占星術
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
占星術(せんせいじゅつ)または占星学(せんせいがく)は、太陽系内の太陽・月・惑星・小惑星などの天体の位置や動きなどと人間・社会のあり方を経験的に結びつけて占う技術(占い)。古代バビロニアを発祥とするとされ、ギリシア・インド・アラブ・ヨーロッパで発展した西洋占星術・インド占星術と、中国など東アジアで発展した東洋占星術に大別することができる。
目次 |
[編集] 概要
[編集] 発祥
古代バビロニアで行われた大規模な天体観測が起源であり、ギリシア・インド・アラブ・ヨーロッパ・中国へ伝わったといわれている。おもに国家や王家の吉凶判断に使われた。バビロニア占星術は紀元前三世紀頃にギリシアに伝わり、個人の運勢を占うホロスコープ占星術に発展した。占星術を指す単語は、古典ギリシア語のアストロロギア(astrologia)に由来する。アストロロギア(astrologia)のアストロ(astro)という接頭辞は古典ギリシア語の astron 星でありastrologiaとは星について考えたことという意味になる。アストロノミア(astronomia、英語のastronomy)天文学とはastrologiaのなかで星の動きなどについての学問であった(nomos は秩序の意味)。ちなみに、astrologistは占星術者である。
[編集] インド
二世紀頃にはインドに伝わりインド占星術として現在でも盛んである。現在一般に流布しているのは、この西洋占星術と言われるもので、現在日本で星占いとして流布している通俗的な占いも西洋占星術を簡略化したものである。
[編集] 中国
古代中国では「天文」と呼ばれる占星術があったが、バビロニア占星術とは異なり、天体の配置ではなく日食、月食、流星、彗星など天変現象に注目したものであった。天変は天が与える警告であるという考え方であり、これは一般に天変占星術と言われる。より詳しくは「東洋占星術」の項を参照。
[編集] 占星術と科学
占星術は、プトレマイオス以来の地球中心説(天動説)の宇宙観を引きずっており、地動説に基づく現代科学とはまったく別の体系の技術であると考える必要がある。
[編集] 占星術と自然科学
現代の自然科学においては常識のことではあるが、占星術による未来予測について自然科学的な根拠は提示されていない。かつて天文学者であり占星術師でもあったヨハネス・ケプラーは「占星術は、天文学の愚かな妹」と呼んだ。近世以降においては占星術は自然科学の体系から完全に離れてしまっている。人間や国家の性格・運勢を天体の動きと天文学的・物理学的に結びつけることには今まで誰も成功していない。現代の多くの占星術専門家も、現代自然科学の枠組で占星術を理解することはきわめて困難であると考えている。
[編集] 占星術と心理学
近代において占星術に積極的に取り組んだ研究者は、むしろカール・ユングに代表される心理学者などである。この事情もあり、イギリスを中心とする現代の占星術師や占星術研究家と称する人々の中には、心理学を援用しようと試みている人も少なくない。
[編集] 未来予測の信頼性
西欧中世のスコラ哲学者トマス・アクィナスが「星は誘えど、強制せず」と喝破したように、占星術の体系は決定論ではなく、しかも人それぞれの経験や主観によって解釈にぶれがある。このため現代科学が求める再現性を保証するのはきわめて困難である。
[編集] 天文学との関連
占星術が、数ある占いの中で最も古い起源を持ちながら今なお最も広範囲に親しまれている一因として、古代以来絶えず「天の意」を知ることを求め続けた人類にとって社会的・文化的に重要な理論体系として―一貫性や普遍性は欠くにせよ(普遍性を前提とする学問は、哲学的な意味での「批判」の対象とはならず、「科学知の客観性」を前提とした数百年続く「因果律による科学的思考の盲目的な礼賛」である可能性がある―発展し続け、また現代の主要な世界観としての自然科学の母胎のひとつとなったことが挙げられる。
ケプラーの法則で天文学史上に名を残すヨハネス・ケプラーが天文学者・数学者であると同時に占星術師でもあったことや、ドイツ観念論を代表する哲学者ヘーゲルが大学教師の職に就くための就職論文が『惑星の軌道に関する哲学的論考』であり、その中で惑星の運動を本質的に解明したのは物理学的に解析したニュートンよりもむしろケプラーであると評していることからも分かるように、自然科学としての天文学は天体(主に惑星)の不思議な動きに意味を見出だそうとした占星術から派生したものである。
[編集] 惑星の定義見直しによる影響
惑星の定義見直しによる影響については、西洋占星術の項を参照。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
※冥王星の惑星降格に対する占い師達の見解(一例)
[編集] 関連書
- 中山茂『占星術』 紀伊国屋書店 ISBN 4314009853
- バートン,タムシン 豊田彰 訳『古代占星術―その歴史と社会的機能』法政大学出版局 ISBN 458835602X
- H.J.アイゼンク、D.K.B.ナイアス 岩脇三良 訳『占星術―科学か迷信か』誠信書房 ISBN 4414304083