光学迷彩
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光学迷彩(こうがくめいさい Optical Camouflage)は、SF作品等に登場する技術。科学的な何らかの手段により視覚的(光学的)に対象を透明化する技術で、その原理にはいくつかのバリエーションがある。
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[編集] 「光学迷彩」という呼称とそのルーツについて
自身の衣類や機体等の色や模様を、背景に合わせリアルタイムに変更することにより視覚的に偽装する、または光を透過・偏光させ視覚できなくするといった概念自体は洋の東西を問わず古くから存在しており、その例として前者は動物のカメレオンやイカ等の擬態、後者は民話や伝承に残る「天狗の隠れ蓑」等があげられる。
また比較的近年の作品に登場するものとして、フィリップ・K・ディックのSF作品に登場するジャンプスーツや、ウィリアム・ギブスンの作品中に登場する擬態ポリカーボン等や、映画『プレデター』で異星人が使用するクローキング技術、また戦艦サイズではスタートレックに登場する宇宙戦艦用の遮蔽装置や、エディ・マーフィー主演映画「アイスパイ」でテロリストとの取引に利用される戦闘機に施した視覚的ステルス等の例があげられる。他にも、ドラえもんが取り出す道具の中にも幾つかの(しかも全く別個の用途とそれに見合った仕掛けを持つ)アイテムとして登場している。
これらの「隠れ蓑」的技術に対し、日本では長らく定まった呼称が存在していなかった(英語ではcamouflage や cloaking と言われる)が、士郎正宗の『攻殻機動隊』で「熱光学迷彩」と呼ばれる特殊な機能を持つスーツが登場。日本国内(特に漫画・アニメ・軍事オタクの間)では、映画化以降本作品がメジャー化したことによってこの呼称が定着した。ちなみに「熱」と付くのは赤外線領域まで背景と同化することによって、暗視装置・サーモグラフィー等にも感知させないという意味合いがある。
[編集] 光学迷彩のアイデア
- カメレオンのように周囲の色・模様に応じて体表の色彩を変化させる。これはセンサーとコンピューターを併用することで可能性としては現実的である。
- 光を完全に透過させる。(過去のSF作品などに登場するガジェットでは、特殊な素材や構造を持つ繊維などによって、使用者の周辺の光を透過させるといった説明が行われる例などがある。またいわゆる透明人間などは、これの究極的な姿と言える。)
- 空間歪曲などによって光自体の進路を変えてしまう。(空間そのものを歪める必要があるので、実用の際は巨大なエネルギーを必要とし、一番現実性が低い方法)
[編集] 光学的迷彩技術の研究
「光学迷彩」という用語そのものは本来、作品中に登場する架空の技術を表すものだが、現実世界においても東京大学などにおいて同様の技術の研究が行われている。アメリカ合衆国軍も、光学的な迷彩技術の研究をマサチューセッツ工科大学に依頼している。
光学的な迷彩の対象となる物体に、再帰性反射材(微細なガラスビーズ等によって、光が入射した方向に反射する素材)を塗布し、物体の背後の映像を外部より投影することで、ある程度の実現を見ている。
光学迷彩は まだ難しい技術だが、「手術中の医師の手袋に 患部を投影し、患部が いつでも目視できるようにする」といった 限定的な用途での研究は かなり進んでいる。
米・デューク大学などの米英のグループは、特殊な金属繊維を使って光を反射せず、後方へ迂回させるという研究を行っている。これが実現すれば理論上はあたかも物体が透明になったかのように見えるという。2006年10月にはマイクロ波を用いた実験に成功。より波長の短い可視光線でこれが可能となれば視覚的ステルス、すなわち光学迷彩が可能となるため、研究者は成功への第一歩であるとしている。
[編集] 光学迷彩が登場する作品
[編集] 科学的手法を用いた光学的な迷彩技術
- 007 ダイ・アナザー・デイ - ボンドカー
- アイスパイ - 視覚的ステルス
- ウルトラセブン - クール星人の宇宙船
- ウルトラマンネクサス - オプチカムフラージュ
- エースコンバットX - プリズム結晶化セラミック製偏向レンズ(敵ユニットとして出現するグレイプニル、フェンリアのみ使用)
- 機動戦士ガンダムSEED - ミラージュコロイド
- 暗闇のスキャナー - ジャンプスーツ
- ケロロ軍曹 - アンチバリア
- 攻殻機動隊 - 京レ製全天候型2902(式)熱光学迷彩「隠れ蓑」及び東セラ製3302(式)熱光学迷彩
- スターゲイト アトランティス - ステルス装置(パドル・ジャンパーに標準装備)
- スタートレック - 遮蔽装置
- ゾイドシリーズ - ホロテック(ヘルキャット、ライガーゼロイクス等)
- 戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー - エレクトロ・ディスラプター
- 天空のエスカフローネ - ステルスマント
- ドラえもん- 透明マント、かくれん棒、とうめいペンキ、透明人間目薬、透明ハンド、透明ボディーガードプラモなど。
- ※石ころぼうし、モーテン星については第三者に意識されなくなるという点で視覚的に消えるわけではない。
- トランスフォーマー ギャラクシーフォース - ステルスバリア(漫画版ではステルスフィールド)
- トランスフォーマー バイナルテック - デュポン製機能性色素コーティング
- ニューロマンサー - 擬態ポリカーボン
- パーフェクトダーク - スパイクローク
- フルメタル・パニック! - ECS 不可視モード(Electromagnetic Camouflage System、電磁迷彩システム)
- プレデター
- ※光学迷彩であるとする説と、光そのものを重力波により曲げてしまうという、更に高度なハイテクとする説(光跡曲折説)がある。シリーズ3では公式HPには光学迷彩説を掲げているが、シリーズ2では作品中の登場人物(科学者)により光跡曲折説が説明されている。
- ポポロクロイス物語 - ガミガミローバーDURAN
- メタルギアソリッド - ステルス迷彩、オクトカム(タコ迷彩)
- 勇者王ガオガイガー - ホログラフィックカモフラージュ
- 勇者王ガオガイガーFINAL - ファントムカモフラージュ
- ラブひな - 光学迷彩
- 銀河鉄道物語 - 光学迷彩
- 蒼穹のファフナー - 偽装鏡面
[編集] その他の手法を用いた光学的な迷彩技術
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 同ページでは参考文献に『攻殻機動隊』を挙げている。
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