工作少年
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工作少年(こうさくしょうねん)とは、機械いじりや工作の得意な少年、少女の総称。
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[編集] 概要
工作少年とは、日本では1980年代以前の時代に少年期を過ごした人の中でも、手先が器用で工作を得意とした、ちょっとした玩具なら自分で作ってしまうような当時の子供の事である。近年の日本では余り見かけなくなった・目立たなくなった子供の属性ではあるが、開発途上国などでは似たような創意工夫を好む子供らが見られる。
これらの子供らは、高度経済成長期以前で当時まだ日本が貧しかった時代や、あるいはバブル期前で子供のお小遣いが限られていて買える玩具もたかが知れていた時代に、小器用に玩具を作ったり、拾ってきた廃品のテレビ受像機やラジオを直して再利用したり、あるいは小遣いを貯めて買った部品で作ったりしていた。またそのような動向に特化した少年雑誌も少なからず販売されていた。
これらの子供らは、子供のコミュニティの中でも尊敬を集める傾向があり、この「工作少年」や、ラジオなどが子供らの憧れのアイテムだった時代において、部品からラジオを組みたててしまうような「ラジオ少年」は、周囲から尊敬されたり頼られたり妬まれたりして過ごしていたとする話もしばしば聞かれる。これらの中には後に成長して技術者など工学関係の職を志す・事実技術者として活躍した人も少なくない。
やや不器用な子供らでも、当時はそれなりに工作に関心を示し、苦労して玩具を作ったり、あるいは壊れてしまった玩具を直して使っていたものである。あるいはそのような「不器用だが工作に関心がある」という子供らも、工作少年の一端であったといえよう。
[編集] 開発途上国の工作少年
かつては日本も通った道ではあるが、開発途上国では、現在の日本に比べて労働賃金比で工業製品の価値が高く一般では手が出しづらかったり、あるいは製品その物が入手しにくい場合がある。この中では既存の工業製品を修理して大事に使う文化が根強いが、これを子供らが見様見真似で技術を吸収して自前で何かを作ってしまうこともある。
例えばタイ王国やカンボジアなどでは市民の足としてミニバイクが人気だが、この中では少年らもこつこつ買い集めた中古部品を組みたてて、自分のバイクを作っている者もいるという話も聞かれる。これらの少年らは、いずれ自分が何かの仕事で身を立てるにしても、皆に甲斐性を示すにしてもミニバイクが必要だという切実な理由もあるが、このティーンエージャーの少年の中には、バイク修理店の手伝いをしながら部品を買い揃えて組みたてている…という話もテレビにて報じられている。
[編集] 現代の工作少年
2000年代にあって、工作少年という属性は30~40代くらいの者が郷愁を持って語るような存在ともなっているが、その一方で自作パソコンなどの分野では、中高生あたりでもパソコンの組み立てに関心を示す層がいるし、また電子工作キットも依然として(細々とではあるが)販売されている。インターネット(そこにある情報ではなく、その下地となっている技術)やプログラミングなどの情報処理分野に関心のある少年たちもみられる。
かつての小器用に何かを作り上げるという機会は減ってはいるものの、依然として工学関係に興味と関心を示す少年たちは存在しており、関心の対象が移行したともみなせよう。この中にはスクリプトキディなどの「困った事を仕出かす少年」が居ない訳でも無いが、これは程度の問題である。
ただ技術にはローテク分野の技術者や研究者も必須である。華々しいハイテク分野に対する極端な志向を危惧する向きも見られたが、2000年代頃より次第にローテク分野を志す学生が再び増加しているとする報道も聞かれ、2000年問題前後に顕著化した過剰なハイテク分野技術者の増大・過剰供給傾向は終息し、落ち着きを見せている模様だ。
[編集] この子供らに作られたモノ
現在では、いわゆる郷土玩具と呼ばれるような素朴な玩具は、工作少年によってはナイフ一本(当時は肥後守)で小器用に作る者もいた。ある程度複雑ではない玩具なら、子供文化の中に作り方が伝えられていた。
電気関係・電子関係では、「子供向けの技術書」的な書籍もあり、これを参考に作られることがあった一方で、1970年代後半より必要な電子部品やパターン基板を同梱した電子キットも販売されていた。はんだ付けなどに一定の器用さが要求されたが、それだけに完成時や完動時の喜びもひとしおだった。
簡易嘘発見器や電子オルゴール・LEDアクセサリ・ロボットなど様々なジャンルのキットが販売されていた。
電子部品や配線をブロック状にすることで上記のような様々なキットを組み替えることができる電子ブロックや、ジャンパー線で同様の機能を実現するマイキットなどの電子おもちゃは、その機能の多様さと(当時の子供の小遣いではなかなか手が届かない)高価さから、電子工作に興味のある工作少年の垂涎の的であった。
真空管が使われていた時代には、廃品のテレビやラジオなどから摩滅していない真空管を拾い集めてラジオやアンプを組みたててみたり、あるいは壊れて電器店の脇などに廃棄されたテレビの部品を交換するなどして修理を試みる工作少年もいた模様だ。これらの少年らの中には感電した者もいただろうが、感電の恐怖を遥かに超えて、それらの機械が与えてくれるだろう娯楽に飢えていたのである。
[編集] 関連項目
- 子供らが理科・科学に関心を抱かなくなった一因に、自分で様々な身の回りの現象を観察したり、創意工夫を実践する場が無くなった事を挙げる教育者もいる。
[編集] 書籍・雑誌
- かつての工作少年をターゲットとした、大人向けの雑誌。一種のノスタルジーかもしれないが、その一方で当時人気のあった現象のその後も追っている模様。
- かつての工作少年や現代の工作少年に向けて、月々僅かな金額でロボットなどが組みたてられるシリーズも出している。
[編集] 工作対象
- 現代の工作少年に人気があるテーマの一つ。
- 現在では簡単な物も多いが、ウォーターラインシリーズなど高難易度なものをきれいに作り上げる子供は一種の尊敬を集めた。
[編集] 材料
- 工作少年向けに1950~1970年代に販売されていたロケットエンジン
- 様々なプラモデルの製造販売元であるだけでなく、楽しい工作シリーズのようなギヤボックスやスイッチ付き電池ボックスなど、電動おもちゃに欠かせない様々な部品やリモコンキットなどを発売している。現在の水中モーターの発売元でもある。