ウォーロック
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ウォーロック(Warlock)とは、ペンギン・ブックスとイギリスのゲーム制作会社ゲームズ・ワークショップにより、1983年から1986年にかけて発行された雑誌である。本来ウォーロックはファイティング・ファンタジーのゲームブックシリーズの専門誌であったが、すぐにファンタジーゲームジャンル全体を広く取り扱うようになった。
『ウォーロック』は社会思想社による特約誌として、日本でも1986年12月から翻訳出版された。日本版ウォーロックは後にはイギリス版から離れた内容も取り扱うようになり、1992年3月まで通巻63号発行された。日本版ウォーロックは日本初のテーブルトークRPG専門雑誌であり、また日本ではほぼ唯一のゲームブック専門誌でもあった。[1]
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[編集] イギリス版
ウォーロックの創刊および責任編集はファイティング・ファンタジーの創始者であるスティーブ・ジャクソンおよびイアン・リビングストンにより行われ、1986年12月の「ホラー特集号」を最後に休刊するまでの13号を通じて、形式張らない活気に満ちた性質を維持し続けた。悪魔的な監修大君主として言及されていた「ウォーロック」は雑誌を代表するキャラクターであり、おそらくはジャクソンその人の分身であった。創刊時のウォーロックはトニー・レイシーとフィリッパ・ディキンソンにより編集されていたが、後にペンギン・ブックスからゲームズ・ワークショップに発刊元が移行し、「真の編集長」ことマーク・ガスコインが編集に加わってから以降に、ウォーロックはその特徴の多くを発揮し始めた。
[編集] 連載記事
- ミニ・ゲームブック
- ウォーロックは毎号掲載されていたミニ・ゲームブックのために創刊された雑誌であった。最も特筆すべきミニ・ゲームブックとしては、第3号に掲載されたスティーブ・ジャクソンによる短編ファイティング・ファンタジー『地獄の館』がある。この短編は後に一冊の本に拡張され、ファイティング・ファンタジーシリーズの最も人気のある一作となった。
- トロールのデレク
- リュー・ストリンガー画による連載漫画『トロールのデレク』(Derek the Troll)の主人公デレクは、ウォーロックでもっとも長い間活躍したキャラクターの一人である。多忙なデレクはすぐに彼自身の漫画を飛び出し、彼自身の書評欄やその他の記事も持つようになった。第13号の『トロールのデレク』は、極小の16コマに分割されたゲームブック漫画であった。
- ペイント・ヤー・ドラゴン
- リック・プリーストリーによる『ペイント・ヤー・ドラゴン』(Paint 'Yer Dragon)はフィギュア塗装と造型入門の連載記事から成り立っていた。第9号ではフィギュアの効果的な下準備と塗装についてが読者に紹介され、第10号ではピンニングなどのより高度なフィギュアカスタマイズの技術が説明された。第12号ではフィギュアのベースについて考慮されていた。
- モンスター事典
- 『モンスター事典』(Out of the Pit)は、ファイティング・ファンタジーの各巻を通じて多数の作家により導入されたモンスターについての解説記事である。この記事は後の1989年に、編集長のマーク・ガスコインにより同名の一冊の本にまとめられた。
[編集] 日本版
[編集] 沿革
- 1986年12月 - 英warlock誌の日本版として創刊。
- 1987年12月 - トンネルズ&トロールズ日本語版発売。その後徐々にテーブルトークRPG中心の誌面構成となる。
- 1988年7月 - 表紙から「THE FIGHTHING FANTASY MAGAZINE」の表記が消える。
- 1991年3月 - 誌面の大幅な刷新。それまで横書きだった文章が縦書きに変わる。それに伴い綴じ方も変更されている。
- 1991年10月 - ウォーハンマー ファンタジーRPGルールブック日本語版発売。
- 1992年3月 - 63号をもって休刊
[編集] 概要
日本版ウォーロックは1984年発売のゲームブック『火吹山の魔法使い』(The Warlock of Firetop Mountain)、1985年の『ソーサリー』シリーズの成功を受けて1986年に英warlock誌の日本版として創刊された。なお、この1986年はドラゴンクエストの発売、月刊コンプティークでのロードス島戦記リプレイ記事の連載開始と日本にとってのファンタジー元年と言うべきに年となった。
同誌の活動の概要を大きく3つの時期にわけて解説を試みる。
[編集] 黎明期
創刊当初はファイティング・ファンタジーシリーズをはじめとするゲームブックのフォロー・レビュー記事を中心に同シリーズのシステムを用いたテーブルトークRPGである「ファイティングファンタジー」への誘導を行っていたが、出版の遅れからこの戦略はゲームブック形式のソロシナリオのラインナップを持つトンネルズ&トロールズが引き継ぐ形となる。
初期は海外の翻訳記事、古代・中世ヨーロッパや日本に関する読み物、ファンタジー要素を持つ映画・小説の批評、雑誌上で完結するミニゲームブックの掲載といった文芸誌的な誌面構成であった。後にグループSNEの中核をなすこととなる面々も、この時期にライターとして活躍していた。
[編集] 絶頂期
ゲームブック専門誌としては低迷期に入り、トンネルズ&トロールズと訳者である清松みゆきを中心としたテーブルトークRPG専門誌となる。初期から続く読み物に加え、初心者にテーブルトークRPGの入門を解説する連載マンガ、半公式となるオプションルールの紹介、誤植の訂正、リプレイ記事、メタルフィギュア・ダイス等のアクセサリーの紹介と誌面構成の完成をみる。反面、単一のゲームを中心とした内容からマンネリ化・楽屋落ちの多用が見られ、古参読者と初心者のギャップが大きい同人誌化への批判が挙がり始める。
[編集] 落日期
タクテクスから創刊したRPGマガジン、月刊ドラゴンマガジンの台頭、コンプRPGの創刊といった独占状態の瓦解や、読者層の成年化に伴うより複雑なゲームへの移行への遅れ、ライター陣の角川書店を中心とした大手出版社への流出等、様々な理由により部数が減少。ハイパーT&T、ミニチュアゲームから派生したウォーハンマー ファンタジーRPGの投入も大きな成果を生まず、休刊へと向かった。
[編集] 評価
それまでSFの1ジャンルとして捉えられることが多かった(剣と魔法の)ファンタジーを専門に扱う雑誌として、黎明期に果たした役割は過小評価のしようの無い極めて大きなものである。
[編集] 表紙の変遷
創刊号から13号までは表紙は英Warlock誌で使用された絵を使用している。14号では特集にあわせトンネルズ&トロールズのルールブックの絵が使用されている。
15号以降は全て米田仁士による幻想的なイラストで飾られるが、特集記事の内容や特定のゲームの世界観を表す物はほとんど無い。
[編集] 主な記事と企画
- どこでもT&T
- (7号~10号)
- 作・画共に山本弘による、トンネルズ&トロールズのリプレイ漫画。リプレイ風景とゲーム内世界をザップしながら、主人公イクミとTRPG部の部長や先輩達との掛け合いによって物語が進んでいく。
- 摩由璃の本棚
- (1号~30号)
- 神月摩由璃によるファンタジー・SF小説のブックレビュー。ゲームブックを介してファンタジーやSFに興味を持った読者を対象とした読書案内。取り上げられた主な書籍は『指輪物語』『ナルニア国ものがたり』『エルリック・サーガ』『インテグラル・ツリー』『夏への扉』など。後に社会思想社より文庫化。
- ゲームの殿堂
- (1号~30号)
- 近藤功司によるゲームブック評論。「ゲームブック」という媒体に対する、本格的な批評を目指して作られた。取り上げられた主なゲームブックは『火吹山の魔法使い』『地獄の館』『シャーロックホームズ10の怪事件』『失われた体』など。
- ファイティング・ファンタジーの楽しみ方
- (25号~30号、32号~43号)
- 翻訳者の安田均による、ファイティング・ファンタジーシリーズの構成、システムに関する評論。後に社会思想社より文庫化。
- 「ま」の部屋
- 編集長多摩豊と美人編集者との呼び声の高かった摩由璃嬢の掛け合いで構成される宣伝コーナー。
- ロッコの早耳情報
- 日本版ウォーロックのマスコットキャラクター・ロッコによる社会思想社の近刊情報。「ロッコ」はイラストレーターのNikovのデザインによる魔法使いの少女で、初期から中期にかけての企画記事で語り手や質問役として頻繁に登場していた。
- 編集部からの挑戦
- 編集部から出される「お題」に解答するコーナー。絶体絶命の状況での対処法やモンスターのアイデアなどRPGに即した問題が多く出題された。
- 読者参加企画『2つの川の物語』に吸収され、終了した。
- ウォーロック・ワールド
- 朱鷺田祐介による、読者投稿を元に(RPGの背景となる)一つの世界を作る企画。この世界で遊ぶための『トンネルズ&トロールズ』用の拡張ルールも作られた。
- 2つの川の物語
- 冒険企画局による、読者参加企画。架空の地域の移住者となって生活する。
[編集] 掲載された主なゲームブック
- 『モンスターの逆襲』
- 作/山本弘とグループSNE
- ゴブリンが強力なモンスターへと変身しながら復讐を遂げていく、モンスター視点によるファンタジー物。3号~6号に、四部作構成で連載。後に社会思想社から文庫化された。
- 『フォボス内乱』
- 作/宮原弥寿子
- アンドロイドの少女の活躍を描くSF物。16号に掲載。後に『ダイモスの攻防』も収録した形で、社会思想社から文庫化された。
- 『ダイモスの攻防』
- 作/宮原弥寿子
- 超能力者達のレジスタンス活動を描くSF物。25号に掲載。
- 『送り雛は瑠璃色の』
- 作/思緒雄二
- 日本の伝承を題材に採った和製ホラー。30号、31号に連載。後に『顔のない村』を収録した形で、社会思想社から文庫化。絶版後は、創土社から再販されている。
- 『ロストワールドからの脱出』
- 作/山本弘
- 野生の少女や黄金のジェット機が登場する秘境冒険物。39号に掲載。
[編集] 逸話
- 読者の愛称にシャーロック・ホームズ愛好家を意味する「シャーロキアン」をもじった「ウォーロキアン」が提案されたが定着しなかった。
- ライターの清松みゆきをその名前から女性と断定する、というネタが流行した。実際にはもちろん男性である。
- 夭折した漫画家木崎ひろすけは、「薄羽かげろう」のペンネームで本誌の常連投稿者だった。
[編集] 編集長
- 多摩豊 創刊号-33号・35号
- 近藤功司 34号・36号-63号
[編集] 関連項目
[編集] 脚注
- ^ なぜ「ほぼ」かというと、他にも他社による雑誌増刊号、特集号や単行本として「ゲームブック専門誌」があったためである。定期刊行されていた専門商業誌は本誌だけであるが、TRPGなどの記事が併載されていったため「ゲームブック専門誌」と言い難いという意味もある。また同時期の東京創元社の「アドベンチャラーズ・イン」の存在もある(折込みの情報ペーパーであるが、純然たる「ゲームブック専門紙」であり、契約ライターを募集しての独自記事もあった。当時のファンには「ウォーロックのライバル誌」と見なされていた面もある)。また、ウォーロックの前身として社会思想社から刊行されていた「ゲームブック・マガジン」(6号まで刊行。28~36ページの定価100円の小冊子)はゲームブック専門誌であった。
[編集] 外部リンク
- ファイティングファンタジー.com(海外サイト)
- ウォーロック目録
カテゴリ: ゲームブック | テーブルトークRPG | ゲーム雑誌の歴史