内政不干渉の原則
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
内政不干渉の原則(ないせいふかんしょうのげんそく)とは、国家は国際法に反しない限り、一定の事項について自由に処理することができる権利をもち、逆に他国はその事項に関して干渉してはならない義務があるという、国家主権から導出される原則をさす。そしてこういった、国家が自由に処理できる事項のことを国内管轄事項または国内問題という。
目次 |
[編集] 解釈
[編集] 国内管轄事項とは
かつては「国内管轄事項とは、国家の政治制度や自国民の取り扱いなど国家の存立に欠かせない重要な事項である」と実体的に考えられていたが、現在は「国際法による規律が及んでいないがために国家が自由に処理ができる事項である」と理解されている。(チュニス・モロッコ国籍法事件に関するICJの勧告意見)つまり国内問題の領域は相対的なもので、国際法の規律がどこまで及ぶかによって変化する。国際法の内容が充実すればするほど国内問題の領域は狭くなるのである。
[編集] 干渉とは
干渉とは、他国の国内管轄事項に関して武力又はその他の強制的手段を使って命令的介入を行うことである。(もっとも武力行使については国連憲章2条4で原則的に禁止されているので国内管轄事項の不干渉の問題として扱う必要はない。)干渉にあたる行為としては、他国の領海内における掃海活動(コルフ海峡事件判決)や他国政府打倒の目的をもつ武装集団に対する支援・援助(ニカラグア事件判決)があげられる。また、他国の主権的権能の行使を従属させる目的で経済援助の停止などの政治的・経済的圧力の行使を行うことも干渉にあたるとされている。(友好関係宣言)なお、他国が国内統治に関して批判あるいは抗議をしたとしても、それは強制的要素を含まないので国際法上は違法な干渉にはあたらない。
[編集] 主要な争点
[編集] 内戦への干渉について
かつては、他国が反政府軍に対して軍事的・経済的援助をすることは違法な干渉にあたるが、逆に合法政府の要請に応じて他国が政府を支援することは干渉ではなく、協力であって違法な干渉にはあたらないとされていた。しかし、内戦は通常、国を代表する資格が争われているものだから、既存の政府から要請があったからといって、そのことをもって他国による内戦介入の合法性の根拠とすることには「自決権の尊重」という観点上問題がある。そこで今日では内戦に対する他国の不干渉義務が確立したと考えられる。友好関係原則宣言では、他国の内戦不干渉義務が明記されている。ただ、植民地独立のための内戦に関しては不干渉の原則が適用されないのではないかという問題提起がなされている。つまり、自決権の尊重という観点から、植民地本国に対する支援を慎み、従属下に置かれている人民の独立闘争を支援するべきであるといった見解がある。前者、つまり他国による植民地本国への支援の禁止については国際法上確立したと考えられるが(国連総会決議1514)、後者、つまり自決のために武力闘争を行う集団に対して支援することが認められるかには争いがある。1974年の国連総会決議3314では、植民地支配に対して抗争を行う集団には他国に対して支援を要請し、その支援を受ける権利があることが確認されたが、その支援の内容が明記されていなかった。そのため、援助の内容が精神的援助なのかそれとも精神的援助に加えて物質的援助も含むものなのかで争いが残っている。
[編集] 人道的干渉について
人道的干渉も内政不干渉の原則に反する。しかし、国際社会において人道的干渉は内政干渉にあたるとは考えられていない。しかし、それを理由にその国の制度・法律・政府などを変更しようとした場合は完全に内政干渉である。
[編集] 国際機構の干渉について
国際機構の内政干渉はよくあることだが、厳密に言えば内政不干渉の原則には反している。しかしながら、このようなことが表面化した問題になることはあまりない。
カテゴリ: 政治関連のスタブ項目 | 国際法