戦略
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戦略(せんりゃく)とは、特定の目標・目的を達成するために作成される原則的、総合的かつ長期的なプランのことであり、実践的・実務的な方法論である戦術の上位概念として位置づけられる。ただ、時代・地域・分野によってその意味は異なる場合がある。
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[編集] 概説
将来を見通した意思決定を行う場合、何らかの一般的・原則的な基準となる方針が必要である。その必要性から外的・内的な状況を総合的に分析して立案される方針が戦略である。この概念はさまざまな分野で用いられており、例えば政治・経済・軍事・経営がそれにあたる。また転じて生物学の分野においても、生物の生存のための戦略として用いられる場合もある。これらの概念は分野ごとの互換性がないため注意を要する。
- 国家戦略
- 軍事戦略(military strategy)
- 外交戦略
- 技術戦略
- 経済戦略(economic strategy)
- 防災戦略
- 経営戦略(strategic management、competitive strategy)
- マーケティング戦略(marketing strategies)
[編集] 歴史
世界で最初に戦略の概念を使用したのは孫子と考えられている。戦略という言葉こそ出てこないものの、国家戦略から戦術論などレベルに応じた思考法を示しており、今日においても孫子は極めてすぐれた戦略教書と考えられている。戦争に代表される闘争行為/競争行為を目的-戦略-戦術と階層化・体系化して、各レベルにおける最適解を求めるアプローチ及びそれに伴う組織論は、カール・フォン・クラウゼヴィッツが、その著書『戦争論』において確立したものであり、いわゆる戦略論が展開されるときは、この基本スキーム下にあると言っても過言ではない。それ以降、以下に例示するように、戦略という言葉はさまざまな分野で使われている。
[編集] 軍事における戦略
軍事における戦略は組織化されて理解されており、非常に重要であると考えられている。なぜなら、高度に複雑かつ組織化された軍事力の造成、整備、使用は一貫した方針に基づいて決定されなければ実際においてその能力が効率的に発揮されず、そのことが前線の兵士たちの生死を左右し、国家の安全保障に直接影響するという危険性が存在するからである。(軍事戦略を参照)
[編集] 政治における戦略
政治レベルの戦略は大戦略・国家戦略と呼ばれる。国民の至上目的と使用可能な資源と手段に基づき、国内・国外情勢を総合的に判断して策定される。20世紀にジョルジュ・クレマンソーやリデル・ハートによって提唱された概念である。この国家戦略に基づいて軍事戦略、外交戦略などが策定される。
[編集] ゲーム理論における戦略
ゲーム理論において戦略(game theoretical strategy)とは、発生事象に対する、特定の反応行動の一連のリストというべきものである。長期的であるかどうかとは無関係である。戦術の上位概念とも関係が無い。
- マクシミン戦略(max-min strategy)、ミニマックス戦略(mini-max strategy)
- 最適戦略(optimal strategy)
- 混合戦略(mixed strategy)
- 相関戦略(correlated strategy)
- マルティンゲール戦略(Martingale strategy)
[編集] 経営戦略と軍事戦略の連関
経営戦略論においても「戦略」と「戦術」というクラウゼヴィッツ以来のスキームが適用されている。しかし、軍事戦略におけるそれとは異なり、両者を明確に区別することなく、戦術に相当することも「~戦略」と言われるなど、用法は極めてあいまいである。一般的には「戦術」という用語は経営戦略論では使われない。
[編集] 生態学における戦略
生物学の分野、特に生態学の個体群生態学や行動生態学の分野では、個々の生物種、あるいは個体が進化の上で身につけた行動や習性などを考える場合、いくつかありうる方法の中で、いかなる特定の性質や行動、あるいはそれらの組み合わせがより多くの子孫を残していく上で効果的であり、進化の過程で淘汰により選択を受けて残ってきたかを考えるとき、それらを戦略と呼ぶ。例えば捕食行動における待ち伏せ戦略、繁殖戦略、その中での小卵多産戦略、個体群増加に関するr-K戦略説、最適戦略選択説、生活史戦略などのように使われる。