トラクター
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トラクター（tractor、ラテン語trahere「引く」に由来）は、それ自体で推進できないものを牽引したり、しばしば動力を供給したりする装置である。 トラクターとは被牽引車を引っ張る牽引車の事を指す。
英国では、単語「トラクター」は通常「農業用トラクター」を意味する。また、他のタイプの乗り物を指して「トラクター」という言葉を使用することは、乗り物の取引（vehicle trade）では知られているが、一般的な言い方ではない。
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[編集] 農用トラクター
トラクターという言葉は「農業用トラクター」の意味で用いられるのが最も一般的である。農用トラクターは耕起、および同様の作業（ploughing, harrowing and similar tasks）のために農業機械またはトレーラーを引くために使用される。
古典的な農用トラクターは、シングルシートの下であってわずかに後ろにある軸についた二つの非常に大きな駆動輪（従って、座席とハンドルは中心にある）、ドライバーの前のエンジン、及び、エンジン・ルームの下の二つの操舵輪を備えた単純な屋根無しの乗り物である。この基本設計は長い間変わらなかった。しかし現在では農用トラクターのモデルの多くが密閉式キャブとなっている。
床には通常、4つのフット・ペダルがある。左側のペダルはクラッチである。クラッチペダルを踏むと、ギヤチェンジもしくは停止の際にトランスミッションを解放する。右側のペダルのうちの二つはブレーキである。左のブレーキペダルは左後方の車輪を止め、右のブレーキペダルは右後方の車輪を止める。二つの後車輪だけが駆動される場合、この独立した左/右旋回ブレーキは、トラクターの舵取りを増大する。これは通常、きつく曲がることが必要な場合に行われる。分離したブレーキペダルは、泥か柔軟なダート（soft dirt）の中でトラクションの損失により空転するタイヤを制御するためにも使用される。運転者は、トラクターを停止させるために両方のペダルをともに踏む。補助前輪駆動（additional front-wheel drive）を備えたトラクターについては、この操作は、道速度で移動する場合にトラクターを止めるのを支援するために四輪がロックする差動装置（locking differential）をしばしば取る。
最も右側にあるペダルは、スロットルである。自動車のものと異なり、それも手で扱うレバー（「手動スロットル」）から操作することができる。これは、野外作業中に一定の速度を保つのを補助する。さらに、それは、シャフトまたはベルトによって道具を操作している、静止しているトラクターのために常時動力を提供するのを補助する。足スロットルは、運転者にロードワーク用のトラクターの速度に対するより自動車状のコントロールを与える。英国では道路を走行する場合、エンジン・スピードをコントロールするためにフット・ペダルを使用することが義務付けられている。
ほとんどの農用トラクターはマニュアルトランスミッションを使用する。それらは、時速約25マイル(約40km/h)まで出すギヤを持っている。より古いトラクターは、一般に運転者が変速操作をするためにクラッチペダルを踏まなければならない（ギヤーケース中の直（すぐ）歯のギヤーの制限）。しかし、現代のトラクターの多くが、無段変速機のような技術の導入により、この必要が無くなった。これは、運転者にスロットルが単独で提供することができたより動作速度に対するより容易なコントロールを与える。
トラクターで行なわれるほとんどの操作には低速度が要求される。低速度は、農業者に野外作業のようなある状況のもとで、より大きな程度のコントロールを与えるのを支援する。しかし、公道上を移動する場合、低速度が問題を引き起ここすことがある。トラクターはしばしば、他の道路使用者を遅らせたり集めたりする長い車列や渋滞を引き起こすことがある。状況を緩和するために、路上で「農用トラクター禁止」を意味する道路標識を使用する国もある（オランダなど）。現代のトラクターは、JCB「Fastrac」のように、時速約50マイル(約80km/h)以上で走行できるものもある（are now capable of much more tolerable road speeds of around 50mph）。
現代の農用トラクターはサイズで、18～500馬力（15～400キロワット）まで分布する。 トラクターは、一般に、二輪駆動、前車輪アシストを備えた二輪駆動あるいは四輪駆動（関節の操舵（articulated steering）を備えた）として分類することができる。 古典的スタイルの変種は小型の「トラクター式芝刈り機」、それらのより有能でごつごつと構築されたいとこ（ruggedly constructed cousins）「ガーデントラクター」（それは10～25馬力に分布する傾向があり、より小さな農作業や草を刈ること、また造園に使用される）を含む。 サイズ（特に現代のトラクターについて）およびより遅い速度は、運転手が路上のトラクターに遭遇する場合に警告を使用するように促される理由である。
現在のトラクターは、トラクターが反転する場合に、運転者が衝撃されるのを防ぐためにロール・オーバー保護システム（ROPS・ロプス）を持っている。これは、戸外のトラクターにおいて特に重要である。戸外のトラクターでは、オペレーターの弁座上に伸びる鋼ビームがROPSとなる。運転室を備えたトラクターについては、運転室のフレームの一部がROPSとなる。 ROPSが必要な前に、トラクターが農業者の上に反転したとき、多くの農業者（farmer）が死んだ。 列収穫トラクターは、ROPS以前には、一定間隔で接近して配置され地面に向けて内側に向いた二つの前車輪（the two front wheels spaced close together and pointed inward toward the ground）を備えた「三輪車」設計のために特に危険だった。 多くの農業者が険しい傾斜に沿ってトラクターを操作する間に転覆によって死んだ。 ROPSは、1960年代にニュージーランドで立法によって最初に要求された。
PTOシャフト
（黄色の部分）
[編集] PTO（パワーテイクオフ）
トラクターはベーラ（baler）あるいはモーア（mower）のような作業機にエンジンの動力を転送する手段を持っている。日本においては、農業の中心は稲作であるため、ロータリーと呼ばれる回転軸に耕運用の爪を多数、備え付けた物が主流である。ロータリーの利点として、耕運後の土の状態が平らになり、代掻きなどの作業が行いやすいという点が上げられる。また、日本においては畑作でもロータリーが広く使われており、世界でも珍しい状態となっている。
PTOには、シャフトやベルトで伝達する機械式、とポンプと耐圧ホースを用いる油圧式がある。 初期のトラクターは、プーリーとベルトを使用し、固定機器に動力を供給するのみであったが、すぐに、走行中に自車及びトレーラーに動力を供給できるように改良された。
さらに、大型トラクターでは、PTO発電機により、電力を供給できる物もある。
[編集] 牽引装置
農機具は、ドローバー（引っ張り棒 drawbar）、あるいは三点ヒッチ（three-point hitch）によってトラクターの後部へ付けることができる。 三点ヒッチはハリー・ファーガソンによって発明され、1960年代以来標準である。 三点ヒッチに付けられた機器は、操縦ハンドルで油圧で上げるか下げることができる。 三点ヒッチに付けられた機器は、通常トラクターに完全に支持される。
海外においては、農業用トラクタは農場外でも使用されることがあり、ガーデニングトラクタと呼ばれる。例えば大学や公共の広い敷地を持った公園の整備などに使用される。また、広い庭を持つ人が個人で所有し、日曜日に庭の手入れに使用することもある。 一般的に農業で使用されるトラクタとは異なり、主に芝刈りに使用される。また、様々な作業を取り付ける事で雪かき、整地、木を植えるための穴を掘るなどの様々な用途に使用される。
[編集] スチーム・トラクター（Steam tractors）
1800年代から1900年代初期にかけて機械化された最初の農機具はスチーム・トラクターであり、爆発や操縦者がベルトに巻き込まれたりする可能性があるなど安全なものではなかった。
[編集] 土木工事用トラクター
トラクターの耐久性とエンジン出力は、土木工事に非常にふさわしいものである。 トラクターにはドーザーブレード、バケット、バックホー、リッパーなどのアタッチメントを取り付けることができる。 一般的に、トラクターの前面に取り付けられるアタッチメントはブレードやバケットである。 これらのアタッチメントが付けられた、トラクターは建設機械と呼ばれる。
ブルドーザーは、前部にブレード、後部にウインチが取り付けられた履帯（無限軌道）式のトラクターである。 ブルドーザーの主な作業は物を押したり牽引したりすることであるため、高出力でしっかりと地面を抑えることができるトラクターである。
ブルドーザーは時間の流れとともに、本来のブルドーザーから新しい作業をこなすことができるよう改良が加えられていった。 一例として、土砂や岩などをすくい上げてトラックに積み込むことができるよう、ドーザーブレードを取り外して大容積のバケットおよび油圧アームに置き換えたローダートラクターがある。
土木工事用トラクタのなかで、足回りにタイヤを用いているものをホイール型トラクタといい、ホイールローダー、ホイールドーザー、バックホウローダーなどがある。 ホイールローダーは通常、バケットと呼ばれる土砂や岩を持ち上げるための容器のついた油圧駆動の腕を有する。それ以外のアタッチメントとして、パレットフォークやグラップルが有る。 ホイールローダーの大半はアーティキュレート構造と呼ばれる、中折れ式の構造で作られており、車体の中間部分を油圧で折り曲げることで操舵をする。
建設機械に対する要求として、より狭く、限られた範囲で作業可能にすることがあげられる。 公式にはスキッドステアローダーと呼ばれ、もともとの製造者にちなんでBobcat（ヤマネコ）と呼ばれる小さな車輪の付いたローダーがある。 スキッドステアローダーは、トラクタタイプの建設機械の中で最も小さいクラスであり、小規模な土木工事や畜産分野などで使用されている。
[編集] バックホウローダ
古典的な農業用トラクターの一般的なバリエーションが、ローダ・バックホウである（バックホウローダとも呼ばれる）。 その名のとおり、車体前部にローダが、後部にバックホウが取り付けられている。 ローダとバックホウが永久に取り付けられる場合には、トラクターと呼ばれることはほとんどなく、一般的に牽引や動力供給を行うこともない。 バックホウが取り付けられる場合、通常、バックホウを制御できるように座席が後方に回転するようになっている。 取り外しが可能なバックホウは、たいていアタッチメント上に個別の座席を持っている。
バックホウローダは非常に一般的で、建設、小規模な解体、ちょっとした建築資材の輸送、建築機械への動力供給、掘削、アスファルトや舗装道路の解体など、様々な作業に使用することができる。 バケットのなかには、より速く効率的に積載物を空にすることができるように、底が開閉式になっているものがある。 底が開閉式になっているバケットは、土砂をならしたり削り取ったりすることにも使用される。このため、マルチパーパス（多目的）バケットなどと呼ばれる。 前部の装置は着脱可能であったり、永久に取り付けられたりする。 しばしば、バケットは他の装置あるいはツールと交換することが可能である。
比較的小さな筐体と正確なコントロールは、都市開発プロジェクトにおいて、バックホウローダを非常に有用で一般的なものにしている。 これら柔軟性とコンパクトサイズを併せ持つバックホウローダは、欧米の都市部で最も人気のある建設機械の一つである。
[編集] 他のタイプのトラクター
トラクターは（イギリスよりもアメリカでは）さらに次のものをあらわす：
- ロード・トラクター
- 大きなエンジンといくつかの車軸を備えた丈夫な乗り物。トレーラーヘッドといわれることもある。このトラクターは、貨物輸送のための長いトレーラーを、長距離にわたって牽引するように設計されている（牽引自動車およびセミトレーラを参照）。イギリスでは、しばしば"artic cab"と呼ばれる。
- 機関車トラクター（エンジン）
- 機械、発電装置、操縦部、各種装置によって構成される鉄道車両の牽引部分。
- 大砲トラクター (artillery tractors)
- 様々な重量の砲を牽引するための特殊車両。
[編集] 航空機、宇宙技術との関係
航空機では、機体や翼の前にプロペラを持つ構成をトラクター構成 (tractor configuration) と呼ぶ。 反対に、後部にプロペラがある場合にはプッシャー構成 (pusher configuration) と呼ばれる。
NASAなどの宇宙関係機関は、ロケットやスペースシャトルのような打ち上げ式の機体を格納庫から発射台まで（まれに、発射台から格納庫まで）運ぶために非常に大きなトラクターを使用している。
宇宙技術は、GPS装置を農業分野にもたらし、トラクターに強力なオンボードコンピュータが補助装置として組み込まれている。 宇宙開発競争は、その副次効果として、企業規模の大規模農場において無人のトラクターが有人のトラクターと協調して耕作を行うような自動化を容易にした。
[編集] コンピュータ用語
コンピュータ用語におけるトラクターは、プリンターの紙送りを行う部分を指す。 これは通常、紙の両端に空けられているパンチ穴とかみ合うギア、あるいは表面にゴムなど摩擦力の高い素材を用いたベルトやホイールの形状をしている。印字ヘッドに紙を押し込むプッシュトラクターと、印刷した後の部分を引き出すプルトラクターがある。通常はプッシュトラクターが標準搭載されており、紙送り精度を高めるためのオプション品としてプルトラクターが用意されている。
[編集] 関連記事
[編集] 外部リンク
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