チキンゲーム
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チキンゲームとは、別々の車に乗った2人のプレイヤーが互いの車に向かって一直線に走行するゲームである。
激突を避けるために先にハンドルを切ったプレイヤーはチキン(臆病者)と称され、屈辱を味わう結果になる。チキンゲームのような、どちらか一方のプレイヤーが引き下がるまで苦痛を強いられるゲームは、若者の間で行われる場面がほとんどである。
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[編集] 概要
「チキンゲーム」という言葉は、ある交渉において、2人の当事者が共に強硬な態度をとり続けると、悲劇的な結末を迎えてしまうにも拘らず、プライドが邪魔をして双方共に譲歩できない状況の比喩として使われる場合もある。バートランド・ラッセルが、チキンゲームを「瀬戸際外交」と比較した研究は有名である。
チキンゲームの最も古い例の一つに、映画「理由なき反抗」がある。この映画では、2人のプレイヤーは崖に向かって別々の車で同時に走り出し、先に運転席から飛び出した者が「チキン」である。2人のプレイヤーが互いに向かい合う形式が一般的であるが、映画や小説では崖に向かう形式が多く見られる。
[編集] ゲーム理論におけるチキンゲーム
チキンゲームは、ゲーム理論における研究対象にもなっており、非ゼロ和ゲームと深い関わりがある。チキンゲームは、交渉における重要な基本原理であり、譲歩する猶予が与えられた各プレイヤーの戦略として記述される。そして双方のプレイヤーの少なくとも一方が譲歩しない限り、悲劇的な結末が回避される結果にはならない。
衝突を回避するという屈辱は、衝突に比べれば些細な結末である。そのため、起こりうる衝突を事前に回避する行動が、合理的な行動といえるだろう。ただし、相手が回避する戦略しか採らないプレイヤーならば、必ずしも回避する必要はない。
チキンゲームの利得表を次に示す。ここで、「協調」はハンドルを切る選択を、「裏切り」は直進する選択を表している。
協調 | 裏切り | |
---|---|---|
協調 | 0, 0 | -1, +1 |
裏切り | +1, -1 | -20, -20 |
上のモデルでは、ゲームの開始以前に自分の選択を決定しなければならない。さらに、ゲームの開始直後に相手の行動を確認できたとしても、最初に決定した自分の選択は必ず遂行しなければならない。
チキンゲームと対比されるゲームに、囚人のジレンマがある。囚人のジレンマには相手の行動に関わらず常に最適となる行動が存在するが、チキンゲームにおける最適行動は相手の行動に依存する。
[編集] タカハトゲーム
チキンゲームは、進化ゲーム理論の分野ではタカハトゲームとしても知られている。タカハトゲームの設定では、共有資源を分割する方法として、2人のプレイヤーはそれぞれ2種類の戦略から、1つを選択することができる。
攻撃的なタカとして振舞うか、温和なハトとして振舞うかである。もし双方のプレイヤーがタカ戦略を選択した場合、資源を奪うために戦い、双方共に資源を獲得できない。一方がタカ戦略を選択し、もう一方がハト戦略を選択した場合、タカ戦略が資源を独占するが、戦いによってハト戦略が傷つくこともない。 双方のプレイヤーがハト戦略を選択した場合、資源を対等に分け合うことができる。
[編集] 関連項目
ゲーム理論のトピックス | |
定義 | 協力ゲーム - 非協力ゲーム |
均衡 | ナッシュ均衡 - 部分ゲーム完全均衡 - ベイジアン・ナッシュ均衡 - 逐次均衡 - 完全均衡 - 合理化可能性 - 進化的に安定な戦略 - パレート最適- 戦略的補完性 |
ゲームのクラス | 標準型ゲーム - 展開型ゲーム - 提携型ゲーム - 完全情報ゲーム - 不完全情報 - 繰り返しゲーム - ゼロ和 - 非ゼロ和 - 二人零和有限確定完全情報ゲーム |
ゲーム | 囚人のジレンマ - チキンゲーム - スタグハントゲーム |
理論 | ミニマックス法 - フォーク定理 - コアの極限定理 |
関連項目 | 数学 - 経済学 - 進化論 - 集団遺伝学 - オペレーションズリサーチ - 社会生物学- 環境社会学 |