リングワールドふたたび
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『リングワールドふたたび』(The Ringworld Engineers) は、1980年にラリー・ニーヴンが発表したSF小説。前作『リングワールド』(Ringworld) の続編である。 日本語訳版は小隅黎が翻訳、早川書房より出版された。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
ニーヴンはこの作品について『リングワールド』のファンの反響のたまものだと述べている。その理由としては前作が非常に好評であったこと、また前作で論じられないままとなっていた数々の工学 上の問題点を明確にしようとするファンたちの動きがあったことがあげられる。 作品中では、リングワールド上で進化した様々な亜人類(ヒューマノイド)の種族たちについてより深く描いている。
ISBN 0345334302 (原版) ISBN 415010767X (早川書房版)
[編集] あらすじ
ノウンスペースに帰還して23年後、惑星キャニヨンに隠れ住んでいたルイス・ウーはふたたびパペッティア人に誘拐される。パペッティア人の元首「至後者(ハインドモースト)」はかつてネサスやルイスたちをリングワールドの調査に送り込んだ張本人だったが、政変で失脚し、再起のため今度はみずからリングワールドへ向かおうとしていたのだ。クジン人のハミイー(新型ハイパードライヴを入手した功績で正式な名を与えられた、かつての「獣への話し手(スピーカー・トゥ・アニマルズ)」)も「至後者」に嵌められて同行せざるを得なくなる。
ふたたび訪れたリングワールドは回転軸がずれ始め、中心にあった恒星と接触するまで1年余りという危機的状況にあった。リングワールドを探検し、多くの種族と出会ったルイス・ウーは彼らを救おうと決意する。そのためにはリングワールドのどこかにある「補修センター」を見つけなければならなかった……
[編集] リングワールドの住人
現在のリングワールドの住人は大半が地球人同様、プロテクターのいないパク人の子孫であるが、長い年月の間に様々な人種(種族)に進化している。第一作『リングワールド』に登場した住人はわずかだったが、第二作以降は多数の種族・住人が登場する。総人口は約30兆人と推定される。
たいていの種族は「リシャスラ(別の種族との性交)」を行えるが、それによって妊娠することはない。リシャスラは人口調節の手段として、あるいは種族間の信頼関係を確認するための儀式として広まっている。
「都市建造者(シティ・ビルダー)」はプロテクターが姿を消した後のリングワールドで最も高度な文明を築いた種族だと思われる。彼らは「スクライス」との反発力によって浮かぶ建物に住んでいたが、千年あまり前(地球暦で18世紀頃)に彼らが使っていた機械のほとんどが一斉に故障した「都市の墜落」によってその文明は崩壊した。生き残った者の子孫は墜落しなかった建物に住み、原始的な種族に対して神として振る舞ったり、そこそこ文明が復興してきた地域では知識を売ったりして暮らしている。
『ふたたび』でルイスたちが最初に出会った牧夫たち(正式名称は不明)は小柄で皮膚が赤く、歯は尖っている。「氏族(トライブ)」ごとに何種類かの動物を飼っており、時々お互いの動物またはその肉を交換する。リングワールドには別の「牧畜者(ハーダー)」と呼ばれる種族もいるらしいが、そちらは名前しか登場しない。
「草食人種(グラス・ピープル)」は背が高く気が荒い。植物しか食べないが、食料が足りなくなると他の草食動物を殺して自分たちの食い扶持を確保しようとするため、牧畜をする種族たちとの関係は良くない。
「海の人種(シー・ピープル)」または「両棲人」は首が太く、なで肩であごがないなど、流線形の体をしている。彼らは水中に住み、魚を食べる。また水中でしか行為に及べないため、リシャスラできる相手が少ない。
「吸血鬼(ヴァンパイア)」は皮膚が白く、銀髪で美形だが、知能は低い。彼らは強烈なフェロモンを発して他種族にリシャスラを強要し、その最中に相手の首筋から血を吸って殺す。多くの種族は彼らを恐れ、根絶やしにしようとしているが、彼らのフェロモンを香水や媚薬として利用する者もいる。
「機械人種(マシン・ピープル)」は体格が良く、女性でも髭を生やしている。彼らは広大な帝国を統治しているが、治安維持のための軍隊や種族間の交易以外は支配下にある種族の自治に任せている。また帝国の全土に道路網を巡らせ、植物から作ったアルコールを燃料とする自動車を走らせている。花の蜜に「燃料」を混ぜたものは飲み物にもなる。
「走者(ランナー)」については『ふたたび』ではわずかしか記述されていないが、長距離を走るのに適した体つきをしているらしい(大きな肺、長い足)。
「夜行人種(ナイト・ピープル)」または屍肉食い(グール)は全身に毛が生えており、歯と耳が尖っていて、強い体臭を発する。彼らは他の種族が出す廃棄物から食料を得ている。死体の処理も彼らの仕事とされており、葬儀を執り行うために様々な種族の言葉を使いこなせる。また彼らは光を利用して遠隔地の仲間と通信することによって、そこで何が起きているかを知ることができる。
「夜の狩人(ナイト・ハンター)」は目が大きく、指には鉤爪、口には牙がある。また、嗅覚も優れている。彼らの中には都市で警備員として働いている者もいる。
「ぶらさがり人種(ハンギング・ピープル)」は樹上生活に適応した種族で、背が低く、腕が長く、足の指も手と同じくらい発達している。狭い隙間にも入り込めるため、「都市建造者」に修理屋として仕えている者もいる。
「こぼれ山人種(スピル・マウンテン・ピープル)」はリングワールドの側壁に沿って立ち並ぶ「こぼれ山(スピル・マウンテン)」の空気の薄い斜面やその内部に住んでいる。隣の「こぼれ山」との間を行き来する時は気球を使うが、かつてはもっと高度な飛行機械があったらしい。
「大海洋(グレート・オーシャン)」の「地図」には元になった惑星から連れて来られた生物たちの子孫が住んでいる。そのうちクジンの「地図」の住人は数十万kmの大航海を経て地球の「地図」に到達し、そこを征服したという。
このような人類(に似た生物)から進化した種族を描いた作品としては、ドゥーガル・ディクソンの『マンアフターマン』も有名である。