清元榮三郎

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初代清元栄三郎（きよもと・えいざぶろう）は昭和から平成期に活躍した清元節三味線方。(正式表記は旧字の榮三郎) 松竹大歌舞伎公演の立三味線を長年務めた。重要無形文化財（人間国宝）、日本芸術院会員、正五位勲三等瑞宝章。

[編集] 出生・家系・略歴

代数は初代。本名柿澤壽夫。1926年（昭和2年）6月24日生、2002年（平成14年）12月31日没。享年75。

天声の美声と声量の豊かさによって清元界のみならず、戦前・戦中・戦後の邦楽界を代表する太夫であった清元志寿太夫の長男として生まれ、父のみならず六世清元延寿太夫の立三味線も勤め、また現家元の七世延寿太夫を指導するなど、清元節三味線方の代表格として活躍した。また作曲にも優れ、多数の作品を残している。

母は清元延香、弟は清元小志寿太夫、清元志佐雄太夫、清元志寿朗。長男は清元志寿子太夫。孫は清元延綾、清元一太夫。

昭和 2年、すでに清元節太夫として活躍していた志寿太夫の長男として生まれる(名付け親は五世延寿太夫)。幼い頃より母の指導を受ける。
昭和 8年、清元栄次郎(後の清元栄寿郎)に師事。
昭和19年、清元栄三郎を名乗り、明治座『其小唄夢廓』上の巻（権上）で初舞台。
昭和28年、大阪・歌舞伎座『保名』、『黒手組曲輪達引』で初めて歌舞伎の立三味線を勤める。
昭和41年、六世延寿太夫より三味線「立格」を受ける。
昭和52年、東京芸術大学音楽学部清元科講師。
平成 2年度日本芸術院賞。
平成 8年、重要無形文化財保持者＜各個指定＞（清元節三味線）＝人間国宝に認定される。
平成11年、日本芸術院会員となる。
平成14年、正五位勲三等瑞宝章追授。

[編集] 作曲作品

作曲も多数あり、『花若衆』『お百度』『長恨歌抄』『お力』『築地明石町』『俳くらべ』『雪之丞小袖』『雨の狐』『吹き寄せ話』『蘭蝶』『源氏物語・夕顔』『女ごよみ』『音に菊』『播磨恋歌お夏清十郎』などが主な作品。

[編集] 人物とその周辺

父に似て豪放磊落な性格で知られ、幕内でも若手演奏家や若手歌舞伎役者に気軽に声をかけるなど気さくな人柄であった。生業であった三味線をこよなく愛し、日々の稽古を怠らず、毎朝『助六』や『かさね』の前弾き（前奏）を浚っていた。また、国内はおろか私的な海外旅行であっても三味線を持参し、宿泊先で稽古を行った。（長男清元志寿子太夫によると「旅行カバンや財布よりも三味線を先に持つほどで、時には『僕は部屋で稽古してるから、みんなは観光しておいで』というほどだった」という）若くして清元節の師匠としても活躍したが、演奏家や芸妓などのプロへは非常に厳しく情熱的な指導を行い、多数の演奏家を育成した。特に身内への稽古は厳しかったという。

晩年は癌に侵されながら(本人には告知されなかった)も舞台や稽古を勤め、師籍50年の演奏会も行うなど、亡くなる間際まで活躍した。死の床にあっても三味線に対する情熱は衰えず、うわ言で口三味線を呟いたり、意識が薄れ行く中でも三味線を弾く仕草をしていたという。看病する妻に「僕は年内は持たないだろう。正月は迎えられないんだ」と死期を悟り、その言葉通り平成14年の大晦日に亡くなった。

平成18年7月14日、国立劇場において追善演奏会が催され故人の遺徳を偲んだ。