いなほ (列車)
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いなほ は、東日本旅客鉄道(JR東日本)が、新潟駅~酒田駅・秋田駅・青森駅間を白新線・羽越本線・奥羽本線経由で運転する特別急行列車。
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[編集] 運行概要
新潟駅で上越新幹線に接続し、新潟県下越地方北部、山形県庄内地方、秋田県沿岸地域とを結ぶ特急列車。沿線が全国有数の米どころであることから、この愛称が付与された。
2006年現在、定期列車としては新潟~酒田間4往復、新潟~秋田間2往復、新潟~青森間1往復の計7往復が運転されている。青森発着便は青森~秋田間で「かもしか」の補完もしている。
定期列車の他、多客時には臨時列車が運転される。2004年夏季には下り2本、上り5本が運転され、上りダイヤ(計12本)はまるで往年のエル特急華やかなりし頃を思わせるものである。
[編集] 使用車両
- 485系電車(新潟車両センター所属)6両編成で運転。基本的にはリニューアル車(3000番台)で運転されるが、1000番台(上沼垂色)で運転する場合もあり、両方が混在した状況となっている。最近では、1000番台のシートを3000番台のシートに取り替えた車両を編成に組み込んでいる場合がほとんどである。「北越」と共通運用となっている。
- 交直流対応の485系であるが、その性能(交-直直通)を発揮している数少ない列車でもある。
- 特急電車だが、LED案内では「Limited Express」ではなく「Super Express」と表示される。
[編集] 設備
- 6両編成
青森・秋田・酒田← | →新潟 | |||||
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
指 | 指 | 指 | 指 | 自 | 自 | 自 |
[編集] 車内販売
- 基本的に新潟~酒田(秋田)間で車内販売を行う(NRE新潟列車営業支店担当)。ただし7・8号に限り新潟~秋田間で行う(NRE秋田営業支店担当)。なお、酒田発早朝便では車内販売が取りやめになった列車もある。
[編集] 停車駅
新潟駅 - 豊栄駅 - 新発田駅 - 中条駅 - 坂町駅 - 村上駅 - 府屋駅 - あつみ温泉駅 - 鶴岡駅 - 余目駅 - 酒田駅< - 遊佐駅 - 象潟駅 - 仁賀保駅 - 羽後本荘駅 - 秋田駅>(- 八郎潟駅※ - 東能代駅 - 二ツ井駅 - 鷹ノ巣駅 - 大館駅 - 弘前駅 - 青森駅)
- ( )内(新潟-青森間)は1往復のみ設定。< >内(新潟-秋田間)は2往復設定。※は7・8号のみ停車。
[編集] 羽越本線直通優等列車沿革
- 1962年3月10日 新潟駅~秋田駅間を運行する準急列車として、「羽越」(うえつ)が運行を開始する。キハ28系気動車やキハ58系気動車が使用され、蒸気機関車が引く急行列車よりも速かったという。
- 1963年4月20日 金沢駅~秋田駅間を運行する急行列車「しらゆき」が運行を開始する。
- 1965年10月1日 「羽越」の運行区間を上野駅まで延長し、列車名を「鳥海」(ちょうかい)に変更する。
- 1968年10月1日 「ヨンサントオ」と称されるダイヤ改正に伴い、以下のように変更する。
- 新潟駅~秋田駅間を運行する急行列車として「羽越」が再び設定される。但し、運行時間は新潟駅朝発・夕方着と当時のダイヤ上では空白となっていた時間帯に運行された。
- 従来「羽黒」と称された羽越本線経由上野駅~秋田駅間運行の夜行列車の名称を「鳥海」に統合。従前昼行列車で運行していた「鳥海」は上り下りとも「鳥海1号」と称される。
- 1969年10月1日 上野駅~秋田駅間を高崎線・上越線・信越本線・羽越本線(水原駅経由)経由で運行する特別急行列車として「いなほ」1往復が運転を開始。これと引き替えとして従来同区間を運行していた気動車急行「鳥海1号」は季節列車となる。
- 1972年10月1日 羽越本線電化に伴い「いなほ」に485系電車を導入。同時に季節列車として運行していた気動車急行「鳥海1号」は特急に格上げされ消滅(夜行の「鳥海」は存続)。青森駅までの1往復が増発され、「いなほ」計2往復となる。また、急行「羽越」が1往復増発し、2往復体制となる。
- 1978年7月1日 「いなほ」秋田駅発着列車を1往復増発し、「いなほ」上野駅~秋田駅2往復・上野駅~青森駅1往復の3往復体制となる。また、「羽越」の下り列車に坂町駅まで「あさひ」が連結され多層建て列車として運行される。
- 1982年11月15日 上越新幹線開業に伴うダイヤ改正に伴い、以下のように変更される。
- 1985年3月14日 東北・上越新幹線上野駅開業に伴うダイヤ改正に伴い、以下のようにダイヤが変更される。
- 「鳥海」定期列車としては廃止。上野駅~秋田駅間の臨時列車として存続。
- 担当は秋田運転区(現秋田車両センター)の485系7両編成に変更。
- 「いなほ」1往復酒田駅発着列車の運行が開始。6往復体制となる。なおこれ以後「いなほ」の運行区間は羽越本線内が中心となる。
- 車両は青森運転所と秋田運転区の485系6両編成に変更(秋田車は、秋田発着の1往復のみ)。
- 「鳥海」定期列車としては廃止。上野駅~秋田駅間の臨時列車として存続。
- 1986年11月1日 「いなほ」2往復が酒田駅までの運行とする。また、1往復季節列車を設定。
- 1988年3月13日 「いなほ」1往復を増発。季節列車を定期列車化し、8往復体制となる。
- 1988年7月 新潟駅~村上駅間の臨時快速列車「胎内」(たいない)を運行開始。
- 1991年3月16日 「いなほ」1往復の新潟駅~酒田駅間の途中停車駅を村上駅・鶴岡駅のみにした(通称)「スーパーいなほ」を設定。上越新幹線の速達列車と接続することで所要時間を短縮した。通過となった新発田駅・中条駅・坂町駅への利用客対策として新潟駅~村上駅間の快速列車「せなみ」2往復運行開始。
- 1993年3月18日 快速「せなみ」を格上げし、「いなほ」に村上駅発着列車2往復運行を開始。但し、「いなほ」の運行本数は9往復となっていることから、村上駅~酒田駅の運行を廃止した形とも言える。この改正で「スーパーいなほ」は通常の停車駅に戻されたが、秋田新幹線開業以前には早朝の4号が一部区間を速達列車として停車駅を削減していたほか、1997年頃まで帰省シーズンの臨時列車としてやはり村上以南をノンストップにした列車が運行されていた。
- 1995年12月1日 「いなほ」村上駅発着列車を1往復酒田駅まで延長、1往復廃止し、「いなほ」7往復に減便。
- 1997年3月22日 秋田新幹線開業により、酒田~秋田間の運行は半分に削減される。この頃から「いなほ」は新潟~酒田間の列車が中心となり、利用客のターゲットを秋田周辺から山形県庄内地方・新潟県下越地方に絞る。
- 2001年3月3日 大阪駅~青森駅間の特急「白鳥」が廃止。それぞれ「雷鳥」・「北越」・「いなほ」に系統分離される。同時に、大阪駅~新潟駅間運行の「雷鳥」も廃止されたため、新潟駅~青森駅間の「いなほ」が国内在来線で最長の定期昼行特急列車(458.8km)となる。
- 2002年12月1日 JR東日本管内のエル特急名称廃止により、「いなほ」形式上「特急」となるが、運転系統上特に変更はない。
- 2005年12月25日 秋田駅発新潟駅行の「いなほ14号」が羽越本線の第2最上川橋梁通過直後に突風に煽られ脱線、転覆した。詳しくはJR羽越本線脱線事故を参照されたい。
- 2007年3月18日 健康増進法第25条により、「いなほ」全車両禁煙となる。
[編集] 今後の展望
- 白新線・羽越本線は線形が悪く、また部分複線であるため、高速化には大きなネックとなっている。また、日本海沿岸部を走行する区間が多いこともあり、特に冬期間は降雪(特に吹雪)・積雪の影響でほぼ慢性的な遅れが発生している。
- 近年、ダイヤ改正で徐々に本数が減っており、特にデータイムは空白時間となっている。
- 現在競合する交通手段としては、対首都圏では羽田~庄内空港の航空便がある。2006年4月より庄内空港での夜間駐機の実施により、羽田行始発便の時刻繰り上げ・羽田発最終便の時刻繰り下げが行われた。これにより首都圏滞在時間で優位に立っていた「いなほ-上越新幹線」ルートにどのような影響が及ぶか注目すべきところである。
- 日本海東北自動車道(日東道)の一部開通に伴い、新潟~村上間で高速バスが運行されている。日東道は現在、新潟市内から中条ICまでの区間が開通しているが、以北の温海ICまでの区間の多くは未着工であり、本列車群の存続を脅かす程の競合交通手段は現在のところ、特に存在しない。
- 新在直通のフリーゲージトレインの導入、ミニ新幹線化、線形改良による高速化、新幹線ホーム乗り入れに伴う乗り換えの利便性向上、両県沿線でも様々な意見や試案が出されているものの、実現にはまだ相当の議論を要す見込み。2006年3月に、山形・新潟両県より、羽越本線高速化の方式としては新潟駅新幹線ホーム乗り入れを含む在来線高速化改良が最も有効であるという調査報告が出された。