーター5,576hp(4.1MW) |
乗員 | 107-140 (うち士官55名) |
速力 | 水上:15kt(ノット) 水中:26-29kt(ノット) |
最大潜航深度 | 380-450m (1,250-1,475ft) |
作戦可能日数 | 100日 |
武装: | 3M14ブラヴァー(トーポリM改造型)SLBM発射筒×12基 SS-N-16 ヴォドパート対潜ミサイル 533mm魚雷発射管×6門 |
ボレイ級原子力潜水艦( - きゅうげんしりょくせんすいかん)はロシアの第955号計画(プロジェクト955)弾道ミサイル原子力潜水艦。「ボレイ(Borey)」は、この第955号計画に付けられたニックネームであるが、一般に西側でも本型を指す名称として用いられている。1番艦の名を採って「ユーリー・ドルゴルキィ級」と呼ばれるケースは極めて少ない。この辺は、同じ第4世代原潜である第885号「ヤーセン」計画艦・通称「セヴェロドヴィンスク級」とは逆のパターンとなっているので、注意を要する。
[編集] 概要
ボレイ級はロシアの第4世代の新型戦略原潜で、従来の戦略原潜の2~3倍の能力を持つと言われている。設計はタイフーン級ではなくデルタIV級のものを受け継いでいるが、搭載弾道ミサイルは、667BDRM(デルタIV)の16基から、12基に減少している。
当初はSS-N-20の後継の固体燃料ロケットエンジン使用のSS-NX-28 (ロシア名 RSM-52V/R-39M バルク(Bark)/グロム(Grom)潜水艦発射弾道ミサイルを搭載する予定だったが、そのバルクが3回連続で試射に失敗し開発が中止。急遽SS-27 トーポリMの艦載型3M14ブラヴァー(SS-NX-30)を開発して搭載する事となった。そのためバルクの搭載を前提に設計され、既に建造に着手されていたボレイ級は再設計する必要が生じ、このため、当初の艦形よりも、弾道ミサイル区画がせり上がり、これに伴い、セイルも形状変更された。
新たに搭載されるブラワは、941(タイフーン)型戦略原潜ドミトリー・ドンスコイを改造してテストが行われ、2005年9月末、ようやく発射実験に成功、バレンツ海から発射されたミサイルは、カムチャツカ半島沖に着弾した。これによって、ブラワの実用化にも目処が付き、本型の最大の懸案事項であった搭載ミサイルの実用化の問題は解決され、一時は西側観測筋から建造中止の可能性が囁かれていた本型の就役も現実味を帯びてきた(ただし、その後の2006年9月7日に行われた発射テストは失敗に終わっている)。
ボレイ級とセヴェロドヴィンスク級は部品を共有しているとの話もある。また静粛性を高めるため、シュラウドリング付きポンプジェット推進方式を採用している可能性がある。詳細は不完全だが、ロシア海軍は、2010~20年を通して最大12-16隻を調達する事を計画しているという。しかし、全体のプログラムの未来とその最終的な仕様は不確実なままである。
2005年7月末、ロシアのイワノフ国防相は、「ユーリイ・ドルゴルーキイを来年(つまり2006年)末に配備、アレクサンドル・ネフスキーは2年後(つまり2007年)から試験に入る」と語った。同国防相は、この時、両艦が太平洋艦隊に配備される、とも取れるような発言をしたとも伝えられるが(同氏は「"来年末"より、太平洋艦隊に"最新鋭の原潜2隻"を配備する」と発言した)、現実問題として、最新鋭の本型を太平洋艦隊に持ってくるのは、かなり無理が有るだろう(順当に考えれば、本型は、941(タイフーン)型戦略原潜の早期退役で空いてしまう事になる北方艦隊のザーパドナヤ・リッツァ基地ニェールピチャ埠頭に配備される事になろう)。
2007年3月18日、インタファクス通信は、本級を建造しているセヴマシュ(セヴェロドヴィンスク造船所)関係者の話として、1番艦ユーリイ・ドルゴルーキイが4月15日に進水する予定である、と報じた。同艦は、各種テストを行った後、2008年にロシア海軍に引き渡される予定である。
[編集] 同型艦
- 955型2隻(起工順)
艦番号 | 名称 | 造船所 | 起工年 | 進水年 | 就役年 |
- | ユーリイ・ドルゴルーキイ | 402 セヴマシ | 1996/10/25 | 2005(予定) | 2007(予定) |
- | アレクサンドル・ネフスキー | 402 セヴマシ | 2004/3/19 | - | - |
- | ウラジーミル・モノマーフ | 402 セヴマシ | 2006/3/19 | - | - |
- セヴマシ(ПО "Севмаш")
- セヴマシとはロシア連邦国営単一企業「製造会社セヴマシ」の事である。セヴェロドヴィンスク第402造船所ともいう。アルハンゲリスク北方に位置する。6万トン級の戦艦も建造できる大型ドックを有しており、1933年に操業開始した。1950年代中期以降は、もっぱら原子力潜水艦を専門に建造しており、タイフーン級を初めとするSSBN(弾道ミサイル搭載原子力潜水艦)やオスカーII級など多数の原子力潜水艦を建造した。近年では、インドに引き渡された空母ヴィクラマーディティヤ(改キエフ級アドミラル・ゴルシコフ)の改造工事も請け負っている。民間の船舶も多数建造し、油井やガス井探査用のプラットフォーム、大型汽船、商業用船舶、小型船、精糖設備、高級家具、純水装置なども製造している。
カテゴリ: ソ連・ロシアの潜水艦 | 原子力潜水艦