ロケット弾
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ロケット弾(ろけっとだん)とは、推進剤である火薬の燃焼や圧縮ガスの噴出によって推力を得、自力で飛行する能力のある爆弾、または砲弾である。日本では一般に何らかの誘導装置を持つものを(ジェット推進のものも含めて)ミサイル(誘導式噴進弾)と称し、誘導装置を持たないものをロケット(無誘導式噴進弾)と呼び区別しているが、他の国においてはその限りではない。
収納ケースから直接単体で発射できる物もあるが、専用の発射装置によって射出されるものもあり、それらロケット弾専用の発射器はロケットランチャー、大砲型のものはロケット砲と呼ばれる。ロケットランチャーには筒型・箱型・レール型など様々な形があり、小型で兵士が個人で携帯して発射できるものもある。また大砲型の長射程で大きく重いロケット砲は反動があるため、重車輌に搭載される。なお、軍事に詳しくない一般の日本人は発射器(ランチャー)と砲(ガン)を区別せずにまとめて「ロケット砲」「バズーカ砲」などと呼ぶことが多いが、構造的に大きく異なるため厳密には正しい呼称であるとは言えない。
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[編集] 用途
今日では戦闘機や攻撃ヘリコプター等の空中兵器プラットフォームや地上のロケットランチャーから、主に地上の建造物や施設、車輌、歩兵といった、装甲を持たない対象を砲撃・破壊するために用いられる。
この他、発射ガスを後方に逃し発射器や射手に負担をかけず、個人に強力な破壊力を持たせる事が可能であるため、第二次大戦以降の歩兵装備として様々な携帯式ロケット発射器が開発されている。これらは戦車や車両・ヘリコプター等の低空で飛ぶ航空機といった装甲を持つ兵器を歩兵の携帯兵器で攻撃・破壊するために用いられる。またこれらの歩兵用ロケット弾は破壊力が大きく軽いため、装甲兵員輸送車などの軽装甲戦闘車両に搭載され、重装甲の戦車等を攻撃・破壊するためにも用いられる。
一気に強い圧力で弾を発射する大砲と異なり、ロケット発射装置やロケット弾の弾殻はそれほど強度をもたせる必要が無く、軽く薄く作ることができる。このため大量の炸薬を・複数の発射器から・一斉に発射する事が可能であるため、より広範囲を効率よく制圧斜撃することができる。これは、無誘導ロケット弾の精度の低さを補う使い方でもある(後述)。炸薬入りのロケット弾の代わりに地雷を搭載したキャニスターを発射し、空中散布に使用される事もある。
時限信管を使用して空中で非接触爆発を起こす事も可能であるため、対空砲弾代わりとして用いられたこともある。
戦闘爆撃機へのロケット弾搭載は第二次大戦後半以降、アメリカ軍とイギリス軍、ソ連軍が多用してきたが、近年のミサイルや誘導爆弾の発達と共に次第に用いられなくなってきている。
[編集] 問題点
これらの兵器は、実は「まっすぐ飛ばす」事が非常に難しい。推進力はあるが、飛行制御を行う機能がなく、先頭に重い爆薬や信管を持つ分、発射角度や重心と推力の関係で、風の影響などで簡単に向きが変わってしまう。これには涙ぐましい技術的な改良の歴史がある訳だが、今日のロケット弾兵器は、それらの上に成り立っている。姿勢を安定させるため、初期のロケット弾は長い棒をつけており、これは大昔に中国で発明されてから20世紀初頭まで長きに渡り用いられていた。この後、安定翼式とスピン安定式の二つの方法が登場した。安定翼式は作りが比較的簡単であるが横風の影響を受けやすい。スピン安定式はロケットの噴出口を円状に複数設け、一定の角度を付け弾体を回転させる方式で、第二次大戦でドイツ軍が多用した。この方式は回転による遠心力でHEAT弾頭のモンロー/ノイマン効果によるメタルジェットが集束し辛くなり貫徹力が減少するため、普通対戦車ロケット弾には使用されない。(もっとも、高初速のライフル砲ほどの高速回転ではない。)
地対地攻撃用のロケット弾では、発射された弾体は一定距離をロケット噴射で緩い放物線を描いて飛行し、推進剤が切れた辺りで空気抵抗により、減速・落下する。そのため近距離では概ねの飛行コースを予想できるが、推進剤の切れたロケット弾は「何処に落ちるか」が予想しにくくなる。
遠距離砲撃用の地対地ロケット弾では、大量に発射し、大量に推進剤切れのロケット弾を、おおよその攻撃範囲内に降らせるため、広範囲の攻撃には向くものの、逆に通常の榴弾砲を用いた砲撃のような精密攻撃には不向きである。そのため、観測手を置いての試射と誤差修正が出来ず、敵陣地の位置の特定が大まかにしか出来ない対砲兵射撃に向いている。
[編集] 歴史
(ロケットをあわせて参照のこと)
兵器としてのロケットは、11世紀ごろに中国ですでに作られており、これは実際のところ馬を驚かせるための、今で言うロケット花火と同程度の代物であった。14世紀の明の時代に、火龍出水(カリュウシュッスイ)という、世界初の多段式ロケットが開発される。なお、火砲の実用化は14世紀半ばごろで(震天雷という火砲まがいのものは、12世紀ごろ中国北部を支配した金国で12世紀末ごろに開発、実用化されているが、所詮は発射音と炸裂音で馬を驚かすためのもので、ロケットと大差はない)
この当時のロケットは射程などの面で、火砲と拮抗しているという状態であったが、15世紀にはいると鋳造技術が進歩して、ブロンズ製の鋳造砲身と、鋳造された鉄製砲弾の登場で、火砲の命中精度、射程が増加したため、ロケットは近代に至るまで戦争の表舞台にたつことはなくなる。19世紀には、ライフルの登場、鋼鉄製砲身の登場などで、完全に表舞台から姿を消すことになった。原因は、ロケットの命中精度の低さによるところが大きい。
第一次世界大戦が始まると、発光信号など、非破壊任務にロケットが使用されるようになるが、飛行機が飛行船に攻撃を与えるために(信憑性の低く、精度も低い)ロケットを搭載して攻撃をしたという例外を除けば、ほとんど破壊任務には使われなかった。
大戦終結後、敗戦国となったドイツは、ヴェルサイユ条約を締結し、多くの兵器の開発を制限されることになる。この制限は艦船、航空機、もちろん火砲にも及んだが、この条項にはロケット開発の制限がなかった。これは、第一次大戦におけるロケットの戦果を考えれば特に落ち度というものではなかった。しかし、このことが、新たな兵器として、ロケットの出現を促したのは間違いない。なお、ロケット燃料には固体式と液体式があり、それぞれに一長一短がある。ロケット弾のものは主に固体式の場合がほとんどである。
第二次世界大戦になると、多種多様なロケット弾(ロケット砲)が開発され、現在の形に近い使われ方がされてくる。
- 車両搭載型
- カチューシャ砲、「シュトルムティーガー」等
- 歩兵携帯型(主に対戦車用)
- 艦艇搭載型
- LSMR
- 航空機搭載型(主に車両などの地上目標攻撃用)
- 米軍 5inロケット弾(P-38 P-47 P-51等多数に搭載)
- 米軍 ハイドラ70ロケット弾(70㎜すなわち2.75inの直径のロケット弾。専用の7連発もしくは19連発のポッドに装填する。)
- 米軍 5inズーニー・ロケット弾
しかしながら、ロケット弾はその特性上、間接射撃をする場合は一度に大量に発射しないと効果が見込めない、という欠点があり、費用対効果の面から戦後、車両搭載型と艦艇搭載型のロケット弾(ロケット砲)はほとんど開発されなくなった。
[編集] テロリストとロケット弾
比較的、治安が良くて武器の入手が困難な日本では、これらロケット弾が、比較的製造・設置しやすいと云う理由から、手製爆弾と並んで広くテロリストによって使用された。これらの場合、遠距離から金属弾(いわゆる過激派は信管の調達が出来なかったため、炸薬の入った榴弾を用いたことは無かった。ただし、弾頭がぶつかるとマッチを着火する要領で物理的に信管を再現した物が有るが、こちらは発射台として使われている。)を対象施設に撃ち込む事が可能であるため、警備の範囲外から主要施設を狙うのに適していると考えたためだろう。
一方、武器弾薬が入手しやすい国のテロリストにとって、ロケット弾は携帯に便利で破壊力の大きい武器であり、個人テロリストが軍隊を相手に、装甲車やヘリコプター等を破壊するのに用いられる。これら携帯ロケット弾は、内戦時等に出回った余剰兵器であることが多い。中でも代表的なロケット弾発射器が、旧共産圏を始めとして安価で大量に流通していた対戦車ロケット砲RPG-7である。扱いが簡便で習熟を必要とせず、非常に安価に莫大な損害を与えられると云う点で、テロリストにとっては非常に便利な、攻撃を受ける側にとっては大変頭の痛い兵器である。
[編集] 過去の事件
- 東京都内・手製ロケット弾発射事件
- 1984年に中核派がイスラエル大使館・皇居・迎賓館等へ手製ロケット弾(手製迫撃砲だとする話もある)を発射、東京サミットを妨害する意図だった。同様に成田抗争や羽田抗争でも、爆弾テロと並んで、これら手製ロケット弾が度々使用されている。
[編集] 関連項目
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