ポリ塩化ビフェニル
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ポリ塩化ビフェニル(ポリえんかビフェニル、polychlorinated biphenyl)またはポリクロロビフェニル (polychlorobiphenyl) は、ビフェニルの水素原子が塩素原子で置換された化合物の総称で、一般式 C12HnCl(10-n) (0≦n≦9) で表される。置換塩素の数や位置によって、計算上209種の異性体が存在する。略してPCB(ピーシービー)とも呼ばれる。
熱に対して安定で、電気絶縁性が高く、耐薬品性に優れている。加熱や冷却用熱媒体、変圧器やコンデンサといった電気機器の絶縁油、可塑剤、塗料、ノンカーボン紙の溶剤など、非常に幅広い分野に用いられた。
一方、生体に対する毒性が高く、脂肪組織に蓄積しやすい。発ガン性があり、また皮膚障害、内臓障害、ホルモン異常を引き起こすことが分かっている。
PCBの異性体の中でも特に、コプラナーPCB (Co-PCB) と呼ばれる平面状の構造をとるものは、一般のPCBに比べて毒性が高く、ダイオキシン類にも分類されている。これには29種類の異性体が存在する(例えば、2および2'の位置に塩素の置換が起こると、塩素原子同士が重なり合ってしまうために平面状分子ではなくなる)。
[編集] 歴史
1881年にドイツで初めて合成され、1929年に米国で工業生産が始まった。日本では、1954年に製造が始まったが、1968年に起こった「カネミ油症事件」をきっかけに、1972年の生産・使用の中止等の行政指導を経て、1974年に製造および輸入が原則禁止された。
しかしながら、以前に作られたものの対策はとられておらず、2000年ころから、世界でPCBを含む電化製品、特に老朽化した蛍光灯の安定器からPCBを含む液が漏れる事故が相次ぎ、社会問題となった。
[編集] 廃棄物としてのPCB
製造・輸入は禁止されたものの、当時はまだPCBの適切な処分技術が無かった。そのため、PCBを含有する製品は使用終了後も「関係官庁に認定された廃却方法の具体的対策が決定するまで」使用者が保管することが義務付けられた。しかし、日本ではその後約30年にわたる長い間、PCBを含む廃棄物の具体的な処理基準や処理施設は公に定められないままであった。
- 2001年5月、PCBを2028年までに全廃することを含む国際条約であるPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)が調印された(POPsは persistent organic pollutants の略語で、残留性有機汚染物質を指す)。
- 2001年6月、国はPCB処理特別措置法を制定し、併せて環境事業団法を改正して、2016年までに処理する制度を作った。
PCBの処理方法には以下のようなものがある。
- PCBそのものの処理
- PCBによって汚染されたものの処理(PCBが染み込んだ布など)