囲碁のルール
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囲碁のルール(いごのルール)について、以下に記す。
基本的な考え方は、千年を超える囲碁の歴史の中で変わらないが、より楽しめるように、よりトラブルが少なくなるように細かい部分を改良するように発展してきている。基本的な部分がほとんど手付かずなことは、囲碁が超一流のゲームであることの一つのゆえんであろう。現在では、大きくは二つのルールの系統として、中国ルールと日本ルールがあるが、どちらを用いても、ほとんど勝敗も戦略も変わらない。
以下では、日本囲碁規約に基づき、日本ルールを構造的に説明する。日本囲碁規約自体も、上記のとおり、何度か改定されていることに注意されたい。個々の概念の詳細は、外部リンクを参照されたい。
まず、個々のルールを説明する前に、囲碁においては、信義則が重要となる。日本囲碁規約にも、「この規約は対局者の良識と相互信頼の精神に基づいて運用されなければならない。」とある。とりわけ終局処理に両者の合意が数多く必要とされる囲碁においては、ネット碁で対局者がお互い匿名である場合も多い今日、信義則が明示的により重要となっている。
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[編集] 対局者(プレーヤー)
黒と白と呼ばれる2人のプレイヤーがそれぞれ、黒、白の石の碁笥を持つ。
[編集] 盤上の石の状態
以下の条件で盤上の交点上に石が存在し続ける。
[編集] 石の連続
複数個の一つの色の石が縦横の碁盤の線に沿ってつながっているものを石の一団とよぼう。 縦横の方向だけが重要で、斜めは関係ない。「つながっている」「囲まれる」などの言葉は、縦横に限った話であることに注意。
[編集] 取り
石の一団は、その周囲の交点全てに相手の石を置かれると取られる。
石の一団は隣接点で呼吸をしている。隣接点が空点(石が存在しない交点、呼吸点)であれば、呼吸ができる。隣接点に相手の石があれば呼吸を邪魔される。上下左右四方向とも相手の石にふさがれると窒息してしまい取られてしまう。もし、隣接点に味方の石がある場合は、味方の石を通じて呼吸ができ、石の一団で一つでも呼吸のできる石があれば、その石の一団全体が呼吸できる。全ての石の縦横が塞がれ、呼吸のできる石が一つも無くなった場合は、その石の一団全体が窒息し取られてしまう。取った石はハマとよばれる。
[編集] 石の存在
取られない石は、着手されてから終局まで盤上に存在し続ける。
[編集] 着手
黒と白が、交互に一つずつ石を置いていく(打つ、着手する)。黒が先手で、白が後手となる。
以下に述べる着手禁止点を除く、盤上のすべての空いている交点に着手して良い。パスも可能。
[編集] 呼吸点
盤上の交点に石を置いたとき上下左右に隣接した4つの交点が存在する。石はこの点を使って呼吸をしていると考えることができ、この点を呼吸点と呼ぶ。 呼吸点をすべて相手の石で囲まれると石は死にハマとなる。
[編集] 自殺の禁止
自分の石を置くとその石が取られる状態になる点は着手禁止点となる。つまり自殺は禁止。ただし、自殺手によって、相手の石が取れる場合は、自殺手は許され、打ち込んだその石自体も取られない。
[編集] 同型反復禁止(コウ)
対局者の一方が一つの石(以後一子と称す)を取った後、即座にもう一方の対局者が一子を取れる状態になる場合。この状態をコウと呼ぶ。一子の取り合いを続けていると永久に対局が終わらないことになるため、コウには特別ルールを設けている。一方の対局者がコウの一子を取った後、もう一方の対局者は別の場所に1手打たない限りはコウの一子を取り返すことが出来ないものとする。なお、この別の場所に打たれる一手のことを、コウ材またはコウダテと呼ぶ。
[編集] 終局
[編集] 投了
まず、片方のプレーヤーが投了を告げると終局し、もう片方のプレーヤーが勝ちになる。
[編集] 連続パス(対局の停止)
また、二人のプレーヤーが連続でパスをすると終局処理に入る。ネット碁でない通常の対局では、パスの代わりに、両対局者の合意によって終局状態に移行する。言葉で終局を確認したり、頷きあったりして確認することが多い。逆に、「両対局者の合意」などの終局状態への移行手続きを形式化した表現が連続パスであると考えて良い。
[編集] 死活判定
盤上にある石は活き、死にの二つの状態のどちらかになる。
- 死に: 仮に終局せずに、自分がプレーを続ければ、相手がどのようにプレーしようと、相手の石の一団を取ることができる場合、その石の一団の状態
- 活き: 死にでない場合
- セキ: 一方のみの活き石で囲んだ空点を目(め:地を数える単位も同じ漢字だが、読み方はもく)といい、目以外の空点を駄目(ダメ)という。駄目を有する活き石をセキ石という。
- セキ以外
死活判定は必ずしも簡単ではない。日本囲碁規約逐条解説では、死活例が多数示されているが、あくまでも基本パターンを示したに過ぎず、ここでも対局者両者の合意が前提となる。
[編集] 地
セキ石以外の活き石の目を地という。死石を除去すると、盤上には活きた白石と黒石のみが存在する。自分の石と碁盤の端で囲んだ領域を、自分の地と定義する。
[編集] 死石の処理
相手の死んだ石は、盤上から取り除き、自分のハマに加える。ハマをもって相手方の地を埋める。
[編集] 勝敗判定
地の一点を「一目」という。地の面積は、交点の数で数え、単位は目(もく)である。双方の地の目数を比較して、その多い方を勝ちとする。同数の場合は引き分けとし、これを持碁という。中国ルールにおいては、地の目数と盤面で生きている石の数の合計の大小で勝敗を決する。このため、セキの場合などに勝敗が変わることがある。
麻雀などの他の点数を使うゲームと異なり、囲碁においては通常目数の差は重要ではない。そのため、複数回対局して優劣を競う大会などでは、目数差は累積せず、単に勝敗のみを記録して集計する。
[編集] ハンディキャップ
囲碁は先手有利のゲームなので互先の場合、コミと呼ばれるハンディキャップを先手の地の計算から引くことが一般的。実力差がある場合は、置碁が行われることがある。
コラム― ルールにまつわるエピソード: 終局に関するトラブル: とりわけ、規約改定前の日本ルールは、終局に関するルールが高度である。そこで、例えば、お互いの合意が成立していないのに終局が成立していると勘違いし、駄目詰めに対して必要な着手(手入れという。)をせずに石をとられてしまい、終局していたかどうかで争いになってしまうといったトラブルが後を絶たない。こういったトラブルはアマチュアだけでなくプロでも起こり得る。
2002年王立誠二冠(棋聖・十段)に柳時熏七段が挑戦した第26期棋聖戦七番勝負第五局において、終局したと思っていた柳時熏は「駄目詰め」の作業に入っていたが、王立誠は終局とは思っておらず柳時熏の石を六子も取ってしまった。終局していないのなら柳時熏は取られないように「手入れ」すべきで、終局しているなら順序関係なくお互いの地にならない駄目をつめるだけだったため柳時熏は手入れを怠った。これにより王立誠の逆転勝利となり、行為の正当性を巡り囲碁界に論争を巻き起こした。