写真に関する日本語の主要文献
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写真に関する日本語の主要文献(しゃしんにかんするにほんごのしゅようぶんけん)
写真に限らず視覚芸術に関しては、実作品に触れることが重要である。しかし、日本においては、例え、東京や大阪といった大都市であっても、大量かつ網羅的に、歴史的な名作に触れることは難しい。したがって、実作品の代わりとして、印刷物を頼らざるを得ないのが現状である。
(また、写真という媒体を考えるとき、そもそも「実作品」とは何を指すのか慎重に考えることも必要だろう。つまり、写真は複製可能な媒体として発明以後様々な媒体に応用されてきたという社会的歴史的一面を無視して写真を語ることは難しい。また、「実作品」という概念そのものが近代美術史の中で頻繁に利用される歴史的産物であることも念頭に置きながら写真作品、写真史、あるいは写真作家を考察することも必要だ)
ただ、印刷技術の向上や、そもそも印刷物による複製を前提とした写真作品(報道写真など)もあることから、印刷物による写真作品は、印刷物による絵画作品に比べて、はるかに鑑賞に適している。 ここでは、無数にある写真家個人の個別の作品集(写真集)は避け、網羅的に写真作品を掲載している文献(主として全集もの)のみを取り上げた。
○日本写真全集(全12巻)/小学館(1986年~1988年)
編集委員:小沢健志・桑原甲子雄・重森弘淹・田中雅夫・中井幸一
日本の写真について網羅的に紹介した文献。時期的な区分およびジャンル別による構成になっており、およそ、あらゆる時期・ジャンルの日本の写真を見ることができる。このような文献は、他に存在せず、大変貴重である。惜しむらくは、発刊の時期から考えて、1980年代後半以降の研究成果が取り入れられていないことである。続篇の刊行または補巻の追加が待たれる。
○世界写真全集(全12巻)/集英社(1982年~1984年;新装版1988年~1989年)
編集主任: ブライアン・ホーム (Brian Holme)
上記文献に対して、海外の写真を中心に、網羅的に紹介した文献(一部に日本の写真家の作品もあり)。海外との共同出版である。主として、写真のジャンルごとの構成となっており、1つの巻で、あるジャンルの草創期から近年までを、主要な作品群により概観することができる。解説等が少ない嫌いがあるが、その分、作品図版は多く、見ごたえがある。
○日本の写真家(全40巻+別巻1)/岩波書店(1997年~1999年)
1980年代後半から1990年代にかけての研究成果を取り入れた、新しい文献。上記二文献とは異なり、原則写真家1人につき1冊という構成になっており、1冊ごとに独立して見れば、個人の写真集ともいえる。版型もコンパクトで、手軽に手にできるが、一方で、ヴォリュームに欠ける(図版が小さい・少ない、情報量が足りない)という点も指摘できる。ただ、同種の網羅的な全集はないため、海外の作品についても、同様の構成の全集出版が望まれる。
以上の文献は、多くの公立図書館で所蔵されており、容易に参照できるであろう。