滑降
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滑降(かっこう)は、アルペンスキーの競技種目の1つで、アルペンスキーの競技種目の中では最速の競技である。スーパー大回転と並んで高速系種目に分類される。
1921年のイギリススキー選手権のためにアーノルド・ルンによって規則が作られたのが最初である。
滑降競技は、技術、勇気、スピード、リスク、コンディションの5つの要素によって特徴付けられ、コースはスタートからフィニッシュまで異なるスピードで滑り降りるようにしなければならないと規定されている。(国際スキー競技規則 702.2)
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[編集] コース
スタート地点とフィニッシュ地点との標高差は冬季オリンピック、アルペンスキー世界選手権、アルペンスキーワールドカップでは、男子の場合は800m - 1100m、女子の場合は500m - 800mで設定され男子のコースでは滑走速度は最大130km/hに達する。
コースには8メートル以上の間隔がある旗門が何本か設置される。アルペンスキーの他の競技種目では赤色と青色の旗門を交互に立てる必要があるが、滑降では赤または青の旗門を設置すればよいことになっている(通常は赤の旗門が使用されている)。回転、大回転の技術系種目では、同じ競技場所でも競技のたびに旗門の設定を変更するが、滑降では特に世界的に有名なコースほどあまり変化しない。このため、コースレコードというものが存在するコースもある。
コースは、急斜面、緩斜面、高速ターンの組み合わせで構成され、ジャンプを伴う箇所もある。これらは選手、観衆ともにスリルを味わわせる要素となる。
[編集] 装備
滑降競技の装備は、技術系種目とは若干異なる要素をもっている。ストックは選手が脇に抱える際に体の内側に回るように曲げられており、頭を保護するためヘルメットの装着が義務付けられている。また、空気抵抗の影響が他の種目と比較してさらに大きいことから、ウェアの表面を極度に平滑にしたり、着用時に空気抵抗が少なくなるようなパターンが浮き出てくるよう作られている。滑降競技では、パッドの付いたウェアを着用することは禁止されている。
安全性を高めるために、2003/04シーズンから最低ターン半径を40メートルから45メートルに変更し、スキーの長さを男子は最短215cm、女子は210cmに初めて設定している。
[編集] 競技
滑走競技では、競技の前に公式トレーニングが設定されており競技に参加する選手は公式トレーニングに参加する義務を負う。また公式トレーニングの開始前に審判団(ジュリー)はチームキャプテンやコーチの立会いの下にコースの下見(インスペクション)を実施する。
公式トレーニングは最低1日、通常は2、3日設定されこの間に選手は練習することができる。
回転、大回転とは異なり、滑降競技は一部の例外を除いて1本のタイムで順位が決まる。
世界レベルの大会では、概ね1分50秒から2分50秒の間で優勝タイムが決まるようにコース設定されるが、ワールドカップやオリンピックでは1位と2位の差が100分の1秒しかないことも少なくない。
このため、特に男子の滑降競技において近年はコースが長めに設定されることが多くなり長野オリンピックでは長野オリンピック男子滑降スタート地点問題も起こっている。
[編集] リスク
滑降競技は危険度が高い競技であるため、選手がコースから外れた際にぶつかる可能性のある障害物に対して高さのあるセーフティネット、セーフティフェンス、パッド、雪の壁、袋詰めされた藁等の適切な方法で保護しているが、それでも選手は練習中あるいは競技中の事故で大怪我、最悪の場合は死にいたる場合もある。