五島勉
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五島 勉(ごとう べん、1929年11月17日 - )は、作家・ルポライター。「サソリのベン」とも呼ばれていた。また、倉田 英乃介(くらた ひでのすけ)の別筆名による『コイン利殖入門』(青春出版社、1973年)という著書もある。
北海道函館市出身。ロシア正教徒の家庭に生まれる。本名は後藤 力(ごとう つとむ)。旧制函館中学校(現北海道函館中部高等学校)から第二高等学校へ進み、遠藤誠と知り合う。東北大学法学部卒業。大学在学中、小遣い稼ぎにポルノ小説を書いて雑誌に投稿し、文筆家の道に入る。大学卒業後は『微笑』『女性自身』など女性週刊誌でフリーライターとして活躍。1972年には海潮社より『近親相愛』を発表する。
1973年に『ノストラダムスの大予言』(祥伝社)を執筆。この本は、オイルショックや公害問題の顕在化による社会不安を背景に大ベストセラーとなり、映画化もされた。「1999年人類滅亡」を喧伝したこの本は、当時の青少年を中心とする人々に漠然とした将来への不安やトラウマを植え付けた。(たとえば、地下鉄サリン事件など一連のテロ事件を起こしたオウム真理教は五島が紹介した形でノストラダムスの大予言を信じ込んでいて、それが彼らの終末観を促進したという見方もある。[1])後年同書にはフィクションも多数挿入されている事が判明して批判を受けることとなる。ちなみに日本で「百詩篇」の誤訳『諸世紀』が広まってしまったのも、五島勉に負うところが大きい。
『ノストラダムスの大予言』を境に、五島は予言やオカルトに関する著書を量産するようになる。祥伝社からは四半世紀にわたって書き継がれた『大予言』シリーズのほか、ツングースカ大爆発、古代宇宙飛行士説、輪廻転生などに関する著書を刊行し、これらはまとめて「五島勉の『文明批評』シリーズ」と名付けられていた。
彼は祥伝社のほか、青春出版社や光文社などからも予言関連書を刊行したが、それらにおいて予言者とされた人物は、エドガー・ケイシー、アドルフ・ヒトラー、聖徳太子、イソップ、アルバート・アインシュタイン、H.G.ウェルズなど多岐に渡る。とくに、『1999年以後―ヒトラーだけに見えた恐怖の未来図』(祥伝社、1988年)では、ラウシュニングの原典にはない、ほとんど五島の想像によって書かれた文章が、ヒトラー本人の予言として紹介されている。
また、ファティマの聖母やヨハネの黙示録などのように、予言として知名度の高いものも扱っているが、前者には従来の「3つの秘密」を超える「第4の予言」があったと言い、後者には「ハルマゲドン」を超える「ドラマゲドン」が隠されていると主張するなど、良かれ悪しかれ読者の想像を超えるアクロバット的な紹介となっている。
このほか、ノストラダムスとは関係のない小説を何作も書いているが、と学会がトンデモ小説として光を当てるまでは、取り立てて話題にはならなかった。
予言ものを多く書いた五島だが、確定的な滅亡論を印象付けた初期の関連書とは異なり、1980年代後半以降には、滅亡を回避できる可能性や、予言がもつ警告としての意義を強調するようになった。2004年頃に『封印作品の謎』の著者である安藤健二の取材を受けた際にも、この線に沿ったコメントを寄せている。 その一方で、五島は自著に滅亡説を煽るような虚構を織りまぜていたことに批判が出ている点などに対しては、一度として真摯に向き合ったことがない。そうしたこともあって、彼の釈明は額面通りには受け止められていない。
1999年、と学会より日本トンデモ本大賞特別功労賞を授与された。と学会メンバー以外にも、酒見賢一のように、五島の著書をエンターテインメントとして評価する声もある。
かつてほどのペースではないものの、1999年以降も著作活動は続けている。2006年現在での最近作は『やはり世界は予言で動いている・予言体系I[釈迦と日蓮]』(青萠堂、2004年)である。
[編集] 参考文献
- 高木彬光 『ノストラダムス大予言の秘密―1999年7月はたして人類は滅亡するか!』 ぶんか社、1974。ISBN 4041338123 (角川文庫)
- 志水一夫 『大予言の嘘―占いからノストラダムスまで その手口と内幕』 ISBN 4887181124 ISBN 4887184670 (改訂版)
- 山本弘 『トンデモ ノストラダムス本の世界』 ISBN 4896913264 ISBN 4796615253
- 志水一夫 『トンデモ・ノストラダムス解剖学―本当のことを、みんな知らない』 ISBN 488718493X
- 山本弘 『トンデモ大予言の後始末』 ISBN 4896914694
- 許光俊「五島勉、『ノストラダムスの大予言』への道」(『99年の滅亡を夢見て』ISBN 4787271105)
[編集] 関連事項
[編集] 外部リンク
- 私設五島勉観察会(五島の著書の総目録などがある)
- 五島勉 復刊リクエスト特集ページ