暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律
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通称・略称 | 暴対法、暴力団対策法 |
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法令番号 | 平成3年5月15日法律第77号 |
効力 | 現行法 |
種類 | 刑事法 |
主な内容 | 暴力団取締り |
関連法令 | 組織犯罪処罰法 |
条文リンク | 総務省法令データ提供システム |
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(ぼうりょくだんいんによるふとうなこういのぼうしとうにかんするほうりつ、平成3年法律第77号)は、暴力団員の行う暴力的要求行為について必要な規制を行い、暴力団の対立抗争等による市民生活に対する危険を防止するために必要な措置を講ずることなどを目的とした、日本の法律である。一般に暴対法、暴力団対策法、暴力団新法としても知られる。
目次 |
[編集] 内容
本法では、まず、規制の対象を明確にするため、暴力団の定義付けを行い、暴力団のうち犯罪経歴を保有する暴力団員が一定割合以上を占め、首領の統制の下に階層的に構成された団体を公安委員会が「指定暴力団」に指定する。
- 暴力団 - その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む。)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体をいう。
そして、指定暴力団等の暴力団員が、指定暴力団の威力を示して民事介入暴力などの暴力的要求行為を行うことを禁じた。指定暴力団員が、暴力団員以外の一般人に対しては、暴力的要求行為をすることを要求し、依頼し、又は唆すことを禁じた。また、指定暴力団への加入の勧誘や、事務所において付近住民に不安を与えるような一定の行為も禁じた。
これらの禁止行為に対しては、公安委員会が措置命令を行うことができるようにし、対立抗争時には事務所の使用制限命令を行えるようにした。また、措置命令の実効性を確保するため、罰則規定が設けられている。
さらに、暴力団員の活動による被害の予防等に資するための民間の公益的団体の活動を促進するため、暴力追放運動推進センターの指定なども定められている。
[編集] 影響
1992年(平成4年)3月1日に施行された。山口組、稲川会、住吉会など22の暴力団が、本法による指定暴力団とされており、暴力団員の9割近くが指定暴力団の所属となっている。
本法によって、暴力団員の数は減少し、暴力団事務所の撤去も進んだ。また、対立抗争事件数も減少し、その継続期間も短縮傾向にある。さらに、暴力団員による資金獲得活動も困難になった。
しかし、本法の施行の結果、暴力団の活動が法律に触れぬように巧妙になり、一般企業社会への進出(企業舎弟の増加)や組織擬装が増加するなど、組織の不透明化・マフィア化が進んだ。また、組織犯罪の国際化や、暴力団の寡占化も進み、一概に本法を評価することは難しい。
[編集] 議論
本法は、日本国憲法第21条第1項で保障される「結社の自由」を不当に制限するものであって違憲ではないかと主張されている。制定時、暴力団員や支援者らにより、抗議のデモ行進や座り込みが行われ、各地で本法の違憲を主張した訴訟が提起されるなど、活発な反対運動が展開された。人権派弁護士の遠藤誠は、本法の違憲を主張する行政訴訟の弁護に際して、山口組からの12億円余の資金提供の申出を受けたが断り、無償で弁護した。
- 参照裁判例 - 「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」は、暴力団への自発的加入を犯罪としたり、団体の活動の規制や解散を定めるものではなく、同法第3条による指定を受けても、指定暴力団構成員の暴力的要求行為が規制されるだけであるから、憲法第21条第1項に違反しない。(福岡地方裁判所判決・平成7年3月28日・判例タイムズ894号92頁)
[編集] 参考文献
- 警察庁刑事局暴力団対策部監修『逐条暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律』(立花書房)
- 暴力団対策法研究会『暴力団対策法の研究』(民事法研究会)
- 日弁連民事介入暴力対策委員会編『注解暴力団対策法』(民事法研究会)
- 東京弁護士会民事介入暴力対策特別委員会編『民事介入暴力対策マニュアル』(ぎょうせい)
[編集] 関連
- 公安委員会
- 暴力団
- 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織的犯罪処罰法)
[編集] 外部リンク
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律 - 総務省・法令データ提供システム
- 警察庁・組織犯罪対策
- 全国暴力追放運動推進センター