国税専門官
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
国税専門官(こくぜいせんもんかん)とは、税務署、国税局及び国税庁において、税務行政を執行する国家公務員のうち、大卒程度採用(国家II種相当)に当たる職員を指す。(これとは別に、いわゆるキャリア組と言われる、国家I種試験で採用されて財務省や国税庁に配属される職員と、高卒・国家III種試験で採用された職員が1年1ヵ月間の普通科研修を受けた後、約1年の実務経験を経て、再度3ヵ月間の研修を受けた後税務署に配属される職員もいる)
国税専門官は、所得税、法人税、相続税などの直接税及び消費税、酒税などの間接税について、納税者から提出された確定申告書などに基づき、申告、納税が適正に行われたか調査する国税調査官。滞納された税金を徴収する国税徴収官。及び裁判所からの令状に基づき強制的に調査を行い、不正が発見され次第、検察官に脱税犯として告発する国税査察官の3種類からなる。
国税専門官は、国税専門官採用試験に合格後、各国税局に財務事務官として採用され、税務大学校和光校舎(埼玉県和光市)において約4ヶ月間の専門官基礎研修を受講する。基礎研修では税法、会計学等、税務職員として必要な知識、教養及び技能等を学習する。専門官基礎研修修了後は、各税務署に配属され、調査及び滞納処分等の事務に従事する。
その後、約2年間の実務経験を経て、再び税務大学校和光校舎において約7ヶ月間の専科研修を受講し、税法及び会計学などを受講する。専科研修は税理士法に定める指定研修であり、試験に合格しないと税理士試験の免除は受けられないが、税務大学校では、受講生に試験問題をほぼ全て試験前に教えているうえ、問題のレベルも低いので、試験と呼べるような代物ではない。
専科研修修了後、再び各税務署に配属、採用後3年10ヵ月を経て主任クラスにあたる国税調査官・徴収官等の肩書きが与えられる。大卒程度の採用ではあるがノンキャリア組に該当するため、昇進は最上位でも国税局のごく一部の部長ポストか次長、もしくは大規模署の署長止まりである。これは高卒採用者の昇進ペースと比べてもほとんど変わりが無い。税務署課長クラス(国税局では課長補佐級に該当)へのポスト発令は、第1選抜の発令を時期で比較すれば国税専門官採用者の方が高卒採用者よりも1歳早いが、人数で比較すると高卒採用者のほうがいまだに多い。これは高卒採用であっても試験選抜により本科研修を受けた者は大卒程度と同等の処遇とされ、これらの職員の処遇が進んでいるためでもあり、結果として専門官採用者の方が下位の地位に甘んじている。管理職にもなれない職員も多い。
国税専門官試験はそもそも国税の職場において、キャリアの国家I種採用者と高卒・国家III種試験のノンキャリアの中間準キャリアの待遇として当初発足したものだが、労働組合である国税労組は国税専門官試験に猛烈に反発し、国税専門官1期から10期までは組合の参加も拒否し、税務署に配属された国税専門官試験採用者に「帰れ」とピケを張って迫害を加えた歴史がある。現在はそうした状況は改善し国税労組にも国税専門官採用者も加入できる様になったが、いまだに国税専門官試験採用者と高卒・国家III種採用者との確執がある。