故事
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
故事(こじ)とは、中国の古典を起源として、昔から伝えられてきた教訓話やいわれのことをいう。
故事をもとにした漢字数文字からなる慣用句を、故事成語(こじせいご)や故事成句(こじせいく)と言う。一部は和語に置き換えられて、ことわざに成っている場合がある。「推敲」や「矛盾」などは特に有名である。
目次 |
[編集] 主な故事
[編集] 漁夫の利
2つの勢力が1つの事柄について争っている間に、第三者が利益を得てしまうこと。「鷸蚌(いつぼう)の争い」ともいう。鷸(しぎ)と蚌(はまぐり)が争いあい、両者とも漁師に捕まったという比喩が元になっている(出典:戦国策・燕策上)。
[編集] 推敲
唐の都長安に、科挙(官吏の登用試験)を受けるためにはるばるやってきた賈島は、乗っているロバの上で詩を作っていた。その途中、「僧は推す月下の門」という一句を口ずさんでから、「推す」のほかに「敲く」という語を思いついて迷ってしまった。彼は手綱をとるのも忘れ、手で門を押すまねをしたり、叩くまねをしたりしたが、なかなか決まらなかった。あまりにも夢中になっていたので、向こうから役人の行列がやってきたのにも気づかず、その中に突っ込んでしまった。さらに悪いことに、その行列は長安都知事、韓愈の行列であったため、その男はすぐに捕らえられ、韓愈の前に連れて行かれた。そこで彼は事の経緯をつぶさに申し立てた。優れた名文家であり、詩人でもあった韓愈は、賈島の話を聞き終わると、「それは『敲く』の方がいいだろう。」と言った。そして、二人は、馬を並べていきながら詩を論じ合った。
このことから「文章を書いた後、字句を良くするために何回も読んで練り直すこと」を「推敲」という。
[編集] 矛盾
楚の国に、矛と盾を売るものがいた。その人は、その矛について「この矛はどんなに堅固な盾も突き通すことができる。」といい、また盾については「この盾はどんなに鋭い矛でも突き通すことはできない。」といった。そこに、ある客が、「では、その矛でその盾を突いたらどうなるのか。」と聞かれ、返答に困ってしまった。
このことから「物事のつじつまが合わないこと」を「矛盾」という。(詳しい説明は矛盾を参照のこと。)