十三番目のアリス
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『十三番目のアリス』(じゅうさんばんめのアリス)は、伏見つかさ/著、シコルスキー/イラストのライトノベル。元は著者のウェブサイトで公開されていたが、第12回電撃小説大賞に応募し3次選考まで残った作品。その後編集部の目に留まり電撃文庫より刊行された。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] ストーリー
名家の令嬢である九条院アリスは、クラスメイトで婚約者の鬼百合三月とのデートを楽しみ日々を謳歌していた。ずっと続くかと思われた穏やかな日常。しかし突如として現われた少女によってその日常は奪われてしまった。
アリスを『十三番目(サーティーンス)』と呼び、自らも『三番目(サード)』と名乗る少女、フェレス。抗うこともできずただ戦闘に巻き込まれていくアリスと三月だったが、そのなかでアリスは自らの中に眠る真の力について徐々に理解していくのだった。
[編集] 主な登場人物
- 九条院 アリス(くじょういん ありす)
- 日本有数の名家『九条院家』の一人娘。常に誇り高く高潔な理想の自分に近づけるよう心構えを胸に抱いている。母親譲りの金髪碧眼。ゴシックロリータの洋服を特に好む。3年前に瀕死の重症を負うも、『十三番目の(サーティーンス)スフィア』の自己治癒機能により一命を取り留めた。三月とは幼馴染かつ婚約者であり生涯の伴侶となることを喜んで受け入れているが、彼に対しては頼りなさを感じており、Sッ気全開で従者のように扱っている。
- フェレスの襲撃により『十三番目(サーティーンス)』として覚醒した。専用武装(カラミティ)は『ジャバウォック』と呼ばれる銃身444mmの自動拳銃。属性変異(バレルチェンジ)には、射線軸方向にあるものを全て蒸発させるエネルギーカノン『オメガブラスト』(最終形態:バレル『Ω』)がある。現在はその能力と共振反応(エコー)を抑えるためラミアの開発したチョーカーをつけている。
- 鬼百合 三月(おにゆり みつき)
- アリスの婚約者でクラスメイト。よく日に焼けた肌をしており麦藁帽子を好む。父親は大企業『マーチヘアグループ』の経営者だが、当人は帽子屋を営む祖父母の下で暮らしている。お小遣いは月3000円。他人の歓びを我が事のように感じられる性格。女の子をエスコートすることは得意でないが、アリスのことは大切に想っている。ふいに気障な事を本気で言う。アリスの窮地にいつでも駆けつける王子様。意外と大きな胸が好き。
- 九条院 ラミア(くじょういん らみあ)
- アリスの母親。かつてある『組織』の研究機関で『LTスフィア』についての研究に従事していた。当時の肩書きは、第一二研究室室長『白面金毛(はくめんこんもう)』ラミア・フォックス博士。3年前アリスを自ら発見した『十三番目の(サーティーンス)スフィア』の力で救ったのち、『組織』を離れて夫の残した遺産を使いアリスのための研究を続けている。九条院邸にはほとんど顔を出さないためアリスからは放蕩母の烙印を押されている。『十二番目(トゥエルフス)スフィア』を発見したのも彼女。
- 桐山 誠人(きりやま まこと)
- アリスのクラスメイト。3年1組のクラス委員をしており中等部クラス委員会委員長(中等部の生徒会長)も任されている。口調は荒く鋭い三白眼だが、同級生や下級生からの信頼は厚い。全校生徒の顔・名前を覚えている。怜奈とはいつも言い合いをしているが仲が良く、寝坊気味の彼女を毎朝起こしに行っている。
- 宮田 怜奈(みやた れいな)
- アリスのクラスメイト。背が非常に高くスポーツが得意。実家は有名玩具メーカー『ミヤタ』。性格は掴みどころがなく、その会話は下世話な方向に向かうことが多い。三月とは天然同士仲が良い。誠人に対しては親愛を込めておちょくる様な言動を取る。
- 皇城 瞑(こうじょう めい)
- アリス達の後輩で一年生。黒髪に赤いリボンを付けた小悪魔系で、髪型は作中で何度か変えている。アリスを慕う下級生達の中でも特に積極的で、自分のものにしたいと思っている。そのためアリスの婚約者である三月のことを敵視している。名前が出たのと本格的な登場は2巻であるが、1巻にも瞑らしき人物が登場しているシーンがある。
- リリス・グラム
- アリスのクラスに突然現われた転校生。『十二番目(トゥエルフス)』。普段は全身に純白の衣裳を纏っている。『組織』を裏切り追われながらも『十三番目(サーティーンス)』であるアリスのことを監視していた。専用武装は不明だが、4000mを越す超長距離精密射撃を可能とする。アリスと同じ『オメガブラスト』も使用可能であるらしい。また、統合型と呼ばれる特殊な型のスフィアであるためか、他のスフィアの専用武装を呼び出すこともできるようである。三月のことを気に入っている。
- フェレス・B・フレイア
- 『三番目(サード)』。第三研究室所属の殺戮人形(キリングドール)。『B』の一字はミドルネームではなく製造番号である。その素体にはハインツのクローンが使われ、記憶も彼のものが移植されている。偏執的なまでのハインツへの情愛と、他者への殺戮衝動をもっている。
- 専用武装は大戦斧『イクリプス』。斬撃により旋風を発生させることができる。また属性変異には『酸の霧(アシッドミスト)』(第二形態)があり、攻撃・防御ともに能力が向上する。アリスとの戦闘で暴走しかけ自殺覚悟で『酸の霧』の竜巻を発生させるが、『オメガブラスト』により消滅。『三番目(サード)スフィア』はリリスに回収された。
- ハインツ・フレイ
- 『組織』の第三研究室室長。二つ名は『斑傀儡(まだらくぐつ)』。過去に酷い経験をしており、それを二度と繰り返さないために強大な力を手に入れようとする。フェレスと同様、彼女へ歪んだ愛情を注いでいる。
- 加賀見 構造(かがみ こうぞう)
- 『組織』の第六研究室室長。二つ名は『剥落四魂(はくらくしこん)』。細身の長身と鋭い目鼻立ちは冷血さを感じさせるが、言動に裏表がなくラミアが『組織』で唯一信用している人物。ラミアがアリスとともに『組織』を離れる際、事後処理を彼女に託された。
- 悠里(ゆうり)
- 『十番目(テンス)』。第十研究室所属の殺戮人形(キリングドール)。人間ベースではなく9割が無機材料で作られた人造人間。一見すると弱気でドジなメイドだが、そのパワーは驚異的に高い。その代償として一日に2万キロカロリーの食事が必要なうえに体重が180キロもあることは本人も気にしている。
- 専用武装は機動装甲『ドレッドノート』。単純にパワーが大きい巨大な鋼の甲冑。しかし人間でない彼女はそれをフルに使うことはできず、その一部を短時間召喚できるのみである。
- アレク・フランケンシュタイン
- 『組織』の第十研究室室長。二つ名は『縫合義体』。過去に遭遇した悲しい出来事をきっかけに「真なる人造人間の作成」を研究目標としている。そのため、悠里にも戦闘機能だけではなく人間らしい感情や仕草を付与している。悠里に対しては意地悪をすることが多い。
[編集] 用語解説
- 皇城学院(こうじょうがくいん)
- およそ2000㎡にも及ぶ敷地内に高等部や中等部をもつ名門私立学校。中高一貫のエスカレーター方式を採用しており生徒には全国にある名家の子息令嬢が多い。敷地内には食堂・購買・図書館・体育館などの設備が整っている。敷地の南端に正門があり、その傍らには白い洋館風のカフェ『白楼館』がある。
- 『組織』
- 『LTスフィア』の研究を主要命題とする組織。12の独立した研究室を有し、それぞれが個別の『LTスフィア』について研究をしている。研究室同士は互いに反目しあっている。表では隠れ蓑として人工臓器や義肢の研究開発をしているが、裏では人体クローンや生体強化、死者蘇生の研究をしている部署もある。
- LT(ロストテクノロジー)スフィア
- 世界各地で発見された指先ほどの極小の球体。現在の科学技術でも解明できないオーパーツ。適正素体の心臓に癒着・寄生し、その身体能力を格段に向上させる性質をもつ。元々『組織』はこの物質そのものの解析を目的としていたが、現在はこれを適正素体に埋め込みその能力を推し量る方向へ研究が移行しつつある。
- 現在『組織』内で公式に確認されているのは12個であり、発見順に番号が付けられている。アリスが持つものは『組織』が存在を知らないため、それを含めると13個ある。それぞれが違った機構を持つが、そのうち『十二番目(トゥエルフス)スフィア』と『十三番目(サーティーンス)スフィア』は他のものとはほとんど別物といえるほど異なった構造をしている。加えて発掘当時は『十三番目(サーティーンス)スフィア』のみ共振反応を示さない特殊性を持っていた。
- 殺戮人形(キリングドール)
- 『LTスフィア』を心臓に移植された素体のこと。その兵器としての殺傷能力の高さから『組織』内でこのように呼ばれることがある。
- 出来損ないの人形(ディフェクティヴ・ドール)
- 『組織』でクローン技術を応用し開発・大量生産されたモノ。単にドールとも呼ばれる。特に個性はなく命令に従って行動する。一定以上の損傷を受けると自爆するように作られており、外部へ機密を漏らさないよう考慮されている。
- 専用武装(カラミティ)
- 戦闘に際し各『LTスフィア』保有者がそれぞれに固有の名称を発声することにより、光をともなって現われる武器。その威力ゆえ『災厄(カラミティ, calamity)』と呼ばれる。様式・性能は『LTスフィア』によって異なり、中近接武器の『イクリプス』やリリスの超長距離兵器など様々。属性変異(バレルチェンジ)させることで新たな能力を付加することも可能で、この変異には段階がある。
- 共振反応(エコー)
- 『LTスフィア』同士が接近した場合に起こる共鳴現象。素体同士の場合は心臓に痛みが奔ることでも感知できる。この痛みは出力が下回った側に発生するほか、急激な憎悪・破壊衝動をともなう。またこの共振反応は周囲に他人が近寄りづらい状況を作り出す効果ももつ。
以上で、作品の核心的な内容についての記述は終わりです。
[編集] 既刊一覧
- 十三番目のアリス ISBN 4-8402-3515-5
- 十三番目のアリス2 ISBN 4-8402-3642-9
- 十三番目のアリス3 ISBN 4-8402-3802-1