鈴木禄彌
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鈴木 禄彌(すずき ろくや、1923年(大正12年)4月4日 - 2006年(平成18年)12月22日)は、日本の法学者。専門は民法。1998年(平成10年)より日本学士院会員。1967年(昭和42年)松永賞。東北大学名誉教授、東海大学客員名誉教授。
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[編集] 経歴
- 1947年(昭和22年) 東京帝国大学法学部法律学科卒業
- 1950年(昭和25年) 大阪市立大学法文学部助教授
- 1953年(昭和28年) 同大法学部助教授
- 1960年(昭和35年) 東北大学法学部教授
- 1961年(昭和36年) 法学博士
- 1980年(昭和55年) 同大法学部長
- 1987年(昭和62年) 同大名誉教授
- 1987年(昭和62年)~1996年(平成8年) 東海大学法学部教授
- 1996年(平成8年) 同大客員名誉教授
死後、正四位に叙された。
[編集] 学説
所有権の変動時期について、段階的物権変動説を採用している。
段階的物権変動説とはそれ以前から大きな争いがあった物権(特に所有権)の移転時期について、法理論上特定の時期に決める必要はなく、明確に決めることはできない、取引慣習や当事者の意思により決めればよい、そして結果として物権は段階的に移転することとなる、とする理論である。例えば、売買の場合、売買契約書を交わした時点で契約から発生した買主の権利義務により所有権の一部が買主に移転したと考えることもできるし、登記以外の公示によって外部には所有権の移転がさらに進み、登記によって所有権の移転が完璧にあった、というようなことである。問題が生じた場合にその段階に応じて物権者を決めればよいのであって、物権の移転時期を画一的にある一点に特定することは意味がないとするのである。
この説は実際上の取引慣習や実務を法律構成しようとするものであった。そして、鈴木はその実際を正面から受け止め理論構成しようとした。それまでの学説が所有権の移転時期をどの一点にするかという議論を行っていたことと比して考えると、コペルニクス的転回であったといえる。
しかし、この説には批判がある。それは段階的な所有権移転を法上の理論としてしまうと画一的な処理ができなくなり、紛争のたびに所有権のありかから検討を始めなければならなくなる、などというものである。そのため、民法学説としては普及しなかった。
法定解除の原状回復について、間接効力説と直接効果説の折衷説を採用していが、この折衷説については、不当利得の類型論が提唱される前に採用されたもので、不当利得の類型論が出現した後では、その学説の存在意義は失われたと思われる。
[編集] 著書
創文社より民法の教科書(『民法総則』、『物権法』、『債権法』、『親族法』、『相続法』)を出版している。従来の教科書と異なる意欲的な構成となっている点が特徴であり、ロングセラーとして知られる。その他著書多数。
[編集] 門下生
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