大野雄二
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
大野 雄二(おおの ゆうじ、1941年5月30日 - )は、アレンジャー、作曲家、ジャズピアニスト。「ルパン三世」などテレビ・映画のテーマ音楽を多数手がけている。実家は『おもひでぽろぽろ』にも登場する「ホテル大野屋」(静岡県熱海市)。
なお、『太陽にほえろ!』、『名探偵コナン』などで知られる作曲家の大野克夫とは、同姓でなおかつ同じくジャズ出身で、さらには共に劇伴も多く手がけている為か、混同される事が多い。
目次 |
[編集] 経歴
[編集] デビュー以後
慶應義塾高等学校時代、ジュニア・ライト・ミュージックを、同級生だった元NHKアナウンサーの明石勇(クラリネット担当)らと結成。その後、慶應義塾大学法学部入学・卒業。大学在学中は名門ビッグバンド「ライトミュージックソサイエティ」に所属、鈴木"コルゲン"宏昌、佐藤允彦らと共に「慶應のピアノ三羽烏」と呼ばれた。卒業後、藤家虹二、白木秀雄(大野のアルバム・デビューは、東芝から発売された白木秀雄クインテットでのLP『HIDEO SHIRAKI MEETS YUZO KAYAMA』)のバックを経て、自らのバンドを結成する。
1970年代から、テレビドラマや映画の劇伴を手がけ始めるが、その頃と時期を同じくして、当時は「ジャズロック」「クロスオーバー」の名称で呼ばれていたフュージョンのスタイルで楽曲を発表し始める。
なお、明石勇や佐藤允彦のほか、石坂浩二も慶応の同級生であり、『音楽と幻想』というアルバムをリリースしている。
[編集] You & Explosion Band
松木恒秀(G)、長岡道夫(Bass/SHOGUNのミッチー長岡)、数原晋(Tp)、渡嘉敷祐一(Dr)、市原康(Dr)などと結成した「ユー&エクスプロージョン・バンド」で手がけた作品には『ルパン三世』・『海底超特急マリン・エクスプレス』などのテレビアニメ、『大追跡』・『大激闘マッドポリス'80』などのテレビドラマ、映画『最も危険な遊戯』に始まる松田優作主演の遊戯シリーズの劇伴がある。また、『犬神家の一族』に始まる初期角川映画3作品、テレビアニメ『キャプテンフューチャー』も、バンドのクレジットこそ異なるが、メンバーは「ユー&エクスプロージョン・バンド」のレギュラー陣である。
なお「ユー&エクスプロージョン・バンド」は、制作作品に合わせて大野がセクションごとにミュージシャンをチョイスしており、恒久的なメンバーはいない。このバンド名義で、オリジナルアルバム『SPACE KID』(2007年にCD化)・『FULL COURSE』などもリリース。近年の『ルパン三世』TVスペシャルのサウンドトラック録音でも、この名義を用いていて、数原晋(Tp)、杉本喜代志(G)ら、1970年代当時のメンバーも多い。
[編集] 音楽性と功績
大野の音楽は、当時日本でも最高水準にあったミュージシャンを惜しげもなく登用し、自身の鍵盤(主にFender Rhodes Pianoによるものだったが)を加えたバンド編成のリズムセクションに、ジャズ出身ならではのフォーンセクション、ストリングセクションのアレンジを加えるという、70年代日本音楽の総力戦とも言えるものであった。荒井由実や山下達郎のような、従来の日本のフォークにない複雑な調性や和音、リズムを導入した音楽にポピュラリティを与えたものとして、大野の功績は甚大なものがあるといえよう。
劇伴の世界で名をはせた大野であるが、しばたはつみ・弘田三枝子・ソニア・ローザといった歌手のプロデュースも手がけ、成功を収めている。これらの作品は1990年代にレアグルーヴとして再評価され、一時期はDJやコレクター達の間で中古盤の価格が高騰していた。
また、電子音楽のレーベル「トランソニック」主宰の永田一直によるドラムンベース・プロジェクト「FANTASTIC EXPLOSION」は、1970~80年代のTVCMなどの音ネタと共に、大野やYou & Explosion Bandが手がけた作品の多くをサンプリングして使用し、1990年代後半に話題となった。ルパン三世のリミックスアルバム「PUNCH THE MONKEY!」では「非常線突破」のリミックスを(YOU & FANTASTIC EXPLOSION MIX)と題し手がけている。
[編集] ルパン三世
『ルパン三世』を通じて山田康雄、小林清志、納谷悟朗らレギュラー役者陣とも交流があり、特に山田康雄とは親しく自身の自宅兼スタジオSTUDIO YOUに呼んで共に酒を酌み交わす仲ともなっていた。山田康雄の晩年であった1992年には、山田自身のCDアルバム作成などで自宅のスタジオを使い、劇中の台詞にもアドリブとして大野雄二を呼ぶ台詞があることは山田ファンの間では有名でもある。山田康雄没後、毎年恒例の「ルパン三世」のTV版、ならびに映画「ルパン三世 DEAD OR ALIVE」の音楽担当を辞したが、1997年には復帰している。
[編集] その他作品
『ルパン三世』の他には、時代劇『戦国ロック・はぐれ牙』、『おひかえあそばせ』にはじまる石立鉄男ドラマ、NHKの紀行番組『小さな旅』、特撮ヒーロー『星雲仮面マシンマン』、テレビアニメ『スペースコブラ』の主題歌(劇中音楽は羽田健太郎)、『学園戦記ムリョウ』、テレビドラマ『外科医 有森冴子』、劇場版『義務と演技』なども担当。「きのこの山」・「たけのこの里」(以上、明治製菓)・「レディーボーデン」(明治乳業、のちにロッテ)・「アイリス」(大正製薬)・エアコン「楽園」(松下電工)といったCM音楽も、数え上げれば枚挙に暇が無い。CM音楽では、日産自動車グループの「世界の恋人」(作曲は芥川也寸志、歌はシンガーズ・スリー)のアレンジも有名である。またファミリーレストランのロイヤルホスト店内で、毎正時などに流れるオリジナル曲も担当、長年にわたって使用され好評を得ている。毎年夏恒例の日本テレビ・24時間テレビ 「愛は地球を救う」の第一回放送(1978年)では、ピンクレディーの曲を除き、テーマ曲「LOVE SAVES THE EARTH」から手塚治虫のアニメ至るまで、音楽監督的な立場で参加した。
[編集] 近年
現在は作曲活動を極力セーブし、俵山昌之(Bass)、村田憲一郎(Dr)とともに大野雄二トリオとして、また、2006年には俵山と若手ミュージシャン4人の計6名でYuji Ohno & Lupintic Fiveを結成し、主に都内でライブ活動を行っている