特別会計
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特別会計(とくべつかいけい)とは、国または地方公共団体の官庁会計において、一般会計とは別に設けられる、独立した財団的な組織体のことをいう。略称は「特会(とっかい)」。
各特別会計ごとに予算をもち、一般会計における単一予算主義の原則に対する例外となっている。単一予算主義の原則とは、国・地方公共団体の会計について、すべての歳入・歳出などを単一の会計で経理する原則をいう。しかし、この原則に固執すると、かえって個々の事業の損益や資金の運営実績などが不明となり、好ましくない場合がある。そのようなことを避けるため、特別な事業について、例外的に一般会計から切り離して独立の会計を設けて経理を行うのが特別会計である。もっとも、一般会計から特別会計への繰り入れもあるため、完全に独立しているわけではない。
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[編集] 法的根拠
- 国・・・財政法第13条
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- 国が特定の事業をおこなう場合、特定の資金を保有してその運用をおこなう場合、その他特定の歳入を以て特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合に限り、法律を以て、特別会計を設置するものとする(財政法第13条第2項)。
- 地方公共団体・・・地方自治法第209条
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- 特別会計は、普通地方公共団体が特定の事業をおこなう場合、その他特定の歳入をもつて特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合において、条例でこれを設置することができる(地方自治法第209条第2項)。
[編集] 特別会計の種類
[編集] 国における特別会計
平成18年度現在、国には31の特別会計がある。平成18年度当初予算においては、特別会計の歳出額は約460兆円となっている。これは単純に各会計を足した総額であり、他の会計との重複を除いた純計額は約225兆円である。
国の特別会計は、事業特別会計、資金特別会計、区分経理特別会計の3種のみが認められている(財政法13条2項)。
[編集] 国における特別会計の見直し
現在、見直しが検討されており、
「行政改革の重要方針」として、平成17年12月24日、閣議決定されたものを述べる。
- 特別会計については資産・負債の差額が約45兆円といわれており、そのうち約20兆円について、今後5年間において、財政再建化へつなげる。
- 一覧性・総覧性をもって、国の財政状況を説明できるものとし、純計ベースで表示した予算資料を含め、透明性を高めるものとする。
- 「特別会計合理化法案(仮称)」により、特別会計法に定められた財政法上の例外規定(借入金規定や剰余金の繰越規定等)を整理し、会計情報については、その開示の内容及び要件を統一的に明示するとともに、企業会計に基づく、資産・負債も開示するものとする。みだりに特別会計が設置されると弊害が生ずるおそれがあることから、設置要件を厳格化する。既存の特別会計についても5年ごとの設立要否を見直す条項を導入するものとする。
- 各特別会計の見直しについては次のとおりである。
- 道路整備、治水、港湾整備、空港整備、都市開発融通の5つの特別会計は平成20年度までに1本化し、空港整備に関しては、独立行政法人化を検討。空港整備特別会計に入る航空機燃料税は一般財源化を検討
- 厚生、国民年金保険は平成19年度までに統合。年金事務費は平成19年度より、一部に保険料を当てる恒久措置を行う
- 船員保険は平成22年度をめどに健康保険部分を公法人等へ移管。労災・雇用保険部分は労働保険へ統合
- 農業共済再保険、漁船再保険及漁業共済再保険は平成20年度までに統合を含め、再保険機能について検討
- 森林保険については平成20年度までに独立行政法人化を検討
- 国有林野事業、勘定を統合した上で平成22年度までに一般会計へ統合または独立行政法人化を検討
- 食糧管理、農業経営基盤強化措置、平成19年度に統合し、一般会計へ統合または独立行政法人化を検討
- 自動車損害賠償保障事業、自動車検査登録、平成20年度に統合し、一般会計へ統合または独立行政法人化を検討
- 国立高度医療専門センター、平成22年度に国立がんセンターなどを独立行政法人化し廃止
- 登記、登記所備付地図の財源確保を前提に平成22年度末をもって一般会計へ統合
- 特定国有財産整備、平成22年度をめどに一般会計へ統合
- 電源開発促進対策、石油及びエネルギー需給構造高度化対策は平成19年度までに立法化により統合、電源開発促進税は特別会計に直入から一般会計から必要部分を繰り入れる方式に改める
- 産業投資、社会資本整備勘定は無利子貸付事業が終了するに伴い廃止、産業投資勘定は平成20年度までに財政融資資金へ移管する
[編集] 事業特別会計
事業特別会計とは、特定の事業をおこなう場合に設置される。平成17年度には25種類の事業特別会計がある。
この25種類は、便宜上、企業・保険事業・公共事業・行政的事業・融資事業の5つの区分に分けることができる。
- 企業
- 国有林野事業特別会計
- 保険事業
- 地震再保険特別会計
- 厚生保険特別会計
- 船員保険特別会計
- 国民年金特別会計
- 労働保険特別会計
- 農業共済再保険特別会計
- 森林保険特別会計
- 漁船再保険及漁業共済保険特別会計
- 貿易再保険特別会計
- 公共事業
- 行政的事業
- 登記特別会計
- 特定国有財産整備特別会計
- 国立高度専門医療センター特別会計
- 食糧管理特別会計
- 農業経営基盤強化措置特別会計
- 特許特別会計
- 自動車検査登録特別会計
- 自動車損害賠償保障事業特別会計
- 融資事業
- 産業投資特別会計
- 都市開発資金融通特別会計
[編集] 資金特別会計
資金特別会計とは、特定の資金を保有してその運用を行う場合に設置される。資金特別会計は2種類ある。
[編集] 区分経理特別会計
区分経理特別会計(または単純特別会計)とは、特定の歳入をもって特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区別して経理する必要がある場合に設置される。区分経理特別会計には4種類ある。
- 交付税及び譲与税配付金特別会計
- 国債整理基金特別会計
- 電源開発促進対策特別会計
- 石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計
[編集] 地方公共団体における特別会計
種類については、国とほぼ同じである。
[編集] 特別会計の経理
多くの特別会計は、原則として独立採算制をとっており、歳出予算の繰越し・公債の発行・借入金等についての財政法上制限に対する特例が法定されているが、歳入について一般会計からの繰り入れなどがあり、必ずしも特別会計が一般会計から完全に独立しているとはいえない。