交通部
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交通部(こうつうぶ)とは、警視庁及び道府県警全てにおいて設置される警察の交通部門を管轄する内部部署。内部格付けとしては必置部署とされている。
警察署には交通部を現場最前線にて直接執行する為に「交通課」が設置されており、交通部の管轄する交通警察活動をもっとも市民に身近な位置で執行する。
因みに、交通警察活動とは必ずしも交通法関連のみに対する警察力執行を意味するものではなく、交通機動力を生かした犯罪捜査、警戒活動、防犯活動など刑事警察や地域警察と同様の業務も含まれる。
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[編集] 業務範囲
世間では市民の理解があまりにも乏しすぎる為に誤解や誤認識が多いが、根本的に交通部門は交通事故処理などの「事故」のみを扱う部門ではない。
轢き逃げ事件や自動車窃盗、車上狙いなどの「事件」も交通部門が扱っている。これらの事件は凶悪事件、窃盗事件、強行犯事件としても定義されるので刑事部門も共同で取り扱う。轢き逃げ事件の場合は凶悪事件として原則的に刑事部、交通部の合同捜査となる。
この為、刑事部、刑事課との合同業務も多く執り行われている。さらに、交通部や交通課の中にも捜査を担当する部署があり、そこに所属する警察官は通常は私服常勤である。
つまり、私服警察官(いわゆる刑事)は交通部や交通課にも勤務しているということであり、刑事ドラマなどで刑事課にしか私服警察官が所属していないというのはデタラメである。
[編集] 業務内容
地域犯罪、特に市街地における犯罪の防犯、取締り、警戒活動、交通法関連の違反者取締り、それに伴う身柄の確保及び罰金の徴収、それに伴う事情聴取、職務質問、被疑者の身柄の連行。
これらの他に捜査活動も行う。対象犯罪は主に交通法違反事件であるが、轢き逃げや車上狙いなどの凶悪犯や強行犯、粗暴犯なども扱うので所轄では刑事課の強行犯係との合同捜査を行うのが通例である。
世間では、交通課の仕事といえば「交通法違反者からの罰金徴収」しか認知されていないので交通課員は罰金取りしかしないように思っている市民も多いが、実際にはそのような業務は交通部・交通課の業務のほんの一部分に過ぎない。
他にパトカー、ミニパト、白バイなどの車両機動力を生かして市街地のパトロール活動も行っており、地域警察としての役割も併せて持っている。
また、しばしば警察主催のイベントに駆り出されることもあり、交通指導講習会や交通安全教室を開いて市民に交通指導を直接行う。
さらに、運転免許証更新手続も所轄の交通課が管轄しており、主に署の受付け口か課の受付カウンターで大々的に受付けている。
これらの他に、パトロール中に不審者を目撃した場合などは、それが例え交通法に関連しない犯罪者であっても職務質問したり、身柄確保を行ったりすることもある。
注)相手が刑事犯など交通犯罪者でない場合、交通部門所属の警察官は扱えないということは無い。これは日本の警察官は部門制で区切られて採用される形態を採っていない為で、交通課だろうが地域課だろうが警察官が行使しうる権限に差異は無く、刑事犯を交通課員が取り押さえても法的にも公的にも警察活動上も何の問題もない。
交通課員が外勤中に不審者や犯罪行為を発見した場合は、相手が刑事犯だからいちいち刑事課に連絡して刑事課員が到着するまで待機するようなことは無く、そのような規定も無い。そのようなことをしていたら被疑者が逃走する恐れがあるので、交通課員だろうと地域課員だろうととりあえず現行犯逮捕を行わなければず、この場合の逮捕も何の問題も無く正当行為である。
刑事課員も逮捕で手錠をはめる機会は多いが、地域課や交通課もパトロール活動を常習的に行っているのでパトロール中に不審者や犯罪を目撃する機会は多く、空き巣や強盗等刑事犯に対応することも多い。
他に職務質問や市民への誘導・静止命令は別に刑事課員に限らず外勤中の警察官(刑事課員・交通課員・地域課員・生活安全課員・警備課員など)が全般的に行う日常業務なので刑事ドラマのように私服警察官しかやらないわけではない。
[編集] 組織概要
警察には組織犯罪対策部や総務部、所轄には会計課などの部署も存在するが、これらは必ずしも置かなければならないというわけではない。
組織犯罪対策部は全国的に置かれているわけではなく、各都道府県条例による任意設置である。
また会計課というのは警察署にて絶対に置かなければならない課(必置課)ではなく、置かない場合は警務課に業務を吸収させても良いことになっている。
しかし、交通部や交通課は警察法にて必置課とされており、歴史的経緯上からも全国全ての警察署にくまなく設置されている部署である。この点は刑事部、刑事課も同じ。
その為、全国何処の警察署にいっても必ず交通課が存在し、警視庁、道府県警には全て交通部が存在する。
これは交通部門が警察組織に置いて未設置に出来ない重要セクションである為であり、刑事警察や公安警察と並んで警察では非常に重要な部署として扱われている。
[編集] 所属警察官
交通法に精通している警察官や交通部や交通課を希望する警察官が配属されるが、全体的には新任警察官が配属されることのほうが多い。
道路交通法とは警察官になって警察学校に入校した際に最低限マスターしなければならない必修教科であり、拳銃操法や警杖操法と同じように道路交通法を満足に理解していなければ警察官として不適格とされているので、交通課に所属していない警察官が交通法に疎いということは全く無い。
同様に刑法や刑事訴訟法も、警察官は警察学校在学中に一通り学習させられるので、刑事課員ではないから刑法に疎いということは全く無い。
管理職や指導巡査の場合は別だが、それ以外で配属される警察官は警察学校を出た後に初任配属で配属されることが多い。
これは警察官は希望部署への配属は認められるが、一番最初はなるべく外勤(地域現場に近い場所で警察活動を執行すること)が必要であると考えられている為で、初任時は出来るだけ現場に近い部署として、警察署の地域課や交通課が選ばれる。
初任警察官は警察学校を出たとはいえ警察実務においてはまだまだ新人なので、外勤と内勤両方を経験しなければならず、外勤は交通課や地域課や交番勤務、内勤の際は刑事課の内勤として配属される。
刑事課は刑法や刑事警察といった警察活動の大半を占める部署なので警察官として関わる業務として必須なものであり、交通課や地域課と同様、新任警察官が内勤として多く配属されている。
この為、年齢的には18歳~20代前半の新任警察官が多い。
配属に関しては警察実務を経験させながら新人警察官への育成や法律教養なども養う意図があり、警察官への教育指導も業務と併せて行われる。
この為、新任警察官が配属された際は、課内の巡査長や巡査部長など現場指導クラスが新属警察官に対して指導や教育を行いながら警察実務にあたらせる。
特にパトロールや被疑者対応、犯罪対応、身柄確保対応などの外勤業務の際は新人警察官数名に対して1~3名の指導役警察官が同行し不手際がないようフォローすることが多い。
最近は轢き逃げや運転中の携帯電話使用における交通事故や交通事件も多く発生しており、都内交通事件事故認知件数は年間で10万件を超えるほどの量になっており、深刻な社会問題となっている。
この為、交通警察力強化が強く求められており、近年では警察官には一度は交通課を経験させておくような人事措置も行われている。