明暗
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『明暗』(めいあん)は夏目漱石の長編小説。「朝日新聞」に大正5年(1916年)5月26日から同年12月14日まで連載され、作者病没のため188回までで未完となった。大正6年(1917年)に岩波書店から刊行。
円満とはいえない夫婦関係を軸に、人間の利己(エゴイズム)を追った近代小説。漱石の小説中最長の作品である。則天去私の境地を描こうとした作品とも解されている。
目次 |
[編集] あらすじ
会社員の津田由雄は、持病である痔の治療のための手術費の工面に迫られていた。だが、親は不義理のために金を出すのに難渋し、妹のお秀から責められる。
由雄には、勤め先の社長の仲立ちで結婚したお延という妻がいるが、お秀はこれを嫌っている。お延は津田に愛されようと努力するが、夫婦関係はどこかぎくしゃくしている。津田にはかつて清子という恋人がいたが、あっさり捨てられ、今は人妻である。お延にはこのことを隠している。
お延の叔父岡本の好意で、津田の入院費を工面してくれることになった。津田の入院先に、かつて清子を津田に紹介した吉川夫人が現れる。夫人は、清子が流産し湯治していることを話し、清子に会いに行くように勧める。
津田は結局一人で温泉へ行き、その宿で清子と再会する。清子は驚くが、翌朝津田を自分の部屋に招き入れる。
[編集] 登場人物
- 津田由雄
- 主人公。30歳の会社勤め。
- お延
- 津田の妻。まだ新婚だが、夫に愛されているか疑問を持つ。
- お秀
- 津田の妹。
- 吉川夫人
- 津田の会社の上司の妻。津田に清子を紹介、後にお延を紹介する。
- 岡本
- お延の伯母・お住の夫。
- 藤井
- 津田の叔父。子に真弓、真事らがいる。
- 小林
- 津田の旧友。津田の傲慢さを指摘する。
- 清子
- かつて津田と愛し合った仲。1年ほど前に別れ、関という男と結婚した。
[編集] 関連作品
- 水村美苗著『続明暗』(1990年、筑摩書房) - 漱石の文体をそのままにし、未完となった『明暗』のその後を描く。芸術選奨新人賞受賞作。
- 田中文子著『夏目漱石『明暗』蛇尾の章』(1991年、東方出版)
- 永井愛著『新・明暗』(2002年、而立書房)