僭称
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僭称(せんしょう)とは、身分制度のある社会において、本人の身分を越えた地位、称号を名乗ることをいう。
本人自ら「私は○○を僭称している」ということはまずなく、他者を評価するときに「○○を名乗るべき身分にない者が勝手に名乗っている」という批判的な意味で用いるのが普通である。また身分の存在を前提とするため、「皇帝を僭称する」や「王を僭称する」という用法は正しいが、その地位が身分に基づかない「大統領を僭称する」や「社長を僭称する」という用法は正しくない。この場合は単に「偽称」という。
[編集] 君主を僭称したとされている者
- 袁術
- 慕容詳
- 慕容麟
- 蕭正徳
- ヴィーラ・パーンディヤ (パーンディヤ朝を参照)
- スンダラ・パーンディヤ (同上)
- ジェームズ・フランシス・エドワード・ステュアート
- チャールズ・エドワード・ステュアート
[編集] 僭称地名
「僭称」が拡張された用法として、地方自治体などが自己の領域よりも広い範囲を表す地名(広域地名)をそのまま狭い範囲の地名として用いている地名(例:飛騨国に対する飛騨市)、あるいは地名の由来に該当しない地域が外の地域の地名を名乗っている地名が、「僭称地名」(せんしょうちめい)と批判される事がある。
しかし、「僭称」は個々の固有名詞ではなく、名称(地名では、郡、令制国、市、五畿七道など)に対するものであること、また地名内の個々の固有名詞には本来身分の差は存在しないことの2点から、これは本来の意味を外れた用法であるといえる。
「僭称地名だ」という批判が上がっている代表的な名称・地域としては、以下の名称が有る。
- さいたま市
- (→背景については「さいたま市#名称問題」参照。)
- 「さいたま市」は、2001年5月に大宮市と浦和市、与野市の合併で発足した市であるが、この3市は埼玉郡ではなく、足立郡に属している。
- このため、「埼玉古墳群」を擁し、「埼玉」の発祥地となっている行田市から、「埼玉郡に属していない市町村の合併で発足した市が、『埼玉』『さいたま』を称する事は僭称だ」という批判が起こった。
- 本来、「東海地方」とは、東海道に沿った太平洋側を指す名称である。従って、中山道が通る岐阜県は、厳密には「東海地方」ではなく、「中央高地」の一部である。
- このため、中京圏を指して「東海3県」と呼ぶ名古屋市のメディアなどに対して、特に静岡県から、「『中京圏』を称したらどうなのか」「『東海』とは『名古屋圏』ではない」という批判がある。
尚、旧国名・郡名の名前が付く自治体の名称については、広域地名#広域地名を採用した主な自治体一覧を参照すること。