ハンガー (航空)
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ハンガー(Hangar)とは航空機を風雨や砂塵などから守り、中で整備や補給、待機などを行う格納施設のこと。飛行場などの陸上にあるものだけでなく、航空母艦や航空機搭載艦艇にある航空機格納庫もハンガーと呼ばれる。ハンガーの語源は「家畜小屋」を意味するフランス北部地方の方言である。
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[編集] 様々なハンガー
敵の空襲に耐えうるよう設計された頑丈な軍事用ハンガーを特に掩体もしくは掩体壕という。また、スクランブルに備えた戦闘機が滑走路脇で待機するハンガーのことをアラートハンガーという。
特殊なハンガーの一つとして、ステルス爆撃機B-2専用ハンガーがある。このハンガーはステルス性維持に欠かせない機体整備を行うためのもので、極めて高度な空調管理が行われている。かつてはB-2用のハンガーがミズーリ州ホワイトマン空軍基地にしかなく、他の航空基地にB-2を配備することができなかった。1998年に簡易式の可動ハンガーが開発されて以降、ようやく海外の基地からも展開できるようになった。
JAS39グリペンのようなSTOL機は高速道路を利用した離着陸が可能であるため、山中のシェルター状ハンガーに格納されている機体もある。また、有事の際は高速道路のトンネルを即席のハンガーとして用いることができる。
[編集] 創生期のハンガー
19世紀後半から20世紀前半にかけて、スウェーデン人の発明家カール・ナイバーグは自作の飛行機フルガン(未飛行)を格納するために小屋を使用した。
1902年、ライト兄弟は所有するグライダーの修理・保存のため、ノースカロライナ州に木造格納庫を建設した。オハイオ州でライトフライヤーの設計・組み立てを終えて2人が戻ってくるとそのハンガーは壊れており、使い物にならなかったという話が残っている。
1909年に飛行機ブレリオXIに乗ってのイギリス海峡横断を実現したルイ・ブレリオは1920年代前半、搭乗する単葉機を北フランスにある農場に不時着させ、機体を家畜小屋に突っ込ませた。帰郷したブレリオは当時の家畜小屋製造会社REIDsteelに自家用ハンガーを電話で3つ注文し、これがハンガーの語源となった。それ以来、REIDsteel社は今日に至るまで80年以上ハンガーを作り続けている。
[編集] 飛行船のハンガー
概して、飛行船用のハンガーは航空機用のハンガーより大きいものが多い。これは、機体の高さが航空機と比べて高いことによるものである。初期の飛行船は浮上するために水素を用いていたため、飛行船用のハンガーは可燃性ガスの爆発を防ぐために漏電等で火花が発生しないような配慮がなされていた。また、万一の事故の際、ハンガー内で次々に飛行船が誘爆しないよう、水素を使用した飛行船用のハンガーは1機か2機分の大きさのものがほとんどである。
第一次世界大戦期、ドイツはツェッペリンを用いてパリとロンドンを爆撃し、イギリスは軟式飛行船を用いて沿岸を警戒するなど、軍事的な用途に飛行船が使われるようになった。次々に発展する航空技術にあわせてハンガーは大型化などの進化を遂げていき、ツェッペリンを格納する水上ハンガーなども製作された。
1930年代に入り飛行船旅行の黄金時代が訪れると、世界中に飛行船係留用の支柱とハンガーが造られた。これらの中で最大のものはアメリカ海軍の飛行船「マコン」と「アクロン」を組み立てるためにグッドイヤー社が建造したもので、全長358メートル、高さ61メートルもある。
第二次世界大戦期、アメリカ海軍は沿岸防衛計画のもと、全米各地に10あまりの飛行船基地を建設した。このうちのいくつかは現存している。オレゴン州ティラムークにあり現在はティラムーク航空博物館となっているハンガーは、独立の木造建築としては世界最大規模のものである。