宇宙重力波望遠鏡
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宇宙重力波望遠鏡(うちゅうじゅうりょくはぼうえんきょう)とは、NASAのジェット推進研究所およびESAが進めている、重力波天体観測衛星のこと。
現在の計画では、2015年に地球-太陽軌道系(黄道面)に対して20度の傾きを持った人工惑星軌道に投入され、観測を行う予定。
重力波望遠鏡の構造は、3つの衛星からなる。各々の衛星は、500万km離れた位置を、周回し、衛星間にてレーザー光による干渉計として動作させる計画である。基線長が500万kmに達するため、地上では実現の難しい、mHz帯の波長を持つ重力波を捉えることが可能である。
[編集] 重力波天文学的解説
重力波は、電波、赤外線、可視光、紫外線、エックス線、ガンマー線と同じように、波動の性質を持つため、宇宙膨張による赤方偏移による影響を受ける。よって、遠い天体からの重力波を観測するためには、長い基線長を持つ重力波望遠鏡が必要となる。
例えば、TAMA300の場合、基線長が300mのため、MHz帯の重力波を捉えることならば可能である。しかしながら、300mとなると、銀河系内等で起こる重力崩壊の結果によって生じる重力波を検出することしかできない<注>。それに対して、LIGOとなると、基線長は4km及び2kmに達するため、数十kHzの重力波を検出することが可能となる。この大きさならば、銀河系内で起こる同様のイベントのみならず、乙女座銀河団内で生じる同様のイベントを捉えることが可能になるとされる。
しかしながら、重力崩壊にしても、チャンドラセカール質量から生じる特異点半径を計算すると、小さいもので数キロメートル。大きなものでは、数万キロメートルにも達する。よって、銀河系誕生時に生じたものと思われる、活動銀河核(クェーサー)内で生じる重力波を検出するためには、最低でも同じ基線長を持つ重力波望遠鏡が必要となる。
これまで知られている活動銀河核(クェーサー)は、近いものでも数十億光年、遠いものになると110億光年となるため、ハッブルの法則によれば、赤方偏移は数十%から90%程度にもなる。よって、基線長の長い重力波望遠鏡ならば、重力波を生じるような大規模な現象を観測することが可能になるのである。
<注>この問題は、干渉計の感度をあげることで、局部銀河系内における重力波発生イベントを観測できるように調整が行われてきた。干渉計の感度を上げるためには、定温の場所を用い、かつまた、レーザー光による熱輻射等の影響により、鏡が膨張するなどを抑えるために用いられる低温技術によって行われてきた。それに加えて、観測装置全体を、免震構造とし、かつまた、ある特定の周波数による共振を防ぐなどの工夫によって達成されたものである。