生徒会
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生徒会(せいとかい)は、中等教育である中学校、高等学校、中等教育学校におかれる生徒による自発的、自治的な組織である。盲学校・聾学校・養護学校の中学部・高等部にも、中学校や高等学校に準じておかれる。
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[編集] 概要
生徒会は、学校の全生徒をもって組織され、教員の適切な指導の下に、生徒の自発的な活動により、学校生活の充実や改善向上を図る活動、生徒の諸活動についての連絡調整に関する活動(部活動などの課外活動への支援、学級、ホームルーム間の連絡など)、学校行事への協力に関する活動、ボランティア活動などを行う。
生徒会については、中学校学習指導要領、高等学校学習指導要領それぞれの「第4章 特別活動」に説明がされている。生徒会に相当する組織としては、小学校では児童会が、大学では学生自治会がある。生徒会の代表者については、各学校によって異なるが生徒会長などと称される。
生徒会活動は人的な活動であり、生徒会活動と生徒との関わりは、生徒の自主性などを推し量る指標ともなるといわれる。生徒会活動については、通知表や調査書(内申書)などに「特別活動の記録」などとして記載されるが、高等学校や大学などは、元・生徒会役員など、積極的に生徒会活動を行った人を入学者選抜で高く評価することがある。このため、自分本意で生徒会活動を希望しているわけではない生徒が、受験対策として生徒会役員に立候補することもある。これは、生徒会活動の目的や生徒自身の発達の点から問題とされている。また、地域などを単位にして、各学校の生徒会が相互に協力することを目的とする生徒会連合が設立されることもある。近年では情報技術を活用した生徒会役員同士の連携も盛んになっている。
[編集] 歴史
第二次世界大戦における日本の降伏にともない、連合国軍最高司令官総司令部 (GHQ/SCAP) による民主主義定着政策の1つとして、学校における生徒の自主活動が推進され、小学校、中学校、高等学校などに各種の自治会が設けられた。なお、その後、小学校、中学校、高等学校などの自治会の活動は学習指導要領に規定され、小学校などでは「児童会」、中学校、高等学校などでは「生徒会」という名称に統一された。
[編集] 組織
多くの生徒会では、日本をはじめとする民主主義国家の統治機構を模した組織を持っている。議事機関である「生徒総会」、「生徒評議会(中央委員会など)」、執行機関である「生徒会役員会(生徒会執行部など)」、「各種委員会」などで成り立っているのが一般的である。また、監査機関の設置率は低い。
[編集] 統括型の生徒会
次の図は、さまざまな事項を統括的に処理する生徒会の組織例である。
生徒総会 | +-本部役員会 |(生徒会役員会) | 中央委員会 (生徒評議会) | +-----+--+------+ | | | | (専門委員会) (特別委員会) | | | | +-+-+-+-+-+ +-+-+ | | | | | | | | | | 常 生 美 図 広 保 厚 選 予 そ 任 活 化 書 報 健 生 挙 算 の↓↓ 委 委 委 委 委 委 委 管 委 他文合 員 員 員 員 員 員 員 理 員 学化唱 会 会 会 会 会 会 会 委 会 校祭コ | 員 行実ン ボ 会 事行ク ラ な委| ン ど員ル テ の会実 ィ 委 行 ア 員 委 会 会 員 会 な ど [生徒会運営に参与する組織(校務分掌組織)] 校長 | +-+-+ | | 教頭 職員会議 | 特別活動指導部 | 生徒会役員会の顧問教諭など :
少し特殊な例もある。次の図では、教職員組織と生徒会が一体化して取り扱われている。このような組織形態は、比較的中学校の生徒会に多い。ただし、一部の高等学校にも例がある。組織図の特徴としては、校務分掌上の視点からの記載であり、「選挙管理委員会」「監査委員会」などの特別な委員会の働きが概観しづらくなっている。(規約などに記述自体がされていない事もある)
+--校長--+ +-保健委員会 | | | | | +-体育祭実行委員会 | | | | | 生徒部-+-生徒会------生徒総会-…-職員会議 | | +-文化祭実行委員会 | | | +-視聴覚 | 生徒会役員会-------+ +-選挙管理委員会 | | | | 予算委員会 +-監査委員会 | | | 中央委員会 | | | | | +-----+-------+ | | | | | | | | [専門委員会] [クラブ代表者会議] | | | | | | +-+-+-+-+ +-+++-+ | H | | | | | | | | | | ・ 放 文 生 保 体 文 運 同 愛 | R 送 化 活 健 育 化 動 好 好 | 代 | 祭 | | 祭 部 部 会 会 | 表 | | | | | | | | | | | +-+-+-+-+ +-+++-+ | | | | | | | (任意参加) | | | | +--------+----全生徒-------+
[編集] 連合型の生徒会
次の図は、業務を種類ごとに分類し、多くを下位組織の自治によって行う生徒会組織の例である。
(生徒総会)⇔ +-----+------+ | | | 生徒評議会 生徒会役員会 監査会 | | | (監査委員会) +[所轄]+ | [所轄] | (臨時委員会) | +--+---+ | +---------+ | | | 学 | | 学ホ 部ク 専 校↓ (専門委員会) (特別委員会) | 活ラ 門 行例 | | 級ム 動ブ 委 事・ +-+-+-+-+-+-+ 選 ル 会会 員 委文 | | | | | | | 挙 委| 議議 会 員化 風 保 奉 環 新 放 図 管 ム | 会 会祭 紀 健 仕 境 聞 送 書 理 員委 各各各 議 な実 委 委 活 美 委 委 委 委 員 部同愛 : ど行 員 員 動 化 員 員 員 員 会会 好好 各 委 会 会 委 委 会 会 会 会 || 会会 専\ 員 各各 門別 会 学ホ 委掲 級| 員/ ム 会 ル | ム [生徒会運営に参与する組織(校務分掌組織)] 校長 | +-+-+ | | 教頭 職員会議 | 特別活動指導部 | 生徒会役員会の顧問教諭など :
[編集] 各組織の役割
[編集] 中心的な組織
[編集] 議決機関
- 生徒総会
- 生徒会の最高議決機関であり、基本的な事項の承認、予算・決算の議決、生徒会規約の改廃などを行う。
- 定期的に総会を開く多数の学校と、臨時にのみにしか開かない少数の学校に大きくは分けられる。少数ではあるが生徒総会がない生徒会もあり、生徒会規約の改正等の重要案件では全生徒による投票が実施される場合がある。
- 総会の進行方法としては、通常の会議のように行われる場合もあるが、発言者をあらかじめ決められた者に限る「全校会議」の方式や、単に全校生徒が議案に投票するだけの学校もある。
- 生徒評議会(中央委員会など)
- 生徒総会に次ぐ実質的な議事機関として、生徒総会に提出する議案の決定、諸問題の解決、ホームルームや部・同好会・愛好会などに対する連絡調整、その他種種の計画や実施の協議にあたる。生徒総会がない生徒会では、基本的な事項の承認、予算・決算の議決なども生徒評議会で行われる。
- 生徒評議会の構成者は、各校によって異なり、学級(ホームルーム)から選出された評議員または学級委員(ホームルーム委員)、各種委員会の代表者、部・同好会・愛好会の代表者などである。
- 「ホームルーム委員会」、「専門委員会会議」、「部長会」などの同種の組織をまとめる会議があると議事機関として活動が競合しやすい。その場合は、生徒評議会での協議をおおまかなものに限り、詳細は各種会議で決定する「連合型」と呼ばれる形態になるのが一般的である。
[編集] 執行機関
- 生徒会役員会
- 生徒会全体に必要な事務を執行する。学校によって異なるが、生徒会役員会におかれる役員には、会長、副会長、会計(予算委員会の委員長が兼任する場合もある)、書記、常任委員、議長などがある。(ただし議長は、生徒会役員会におかれず生徒評議会におかれる場合も多い。)生徒会役員の定員は7人前後である。これらの役員を中心とした組織については、特に執行部(しっこうぶ)と呼ばれることもある。
- 役員は、生徒により直接選挙で選ばれるのが原則であるが、会長などの権限を強めるために、重要な役職のみを選挙で選出し、残りは選挙された役員が指名する形態を取る場合もある。一部では、会長が役員を指名する前に顧問等が適切と考えた生徒を実質的に指名してしまい、生徒の意見が反映されにくくなる場合もある。
- 生徒会役員会の下に役員以外の人員を有する事務局をおく場合があり、この事務局を生徒会本部(せいとかいほんぶ)などと呼ぶことがある。事務局があると何年にもわたって継続的に事務を行う人員が確保できるため、強力な生徒会運営が実施できる。この場合、事務局に所属したことがある者からしか役員へ立候補しなくなる場合もあり、運営の中立性の確保を考えると難しい面もある。
- 各種委員会
- 生徒会の各種業務を実施する実務組織である。最大の予算を占めるのが文化祭や体育祭などの学校行事を計画し実施する委員会である。そのほかに、生活規律に関する委員会、健康や安全に関する委員会、ボランティアに関する委員会、環境美化に関する委員会などがある。
- 委員会は生徒会役員会の下におかれる部局ではなく、一定の自治的な権限を持つものとされている。その権限は、通例では各委員会に関する規約で定めることになっている場合が多いが、現実として規約は周知されてない場合がかなりあり、問題が起こると生徒会役員会や生徒評議会と摩擦を起こすことが少なくない。学校によっては、各種委員会の代わりに、生徒会役員会が直接統括を行う部(ぶ)や局(きょく)をおいていることもある。
- よくおかれる委員会の例: 選挙管理委員会、文化祭実行委員会、体育祭実行委員会、風紀(生活)委員会、保健委員会、奉仕活動委員会、環境美化委員会、新聞委員会、放送委員会、図書委員会、飼育栽培委員会、給食委員会、集会委員会など
[編集] 監査機関
- 監査会
- 生徒会について各種の監査を行う。生徒会の中枢について情報公開し、生徒会の運営の中立性を確保するために必要な組織ではあるが、ないことが多い。大きくは、会計監査業務と業務監査業務に区分され、会計監査業務はわずかながら実施率が高い。なお、人事監査はまず行わない。
[編集] 補助的な組織
[編集] 自治機関
- 部活動会議、クラブ会議
- 部・同好会・愛好会などの部活動団体の連絡調整をする組織である。主な権限は、団体の昇格・降格の決定、部活動に割り当てられた予算の再分配などである。生徒評議会に部活動団体の議席があり、なおかつ団体数が定員を上回る場合は評議員の選挙を互選で行うことがある。
- 学級委員会、ホームルーム委員会
- 各学級(ホームルーム)の意志を代表する組織であり、学級委員(ホームルーム委員)などによって構成される。学年制である学校においては、学年ごとの結びつきが非常に強い。協議内容は、遠足や修学旅行などについてが多い。学校によっては、学級委員会(ホームルーム委員会)の内部組織として学年委員会、学年生徒会などと呼ばれる各学年固有の事項について協議する組織を持っていることがある。
- 委員会会議
- 各種委員会によって構成される。元々おのおのの各種委員会は、生徒評議会や生徒会役員会の監督を強く受ける組織であるため、自発的な協議は行われないことが多い。生徒評議会や生徒会役員会が委託したことを主に協議し、予算案の細部の作成などが行われることがある。
[編集] 顧問等
- 顧問教員
- 生徒会に対して、指導(専門的助言)と助言(一般的助言)を行う。役員会、各種委員会、ホームルーム、部、同好会、愛好会などの各組織におかれる。中でも役員会におかれる顧問教員は、生徒会の権能の上で重要な役職である。顧問教員には、生徒会そのものや各組織に対する命令権、監督権はないと解するのが適切であるが、職員として学校の管理運営上の責任を有するため、この職務が生徒の自発性と緊張関係になることがある。
- 生徒会と学校との申し合わせ事項などで、特定の行為をするためには、職員会議の議決や校長の承認を必要とすると定められていることがある。この場合、生徒会の要請に基づいて、当該事項を可否を審議する。また、生徒会に監査機関がない場合は職員会議が代行、ある場合も並行して監査をおこなうことがあるが、生徒の自発性の面からいうと望ましくはない。
[編集] 主な役職
- 会長
- 副会長
- 書記
- 会計
[編集] 問題点
生徒会、わけても生徒会役員会の業務に進んで就こうとする生徒が少なく、またその活動に関心を持つ生徒が少なくなっているため、多くの学校の生徒会が弱体化している。また、役員会は、生徒会運営より事務や式などの準備などの仕事を手伝っていることも多い。役員会が文化祭実行委員会などの実行委員会とほぼ同じ人員である場合もある。
選挙に立候補するものも少なく、選挙も前年度の役員(場合によっては顧問)の推薦によって候補者が決められ、信任投票が行われる事になる。その信任投票にて不信任が確定すると、会長不在の生徒会が一年間続く場合や、選挙のやり直しとなる場合もある。 また、ごく一部に生徒会の顧問の同意の下に選挙なしに特定の生徒が着任してしまう場合や、教員・職員が生徒に対し信任を事実上強制する(信任しないのならばお前がやれ等といった発言がある)場合もあり、問題とされている。
生徒総会等の議決機関が「儀式」と化しており、実質的に議決機関としての意味をなしていないことも多い。なお、社会一般の組織においても儀式のような会議は存在するので、生徒会固有の問題ではない。
生徒事務局の存在と中央委員会の弱体化により、生徒事務局に所属したことがある生徒しか、役員へ立候補しなくなる場合もあり、運営の中立性の確保が困難になる事もある。
また一部の高等学校などでは、学校別の生徒会ではなく「○○学園生徒会」と称して、2つの学校が一体となった生徒会となっているため、いわゆる大企業の欠点「細かいところまで手が回らない」状態となっており、学校ごとに存在する特有の問題に対処できなかったりすることがある。分割しようにも、部活が2校一体のために出来ず、活動を挫折してしまう生徒もいる模様である。
[編集] アニメ・漫画・ラノベにおける生徒会
学園もののアニメ・漫画・ライトノベルなどでは、生徒会が、現実とは異なり、強大な権限を持っていたりする。そうした作品には、例えば
などがある。
[編集] 参考資料
- 文部科学省, 『中学校学習指導要領』, 国立印刷局, 2004年, ISBN 4-17-153421-6
- 文部科学省, 『高等学校学習指導要領』, 国立印刷局, 2004年, ISBN 4-17-153521-2
- 文部省, 『中学校学習指導要領解説 特別活動編』, ぎょうせい, 1999年, ISBN 4-324-05970-5
- 文部省, 『高等学校学習指導要領解説 特別活動編』, 東山書房, 1999年, ISBN 4-8278-1203-9