ルビ
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ルビ (英Ruby) とは、印刷物の文章内の文字に対しふりがな、説明、異なるよみかた、といった役割の文字をより小さな文字で、縦書きの際は文字の右側に、横書きの際は文字の上側に記されるものである。
明治時代からの日本の活版印刷用語であり、『ルビ活字』を使用し振り仮名(日本語の場合)やピン音(中国語の場合)などを表示したもの。日本で通常使用された5号活字にルビを振る際7号活字を用いたが、これはイギリスから輸入された5.5ポイント活字の呼び名がruby(ルビー)であったことからこの活字を『ルビ活字』とよび、それによってつけられた(振られた)文字を『ルビ』とよぶようになった。明治期つまり19世紀後半のイギリスでは活字の大きさを宝石の名前をつけてよんでいた。
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[編集] 効用
輸入された用語に対して日本語表記に対しルビで外来語をそのまま振るものは大正時代の自動車運転法でも内燃機関という文字に対し、「インターナル・コンバスチヨン・エンヂン」といったルビが振られており、一般的に用いられていた。漢字の読みの教育だけでなく、外来語の日本語表記だけでなく、原本の外来語も同時に教育できるところにその強みがあり、たとえば、近年、インフォームド・コンセントを「説明と同意」としようという案があるが、片方だけでは帯に短したすきに長しであるが、これをルビで振ることによるメリットは大きく、このことを当時の人は理解していたのである。これは漢語を日本語読みするレ点の文化に源流をもつ翻訳文化の流れに属するものである。
[編集] ルビの振り方
ルビをつけることを一般的に『ルビを振る』と表現する。より専門的な用語として組版業界用語では『ルビを組む』と表現する。
[編集] ルビが必要となる場合
- 漢字に読みをつける際に用いる。通常、ひらがなが用いられる。
- 人名や地名など、一般的でない読み方をする場合に、読み方をガイドする。
- 漢字に限らずその文字の別の読み方を指定したい場合に使用する。
- 外来語を翻訳した用語の場合に、その用語自体の読み方は一般的に自明だが、元の外来語の発音を提示したい場合に用いる。通常、カタカナが用いられる。
[編集] ルビの実現方法
[編集] 組版規則におけるルビ
組版についての詳細は組版を参照。
[編集] ルビの組み方
一般的な組版規則において、ルビの組み方は以下に挙げるような基本的なルールがある。
[編集] 親文字との位置
親文字とは、ルビを振る対象となる元の文字(文字群)のこと。
- 縦組みならば親文字の右、横組みならば上に付けるのが基本である。
- ただし人物名に生没年をつけたり、漢文の書き下し分の組版をする場合には左右ないし上下の両方に付く。
- 親文字に対する位置は、肩付き、センタリング、ジャスティファイなどのルールがある。
- 親文字の前後の文字が仮名もしくは空白の場合、半角分まで食い込みが可能。
- 前後に食い込み可能な領域がある場合、後ろにはみ出すことが優先される。
- 下記のことから、半角分とはつまりルビ1字に相当する。
- 食い込み可能な領域がない、もしくは不足する場合、前後の文字との字間を空ける。
- このときも後ろを空けるのが優先される。
[編集] ルビ文字のサイズ
組版において、ルビは基本的に、親文字の半分のサイズの文字を用いる。冒頭にあるように基本の本文サイズが10.5ポントならば5.25ポイントであるし、本文が14級なら7級とするのがベーシックな組み方である。これには、振り仮名としては親文字となる漢字1字に対して、2-3文字の仮名が振れれば多くの場合は充分、ということもある。
そのため漢字2字に対してはルビ4文字が基本であり、それを越える場合には親文字(単語)の字間を少しずつ空けるか、写植以降ではルビ文字を変形加工(平体/長体という)するか、「3字ルビ」といった特殊ルビ文字を使用するなどの処理が行われる。
[編集] グループルビとモノルビ
単語単位でつけるルビをグループルビ、漢字単位でのルビをモノルビという。文字と読みの関係を学ぶため、教科書や教材(特に低年齢用)ではモノルビが使用される。熟字訓や当て字についてはグループルビが使用される。
[編集] 捨て仮名
捨て仮名とは、「あ」に対する「ぁ」のように小字で表される仮名を指す印刷用語。
和文組版において、一般的に「基本」とされる組み方では、捨て仮名は使わない。そのため、仮に「自由百科事典」に「ウィキペディア」とルビを付けるとしたら、「ウイキペデイア」となる。これには小さすぎるポイント・号数の活字では却って読みづらいという問題もあり、読みを助ける意味ではこれで充分であった。
ところが、既に日本語にある単語の振り仮名であるなら一般原則がわかっている読者であるためそれほど問題とはならないのであるが、外来語に関してはそれが一般的でないためにウィキペディアなのか、ウイキペデイア(という“ギリシャ語っぽい”単語)なのか分からなくなる。いいかえれば、そこに教育的啓蒙的な配慮が必要かどうかという問題が生じる。
上述したような教科書などの出版物では、日本語の読みも含めて捨て仮名が使用されるし、近年はその他の出版物でも捨て仮名を使ったルビ組みも増加傾向にある模様である。これには組版技術の変遷がその理由の一つとして挙げられようし、そういった組版規則に非対応のワードプロセッサの普及も若干なりとも関係しているかもしれない。
[編集] ルビ字形
ワープロソフトなどでは(一般的なデジタルフォント製品自体が対応していないので当然なのだが)ルビには通常の文字が使用される。ただし活字時代も含め、専用の組版機(写植、電算写植など)ではルビ専用の仮名文字があることは当たり前だった。OpenTypeフォント製品にはこれを装備しているものがある。
[編集] HTML上のルビ
XHTML1.1でルビモジュールが導入され、ルビを記述できるようになった。それ以前からInternet Explorerが規格提唱とともに先行実装しており、レンダリングが可能である。Mozilla財団が開発しているブラウザ Mozilla Firefoxでは拡張機能によって対応されている。 なお、ウィキペディアをはじめとしたXHTML1.0文章、HTML文章でのルビの使用は文法違反である。
- 記述
- <ruby><rb>漢字</rb><rp>(</rp><rt>かんじ</rt><rp>)</rp></ruby>
- 現在使用しているブラウザで表示した結果
漢字 - ルビに対応していないブラウザでの表示結果(例)
- 漢字(かんじ)
- ルビに対応しているブラウザでの表示結果(例)
-
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