公安調査官
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公安調査官(こうあんちょうさかん)とは、公安調査庁(Public Security Intelligence Agency; PSIA)に所属する国家公務員(公安職)で、破壊活動防止法や無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律に基づいて,暴力主義的破壊活動を行う危険性のある団体について情報収集(諜報活動)し,調査の結果,規制の必要があると認められる場合には,団体の解散や取締り等を行うことを職務とする。
調査対象は、北朝鮮、中国、ロシア、国際テロ組織、オウム真理教、日本共産党、過激派(新左翼)、日本赤軍、右翼、カルトなど。
公安調査官は、法務省の外局である公安調査庁(本庁)、その地方支分部局である公安調査局と公安調査事務所などに配置されている。
1952年(昭和27年)7月の公安調査庁設置の際には、戦後、公職追放されていた陸軍中野学校、特高警察、旧軍特務機関の出身者が公安調査官として参画したとされる。
公安調査庁の平成17年度の定員は1,498人。国家公務員削減の流れに反し、平成16年度定員から36人増員されている。職員は、国家公務員I・II・III種試験から法務事務官として採用され、6か月(国家公務員I・II種試験)もしくは1年(III種)を経過後、公安調査官に補職する。採用自体は他省庁と変わるところはなく、官庁訪問や業務説明会も他省庁と同様に行われる。幹部以外の氏名は公表されない。
特高警察官の再来と非難されることがあるが、逮捕権はなく、出来るのは内通者を使って情報を流出させたり、破防法・団体規制法に基づく立ち入り調査など純粋な調査活動のみ。いわゆる“公安”とは、公安調査官と公安警察官、を指す言葉である。
身分証票として、枠の中に五三の桐(中央省庁紋章)と「公安調査官」の文字が金色で書かれた旧形式警察手帳風の黒い手帳を交付されている。
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[編集] 公安調査官の職位
公安調査官に階級はない。地方の出先機関である公安調査局と公安調査事務所の場合、局長・部長・課長など他官庁にも見られる役職・部署もあるが、いわゆる現場に相当する部署では専門官制(部門制)が採られており、配属により次のような職位(役職名)が与えられる。
[編集] 問題と展望
公安調査官は、活動の特殊性から、所属・職名(場合によっては名前など)を偽って様々な人物と接触したり、内偵などを行うことが多く、住民・関係者・人権擁護機関などから抗議を受けたり、危険に晒されることもある。しかし司法警察職員ではないので、拳銃等の火器の携帯は認められていない。
2001年(平成13年)1月の中央省庁再編に伴い、各都道府県にあった公安調査事務所が14か所にまで整理・統合されたものの、最近では国家公務員削減の流れにもかかわらず増加傾向にある。
職務内容に秘密が多く、表だって成果を披露出来ないため、公安調査庁は目立たない省庁であり、以前から“リストラ官庁”と揶揄され、内閣情報調査室との合体も取り沙汰されてきた。組織延命のため、マスコミに積極的な情報のリークを行ってきたとも噂されたが、近年、テロの脅威の増大、北朝鮮による日本人拉致問題の顕在化など社会情勢の変化により、公安調査官の活動がクローズアップされつつある。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 公安調査庁
- 平成17年「内外情勢の回顧と展望」(公安調査庁)