リア王
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『リア王』(リアおう、King Lear)は、シェイクスピア作の悲劇。5幕で、1604年から1606年頃の作。四大悲劇の一つ。
長女と次女に国を譲ったのち二人に追い出されたリア王が、末娘の力を借り二人と戦うも敗れる。王に従う道化に悲哀を背負わせ、四大悲劇中最も壮大な構成の作品となっている。
目次 |
[編集] あらすじ
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
ブリテンの王であるリアは、高齢のため退位するにあたり、国を3人の娘に分割し与えることにした。長女ゴネリルと次女リーガンは言葉巧みに父王を喜ばせるが、末娘コーディリアの率直な物言いに、激怒したリアはコーディリアを勘当し、コーディリアをかばったケント伯も追放される。コーディリアは勘当された身でフランス王妃となり、ケントは風貌を変えてリアに再び仕える。
リアは先の約束通り、二人の娘ゴネリルとリーガンを頼るが、裏切られ荒野をさまようことになってしまう。リアを助けるため、コーディリアはフランス軍とともにドーバーに上陸、老父と再会する。だがフランス軍は敗れ、コーディリアは捕らえられ殺される。リアはコーディリアの遺体を抱いたまま、絶叫し世を去る。
[編集] 登場人物
- リア王(King Lear)
- ブリテン王。娘ゴネリルとリーガンの腹の底を見抜けず、哀れな最期を遂げる。
- コーディリア(Cordelia)
- リアの娘。リアに勘当されるが、誠実なフランス王の妃となる。
- ゴネリル(Goneril)
- リアの長女。オールバニの妻。
- リーガン(Regan)
- リアの次女。コンウォールの妻。
- ケント伯(Earl og Kent)
- リアの忠臣。リアに諫言したために追放される。
- グロスター伯(Earl of Gloucester)
- エドガーとエドマンドの父。エドマンドの姦計によってエドガーを勘当してしまう。
- エドガー(Edgar)
- グロスター伯の嫡子。異母弟エドマンドの姦計によって父から勘当される。
- エドマンド(Edmund)
- グロスター伯の庶子。異母兄エドガーの追放に成功する。
- オールバニ公(Duke of Albany)
- ゴネリルの夫。
- コーンウォール公(Duke of Cornwall)
- リーガンの夫。
- フランス王(King of France)
- コーディリアの求婚者。勘当され持参金を持たないコーディリアを喜んで王妃とする。
[編集] 創作時期
出版登録がなされたのは1607年11月26日で、1606年12月26日に宮廷で上演されたと記されている。よって、1606年末以前に書かれたと考えられる。
『リア王』のもととなった『レア王』は、1590年代に上演されたが、出版組合に登録されたのは1605年5月8日であった。この話をもとにしたのであれば、1605年の下半期から1606年の間に執筆された、とする説もある。
[編集] 原典
『リア王』の話のもととして有力なのは、作者未詳の劇である『レア王』(『レア王とその3人娘、ゴネリル、レーガン、コーデラの実録年代記』)である。この話ではめでたく終わっているが、シェイクスピアはこれを改作し悲劇とした。一方で、『リア王』は『レア王』にはない、道化やグロスター伯らに関する話がある。『レア王』にはない道化は、シェイクスピアが自らの作によく登場する道化を集成させたものであり、グロスター伯らの話は、シドニーの『アーケーディア』によるものである。
[編集] 伝説
12世紀のジェフリー・オブ・マンモスの『ブリテン王列伝』に、ローマ以前のブリタニアの歴史として記述されているのが最初で、エドマンド・スペンサーの『妖精の女王』、ジョン・ヒキンズの『王侯の鑑(Mirror for Magistrates)』にも『リア王』の話があり、シェイクスピアの時代には既に有名な伝説となっていたと思われる。
いずれの話もコーディリアとリア王がフランス(ガリア)の支援を受け二人の姉(オルバニー公、コーンウォール公)を打ち破り、リア王の復位に成功している。しかし、『ブリテン王列伝』では、リア王の死後、コーディリアが女王になるが、姉の息子達に敗れて捕虜となった後、自殺しており、ブリタニアはオルバニー公とコーンウォール公の内戦に陥いることになるなど、悲劇的な要素を含んでいる。
[編集] 上演
初演はシェイクスピアの属するグローブ座であると考えられる。
だが、1681年ネーハム・テートによって改められた。テートは『リア王』を喜劇に仕立て上げ、話の筋を大幅に書き直した。例えば、リア王は最後に復位する、道化も下品という理由で登場しない。この改作は19世紀前半まで上演され、1838年にアクレディ主演・演出によるシェイクスピア原作の『リア王』が上演されるまで続いた。
[編集] 邦訳
- 坪内逍遥訳『リヤ王』
- 福田恆存訳『リア王』(新潮社『シェイクスピア全集』/新潮文庫)
- 木下順二訳「リア王」(講談社『シェイクスピア 7』収録)
- 斎藤勇訳『リア王』(開文社出版/岩波文庫)
- 松岡和子訳『リア王』(ちくま文庫「シェイクスピア全集 5」)
- 小田島雄志訳『リア王』(白水Uブックス「シェイクスピア全集 28」)
- 野島秀勝訳『リア王』(岩波文庫)
- 安西徹雄訳『リア王』(光文社古典新訳文庫)
- 文部省『小学国語読本』
[編集] 映像化
多くの映画バージョンがあるが、代表的なものを下記に記す。
- 1953年、オーソン・ウェルズ主演で映像化。
- 1971年、ピーター・ブルック監督、ポール・スコフィールド主演で映画化。
- 1975年と1982年にBBCがマイケル・ホーダーン主演で映像化。
- 1985年、黒澤明が「リア王」をベースに「乱 (映画)」を制作。
- 1987年、ジャン=リュック・ゴダールが自分流の解釈で映像化。題名は「ゴダールのリア王」。
- 1991年、ジェーン・スマイリーが「リア王」をモチーフにした作品「大農場」を発表、ピューリッツァー賞 フィクション部門を受賞。この小説は1997年にジョセリン・ムーアハウス監督で映画化された。邦題は「シークレット/嵐の夜に」。
- 1997年、イギリスのテレビでイアン・ホルム主演で映像化。
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