キュバン
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キュバン | |
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IUPAC名 | ペンタシクロ[4.2.0.02,5.03,8.04,7]オクタン |
分子式 | C8H8 |
分子量 | 104.15 g/mol |
CAS登録番号 | [277-10-1] |
形状 | 無色結晶 |
融点 | 130–131 °C |
SMILES | C12C3C4C1C5C4C3C25 |
キュバン (cubane) は 8個の炭素原子が立方体の各頂点に配置され、それぞれの炭素原子に水素原子が1個ずつ結合した構造を持つ炭化水素分子である。分子式は C8H8, IUPAC命名法ではペンタシクロ[4.2.0.02,5.03,8.04,7]オクタン、CAS登録番号は [277-10-1]。
無色透明の結晶で、融点 130–131 ℃、200 ℃以上で分解する。
炭素原子同士の結合角が 90°に近く、これは sp3 炭素で理想的な 109.5°から大きく離れるためひずみエネルギーが大きい。そのため非常に不安定な化合物とされ、合成は不可能と考えられていたが、1964年にシカゴ大学の教授フィリップ・イートンによって初めての合成が達成された[1]。実際に合成されると、予想されていたよりもはるかに安定な結晶であることが分かった。今日ではさらに多くの合成法が開発されている。
かなりひずんだ骨格のために大きなエネルギーを内包しており、炭化水素の中でも密度が最大であるため、高密度、高エネルギーの燃料としての有用性が期待されている。
8個の水素原子をすべてニトロ化したオクタニトロキュバンは現在理論的に考えられる最強の爆薬であるとされるが、現段階ではその合成にはかなりのコストと手間がかかるため、実用的ではない。
キュバンを多数つなげたポリマーも作り出されており、非常に頑丈な繊維である。
炭素以外にも、炭素族元素であるケイ素やゲルマニウム、スズなどでもキュバン同様の立方体分子が合成されている。ただし、これらの元素同士の結合は酸素などと反応しやすいため、周りを大きな置換基で覆うことにより初めて安定に取り出すことが可能となった。例として、オクタテキシルオクタシラキュバン (octathexyloctasilacubane, Si8(Me2CHCMe2)8) がある。
[編集] 参考文献
- ^ Eaton, P. E.; Cole, T. W., Jr. "Cubane". J. Am. Chem. Soc. 1964, 86, 3157–3158. DOI: 10.1021/ja01069a041.
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 炭素の四角形2 - 有機化学美術館
- High energy derivatives of cubane - キュバンと誘導体(英語)