分子運動論
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分子運動論(ぶんしうんどうろん)は、気体分子の運動エネルギーについての論議。
19世紀半ばからマクスウェル、ボルツマンらによって研究され、分子の力学から理想気体の性質を説明するのに成功した。さらに熱力学を分子論的に説明する統計力学の基礎となった。
分子あたりの質量がmである単原子分子の気体の入った一辺Lの立方体においてx軸、y軸、z軸を考える。 ここである一分子の速さをとして、その速さのx成分を
とするとその分子の持つx成分の運動量は
となる。これが立方体の壁に1回弾性衝突したとすると分子が壁に与える力積は
となる。また十分な長さの時間tを取ったとき、tの間にこの分子が立方体の一つの面に衝突する回数は
となるからこの間に与える力積は
だから、力の大きさは
またここでy軸方向、z軸方向についても考える。y、z両軸についてもx軸方向と同様に考えられるから、と言える。よって
とおけるから、力の大きさは
ここで分子数を1つからN個にすると速さの平均をとって、力の大きさは
となる。立方体の一つの面に対する力の大きさがFだから、その壁にかかる圧力は
この立方体の体積VはL3より
(R:気体定数、T:絶対温度) アボガドロ定数をNAすると、
だから
これが気体分子の運動エネルギーとなり、
とおいて、このkをボルツマン定数と呼び、運動エネルギーは
となる。