High Definition Video
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HDV(エイチディーブイ、High-Definition Video)は、従来のデジタルビデオカメラで利用されているDVカセットテープに、同等のビットレートでHDTV映像を記録するための記録方式の規格名称である。DVフォーマットでは、規格策定当初から、SD仕様と、HD仕様が予定されていたが、HDについては、このHDVとして実用化された。(当初予定されていたHD仕様は、SD仕様のビットレートを2倍にしてHD記録するというものだったが、テープ速度が2倍になるため、記録時間が半減してしまう。そこで、圧縮方式をMPEG-2に改める事で、SDと同じ記録時間を確保する方法が考案された。)既に、DVのハードウェアやテープを生産しているメーカーにとっては、少ない投資でHDV関連の商品開発が行えるので、コストパフォーマンスに優れた規格であると言えるだろう。
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[編集] 概要
HDV規格は、キヤノン、シャープ、ソニー、日本ビクターの4社により策定され、2003年9月30日に正式発表された(但し、シャープについては、2006年7月現在になっても、HDV規格を採用したビデオカメラを発売しようとする動きは、未だ見られない)。
[編集] 映像・音声
HDVでは、DVと同等のデータ量でより高い解像度の映像を扱うため、より圧縮効率の高い符号化方式を採用している。
映像の圧縮方式にはMPEG-2を採用している。DVでは映像フレームを1枚ずつ個別に圧縮する方式を用いているが、HDVではMPEG-2のフレーム間予測を利用することによって、DVと同等のデータ量でのハイビジョン記録を実現。これによって、SD映像に比べ、情報量が格段に多いハイビジョン映像でありながら、DVと同じ記録時間を確保できた。
音声の圧縮方式にはMPEG-1 Audio Layer-2を採用している。サンプリング周波数は48kHz、16ビットステレオオーディオを384kbpsのビットレートで圧縮する。さすがに、DV方式のリニアPCMほどではないが、それでも、音質的にはかなり優れているので、実際の収録などで十分に耐え得る。
なお、映像と音声の多重化方式はMPEG-2システムを採用しているが、HDV 720pとHDV 1080iとで少々異なる(後述)。
[編集] 記録メディア
記録メディアには従来のデジタルビデオカメラで使用されているDVカセットテープないしMiniDVカセットテープを使用する。
HDVではフレーム間予測が用いられているため、あるフレームのデータにエラーが含まれていると、その後のいくつかのフレームで映像の乱れが伝搬してしまう恐れがある。そこで、エラー訂正能力を装備し、複数トラック間の訂正方式とすることで、ドロップアウトなどによるトラック内データ欠落に対する耐性を高めている。
[編集] 外部機器との接続
HDVビデオカメラを外部記録装置やパーソナルコンピュータと接続するとき、DV方式と同様にIEEE1394ケーブルを用いる。
ちなみにパソコンを利用してのHDV編集などについて、初心者向けとしてはiMovie HDを筆頭にプロ向けのFinal Cut Pro等があるMacintoshが得意とし、以前はAT互換機ではAdobe Premiereなど高価な動画編集ソフトも限定的な対応でCPUもXeonなど高価格なCPUが必須であった。近年ではHDV編集ソフトも廉価版動画編集ソフトでも対応し、編集が手軽に行えるようになってきた。
なお、HDVの720PのIEEE1394接続はD-VHS機器との互換性がある場合がある。
ちなみにソニーのHDR-HC1・HDR-HC3のみ、ソニーのHDDレコーダースゴ録と連携しBlu-ray Discに保存可能。 また、シャープのHDDレコーダーBD-HD100はi.LINK経由でHDVの取り込み、編集機能を備えており、BDへの保存も可能。
ソニーのBRAVIAの一部機種、シャープのAQUOSの一部機種はi.LINK外部機器としてHDVビデオカメラを接続することができ、テレビのリモコンを使用してi.LNIKケーブル経由でHDVビデオカメラを制御することができる。
[編集] HDV規格の種類
「HDV規格」には、有効走査線数1080本のインターレース走査である「HDV 1080i」と、720本のプログレッシブ走査である「HDV 720p」の2種類が定義されている。
[編集] HDV 1080i
HDV1080i方式では、1440×1080画素、秒間60/50フィールド(NTSC/PAL)のインターレース映像を約25MbpsのMPEG-2ビデオで圧縮し、記録する。なお、HDV 1080iでは、テープには映像と音声のPESを記録し、i.Linkで外部機器と記録データを送受信する際はMPEG-2 TSで多重化する。
HDV 1080iはデジタルハイビジョン放送と同じ走査方式を用いているため、放送機器やハイビジョン対応記録機器との親和性が高い。
[編集] HDV 720p
HDV 720p方式では、1280×720画素、秒間30,60/25,50フレーム(NTSC/PAL)のプログレッシブ映像を約19MbpsのMPEG-2ビデオで圧縮し、音声ストリームとMPEG-2 TSで多重化してテープに記録する。
HDV 720pは、インタレース走査のHDV 1080iに比べると走査線を一気に描画するプログレッシブ方式が採用されているのでチラツキは少ない。フレームレートは60フレーム/秒。解像度が1080iに比べて低いが実際には60フレーム/秒なので、情報量はこちらの方が多い。
しかし、本来家庭用DVでは60フレーム記録することは想定してないので、どちらを選んでも殆どの場合、記録する実際のフレームレートは30フレーム/秒となる。
一方、一般的なデジタル放送対応の中型液晶テレビやプラズマテレビの実解像度では1080iの精細さを再現しきれないものが多く、ディスプレイの画面解像度にも横1280画素のものが広く普及している。そのため、そのような表示装置との相性がよく、インタレースの扱いが難しいパーソナルコンピュータには1080iよりも適した方式といえる。
[編集] 対応機器
[編集] カムコーダー
- GR-HD1(日本ビクター、2003年3月発売): HDV規格策定前に発売されたモデル。世界初のHDV規格対応機器。HDV 720p方式のベースとなっている。
- JY-HD10(日本ビクター、2003年4月発売): GR-HD1の業務用モデル。既に生産終了。
- HDR-FX1(ソニー、2004年9月発売): 世界初のHDV 1080i対応機器。
- HVR-Z1J(ソニー、2004年11月発売): HDR-FX1の業務用モデル。
- QUALIA002(ソニー、2004年11月発売): HDR-FX1をベースとしたQUALIAシリーズのビデオカメラ。
- HDR-HC1(ソニー、2005年7月発売): HDVカメラとしては初の家庭向け普及価格帯小型化モデル。HDV 1080i方式を採用。スゴ録と連携しBlu-ray Discにも保存が出来る。
- HVR-A1J(ソニー、2005年9月発売): HDR-HC1の業務用モデル。
- GY-HD100(日本ビクター、2005年9月発売): 業務用モデル。HDV 720p方式を採用。
- XL H1(キヤノン、2005年11月発売): HDV 1080i方式を採用。レンズ交換方式、映画制作マーケット向けにプログレッシブ方式と同等の映像方式にも対応。
- HDR-HC3(ソニー、2006年3月3日発売): HDR-HC1の後継機種。更に小型化。
- iVIS HV10(キヤノン、2006年9月発売): 横1920ドットのCMOSを採用し、リサイズして記録。発売時点でHDVとして世界最小・最軽量。
- iVIS HV20(キヤノン、2007年3月発売):HV10の後継機として発売。
- XH G1/XH A1(キヤノン、2006年11月発売): XL H1の小型簡易版。HDV 1080i方式を採用。映画制作マーケット向けにプログレッシブ方式と同等の映像方式にも対応。
- HDR-FX7(ソニー、2006年11月発売): 小型化軽量化が図られたHDR-FX1の後継機種。
- HVR-V1J(ソニー、2006年11月発売): HDR-FX7の業務用モデル。映画制作マーケット向けに1080/24P, 1080/30Pに対応。HVR-DR60によるハードディスクレコーディングに対応。
[編集] デッキ
- 日本ビクター CU-VH1 (2004年1月発売) [1] HDV 720pの再生のみ対応。
- 日本ビクター BR-HD50 (2005年10月発売) [2] HDV 720p対応。
- ソニー HVR-M25J, HVR-M15J (2006年5月発売) [3] HVR-1500 (2007年2月16日発売)[4]HDV 1080i対応。